[O-MT-07-3] midvastusアプローチによるTKA術前後の大腿骨脛骨角変化が膝屈曲可動域の推移に及ぼす影響について
キーワード:TKA, 可動域, 疼痛
【はじめに,目的】人工膝関節置換術(TKA)の後療法において,治療過程における疼痛を最小限にして屈曲可動域(ROM)を獲得する事が重要である。臨床的に膝関節上内側部の疼痛が,後療法の屈曲ROM制限の主原因と考えられる症例を経験し,その要因として手術アプローチmidvastusによる筋切離,外反矯正による大腿骨脛骨角(FTA)変化が考えられた。本研究ではmidvastusアプローチにおけるFTA術前後差が,術後の屈曲ROMの推移に影響があるか否かを明らかにする。
【方法】対象は,平成27年1月から9月の間に内側型変形性膝関節症に対してmidvastusアプローチを用いTKAを行った19例23関節中,術後2週間以内の最大の他動的屈曲時に膝関節上内側部の疼痛を訴えた14例17関節とした。性別は男性2例女性12例で,平均年齢は74±8.7歳であった。FTAは術前後の単純X線像で計測し,矯正角度の中央値10.3°未満を矯正の弱い群8関節(6.7±3.2°mean±SD)とし,10.3°以上を矯正の強い群9関節(13.0±2.6°)とした。他動屈曲ROMは術後1週,2週,3週,4週に計測し,各群の1週毎の屈曲ROMを比較した。検定にはSPSS17.0を使用し,郡内比較にはFriedman検定で有意差を認めた場合に,Post-hoc testでWilcoxon符号付順位検定を用いて比較した。
【結果】矯正の弱い群の屈曲ROMの推移は,1週88.8±14.8°,2週103.1±13.3°,3週111.3±12.5°,4週118.8±9.9°で,1-2週(p<0.05),3-4週(p<0.01)の間で有意に改善していた。矯正の強い群は,1週88.9±13.6°,2週107.2±6.2°,3週116.7±8.3°,4週117.2±13.5°で,1-2週(p<0.01),2-3週(p<0.01)間で有意に改善し,3-4週間では有意差を認めなかった。両群間の術前ROMに有意差は認めなかった。
【結論】本研究では術前後のFTA差により屈曲ROMの推移が異なる事が示唆された。矯正の弱い群では術後ROMが筋・筋膜の修復される3週以降で改善するのに対し,矯正の強い群ではmidvastusによる内側広筋の侵襲に加え,矯正角度が強いため筋切離部の離開面積が大きく,筋切縫合部に疼痛を発生させる筋緊張が残存すると考えられ,3-4週で改善が停滞したと推察される。矯正の強い群の3週以降の理学療法では,罹患期間に生じた内側広筋の筋短縮にも配慮する介入が当該疼痛を最小限にする方法であると考えられる。今後の課題は,患者の安心を得るべく,回復過程のオリエンテーションを含む理学療法の展開と更なる根拠となるデータ蓄積が必要である。
【方法】対象は,平成27年1月から9月の間に内側型変形性膝関節症に対してmidvastusアプローチを用いTKAを行った19例23関節中,術後2週間以内の最大の他動的屈曲時に膝関節上内側部の疼痛を訴えた14例17関節とした。性別は男性2例女性12例で,平均年齢は74±8.7歳であった。FTAは術前後の単純X線像で計測し,矯正角度の中央値10.3°未満を矯正の弱い群8関節(6.7±3.2°mean±SD)とし,10.3°以上を矯正の強い群9関節(13.0±2.6°)とした。他動屈曲ROMは術後1週,2週,3週,4週に計測し,各群の1週毎の屈曲ROMを比較した。検定にはSPSS17.0を使用し,郡内比較にはFriedman検定で有意差を認めた場合に,Post-hoc testでWilcoxon符号付順位検定を用いて比較した。
【結果】矯正の弱い群の屈曲ROMの推移は,1週88.8±14.8°,2週103.1±13.3°,3週111.3±12.5°,4週118.8±9.9°で,1-2週(p<0.05),3-4週(p<0.01)の間で有意に改善していた。矯正の強い群は,1週88.9±13.6°,2週107.2±6.2°,3週116.7±8.3°,4週117.2±13.5°で,1-2週(p<0.01),2-3週(p<0.01)間で有意に改善し,3-4週間では有意差を認めなかった。両群間の術前ROMに有意差は認めなかった。
【結論】本研究では術前後のFTA差により屈曲ROMの推移が異なる事が示唆された。矯正の弱い群では術後ROMが筋・筋膜の修復される3週以降で改善するのに対し,矯正の強い群ではmidvastusによる内側広筋の侵襲に加え,矯正角度が強いため筋切離部の離開面積が大きく,筋切縫合部に疼痛を発生させる筋緊張が残存すると考えられ,3-4週で改善が停滞したと推察される。矯正の強い群の3週以降の理学療法では,罹患期間に生じた内側広筋の筋短縮にも配慮する介入が当該疼痛を最小限にする方法であると考えられる。今後の課題は,患者の安心を得るべく,回復過程のオリエンテーションを含む理学療法の展開と更なる根拠となるデータ蓄積が必要である。