[O-MT-07-6] 人工膝関節全置換術後患者における患部及び手部アイシングの有効性
快楽・非快楽が臨床有用性のあるアイシング効果に関与するか
Keywords:人工膝関節全置換術, 快刺激, アイシング
【はじめに】
人工膝関節全置換術(TKA)後の理学療法において,関節可動域(ROM)運動に伴う疼痛は,可動域拡大の阻害因子となり得るため,疼痛を抑制するための介入が重要である。従来の介入としては,患部への直接アイシングが一般的であるが,十分な除痛効果が得られない患者も認められる。我々は,TKA術後患者に対して,患部から離れた手部へのアイシングを実施し,アイシングを快刺激と感じた場合に疼痛がより抑制される事を報告した。しかし,その疼痛抑制効果が臨床的に意味のある変化量(Minimal Clinically Important Difference;MCID)であるかを考慮していなかったため,快刺激と感じることが臨床有用性のあるアイシングの効果と関与しているかは未だ明らかではない。今回,TKA術後患者に対して,患部及び手部へのアイシング後のVAS変化値を比較し,さらに各部位へのアイシングを快刺激と感じるか否かが,MCID以上のアイシング効果に関与するかを検討した。
【方法】
対象は,変形性膝関節症に対して初回TKAを施行した34名34膝(男性5名,女性29名,平均年齢75.3±6.3歳)とした。測定は,術後2週時点の連続した2日間で行い,各日のアイシング部位は対象毎に順不同で設定した。膝関節最大屈曲時の疼痛をVASにて測定した後に10分間のアイシングを実施した。その後,アイシング前と同一角度を再現した際のVASを測定し,アイシング前後の差をVAS変化値とした。Tubachらの報告を参考にVASのMCIDを20mmと設定し,VAS変化値が20mm未満群(<20群)と20mm以上群(≧20群)に分類した。各アイシングを快刺激と感じたか否か(快楽・非快楽)を聴取した。統計処理は,患部と手部のアイシング前後のVASとVAS変化値の比較を対応のあるt検定にて比較した。VAS変化値による分類と刺激の快楽・非快楽の関係について,アイシング部位別と両部位合算によるχ2検定を行った。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
アイシング前後のVASは,患部59.4±17.6mmから46.6±21mm,手部62±16mmから48.5±25.2mmへと,両部位とも有意に低下した。VAS変化値は,患部(-12.9±21.9mm)と手部(-13.5±22.5mm)で有意差がなかった。両群の快楽:非快楽の人数は,患部は<20群が14:12名,≧20群が7:1名,手部は<20群が13:9名,≧20群が11:1名であった。VAS変化値による分類と刺激の快楽・非快楽の関係は,部位別では有意な関係がなかったが,両部合算による検定では有意な関係を認め,アイシングを快楽と感じる患者のVAS変化値は20mm以上となりやすかった。
【結論】
患部,手部ともにアイシング後に疼痛抑制の効果を認めた。MCIDからみたVAS変化値の効果判定では,部位別は快楽・非快楽の感じ方と有意な関係を認めなかったが,両部位を合算するとVAS変化値に快楽・非快楽の感じ方が影響した。冷却部位に関わらずアイシングを快刺激と感じる場合,疼痛抑制効果が得られやすいことが示唆された。
人工膝関節全置換術(TKA)後の理学療法において,関節可動域(ROM)運動に伴う疼痛は,可動域拡大の阻害因子となり得るため,疼痛を抑制するための介入が重要である。従来の介入としては,患部への直接アイシングが一般的であるが,十分な除痛効果が得られない患者も認められる。我々は,TKA術後患者に対して,患部から離れた手部へのアイシングを実施し,アイシングを快刺激と感じた場合に疼痛がより抑制される事を報告した。しかし,その疼痛抑制効果が臨床的に意味のある変化量(Minimal Clinically Important Difference;MCID)であるかを考慮していなかったため,快刺激と感じることが臨床有用性のあるアイシングの効果と関与しているかは未だ明らかではない。今回,TKA術後患者に対して,患部及び手部へのアイシング後のVAS変化値を比較し,さらに各部位へのアイシングを快刺激と感じるか否かが,MCID以上のアイシング効果に関与するかを検討した。
【方法】
対象は,変形性膝関節症に対して初回TKAを施行した34名34膝(男性5名,女性29名,平均年齢75.3±6.3歳)とした。測定は,術後2週時点の連続した2日間で行い,各日のアイシング部位は対象毎に順不同で設定した。膝関節最大屈曲時の疼痛をVASにて測定した後に10分間のアイシングを実施した。その後,アイシング前と同一角度を再現した際のVASを測定し,アイシング前後の差をVAS変化値とした。Tubachらの報告を参考にVASのMCIDを20mmと設定し,VAS変化値が20mm未満群(<20群)と20mm以上群(≧20群)に分類した。各アイシングを快刺激と感じたか否か(快楽・非快楽)を聴取した。統計処理は,患部と手部のアイシング前後のVASとVAS変化値の比較を対応のあるt検定にて比較した。VAS変化値による分類と刺激の快楽・非快楽の関係について,アイシング部位別と両部位合算によるχ2検定を行った。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
アイシング前後のVASは,患部59.4±17.6mmから46.6±21mm,手部62±16mmから48.5±25.2mmへと,両部位とも有意に低下した。VAS変化値は,患部(-12.9±21.9mm)と手部(-13.5±22.5mm)で有意差がなかった。両群の快楽:非快楽の人数は,患部は<20群が14:12名,≧20群が7:1名,手部は<20群が13:9名,≧20群が11:1名であった。VAS変化値による分類と刺激の快楽・非快楽の関係は,部位別では有意な関係がなかったが,両部合算による検定では有意な関係を認め,アイシングを快楽と感じる患者のVAS変化値は20mm以上となりやすかった。
【結論】
患部,手部ともにアイシング後に疼痛抑制の効果を認めた。MCIDからみたVAS変化値の効果判定では,部位別は快楽・非快楽の感じ方と有意な関係を認めなかったが,両部位を合算するとVAS変化値に快楽・非快楽の感じ方が影響した。冷却部位に関わらずアイシングを快刺激と感じる場合,疼痛抑制効果が得られやすいことが示唆された。