[O-MT-07-5] TKA術後患者の歩行速度と膝関節機能及び体幹機能の関係について
キーワード:人工膝関節全置換術, 歩行速度, 体幹機能
【はじめに,目的】
変形性膝関節症(以下膝OA)の治療として人工膝関節全置換術(以下TKA)が行われる。高齢者において歩行速度は生活機能と関連しているため,TKA術後患者の退院時における歩行速度は重要な指標の一つである。TKA術後患者の歩行速度と膝関節機能の関係として,Visual Analog Scale(以下VAS)や術側および非術側の膝関節伸展筋力,術側の膝関節屈曲可動域と相関が認められたという報告がある。また,歩行速度と体幹機能に相関が認められたという報告もある。このようにTKA術後患者の歩行速度には様々な要因が影響するが,体幹機能も含めたこれらの項目の中で,どの項目がより歩行速度に影響を与えるかを明確にすることは,より効果的な理学療法を行うために重要となる。そこで,本研究はTKA術後患者の歩行速度に膝関節機能と体幹機能のどちらがより強く影響を及ぼすのかを検討することを目的とした。
【方法】
当センター整形外科に入院し,膝OAと診断され,TKAを施行された症例49例を対象とする。対象者の選択条件を,60歳以上,運動制限を必要とする合併症や認知症などによる理解力の低下がないこととした。全症例に通常の理学療法が行われた。歩行速度は5m歩行速度を計測した。基本属性として年齢,身長,体重を計測した。膝関節機能としてVAS(歩行時の最大の痛み),両側膝関節等尺性伸展筋力および屈曲可動域を計測し,体幹機能としてSeated Side Tapping test(以下SST)を計測した。SSTは座位で両上肢を側方に挙上し,その指先から10cm離した位置のマーカーをできるだけ速く交互に10回叩くように指示し,要した時間を測定した。各項目の測定は退院時に行った。統計学的分析として,歩行速度と基本属性,膝関節機能,SSTの関係についてピアソンの相関係数を用いた。さらに,歩行速度を従属変数,歩行速度と相関が認められた項目を独立変数として重回帰分析を用いて解析を行った。独立変数同士の相関係数を算出し,多重共線性が生じていないことを確認した。
【結果】
対象者の平均年齢は76.3±5.8歳,身長は152.1±6.5cm,体重は62.4±10.5kgであった。歩行速度と有意な相関が認められた項目は年齢(r=-0.32,p<0.05),術側の膝伸展筋力(r=0.30,p<0.05),非術側の膝伸展筋力(r=0.50,p<0.01),SST(r=-0.65,p<0.01)であった。歩行速度を従属変数とし,重回帰分析を行った結果,SST(β=-0.53)のみが有意な項目として選択され,自由度調整済み決定係数(R2)は0.47であった。
【結論】
歩行速度は膝関節伸展筋力およびSSTと有意な相関が認められた。さらに,重回帰分析によってSSTのみが選択された。この結果からTKA術後患者の歩行速度にとって,膝関節機能よりも体幹機能の方がより強く影響を及ぼすことが示された。以上のことから,TKA術後患者の理学療法を行う上で,膝関節機能のみではなく,体幹機能にも注目することでより効果的な治療を行える可能性が示唆された。
変形性膝関節症(以下膝OA)の治療として人工膝関節全置換術(以下TKA)が行われる。高齢者において歩行速度は生活機能と関連しているため,TKA術後患者の退院時における歩行速度は重要な指標の一つである。TKA術後患者の歩行速度と膝関節機能の関係として,Visual Analog Scale(以下VAS)や術側および非術側の膝関節伸展筋力,術側の膝関節屈曲可動域と相関が認められたという報告がある。また,歩行速度と体幹機能に相関が認められたという報告もある。このようにTKA術後患者の歩行速度には様々な要因が影響するが,体幹機能も含めたこれらの項目の中で,どの項目がより歩行速度に影響を与えるかを明確にすることは,より効果的な理学療法を行うために重要となる。そこで,本研究はTKA術後患者の歩行速度に膝関節機能と体幹機能のどちらがより強く影響を及ぼすのかを検討することを目的とした。
【方法】
当センター整形外科に入院し,膝OAと診断され,TKAを施行された症例49例を対象とする。対象者の選択条件を,60歳以上,運動制限を必要とする合併症や認知症などによる理解力の低下がないこととした。全症例に通常の理学療法が行われた。歩行速度は5m歩行速度を計測した。基本属性として年齢,身長,体重を計測した。膝関節機能としてVAS(歩行時の最大の痛み),両側膝関節等尺性伸展筋力および屈曲可動域を計測し,体幹機能としてSeated Side Tapping test(以下SST)を計測した。SSTは座位で両上肢を側方に挙上し,その指先から10cm離した位置のマーカーをできるだけ速く交互に10回叩くように指示し,要した時間を測定した。各項目の測定は退院時に行った。統計学的分析として,歩行速度と基本属性,膝関節機能,SSTの関係についてピアソンの相関係数を用いた。さらに,歩行速度を従属変数,歩行速度と相関が認められた項目を独立変数として重回帰分析を用いて解析を行った。独立変数同士の相関係数を算出し,多重共線性が生じていないことを確認した。
【結果】
対象者の平均年齢は76.3±5.8歳,身長は152.1±6.5cm,体重は62.4±10.5kgであった。歩行速度と有意な相関が認められた項目は年齢(r=-0.32,p<0.05),術側の膝伸展筋力(r=0.30,p<0.05),非術側の膝伸展筋力(r=0.50,p<0.01),SST(r=-0.65,p<0.01)であった。歩行速度を従属変数とし,重回帰分析を行った結果,SST(β=-0.53)のみが有意な項目として選択され,自由度調整済み決定係数(R2)は0.47であった。
【結論】
歩行速度は膝関節伸展筋力およびSSTと有意な相関が認められた。さらに,重回帰分析によってSSTのみが選択された。この結果からTKA術後患者の歩行速度にとって,膝関節機能よりも体幹機能の方がより強く影響を及ぼすことが示された。以上のことから,TKA術後患者の理学療法を行う上で,膝関節機能のみではなく,体幹機能にも注目することでより効果的な治療を行える可能性が示唆された。