[O-MT-08-1] 一側の上肢振り子運動による外乱刺激が体幹の姿勢制御に及ぼす影響 第2報
~左上肢振り子運動と右上肢振り子運動の比較~
Keywords:上肢振り子運動, 左右機能差, 姿勢制御
【はじめに,目的】
前回大会で,左右上肢の機能差を見出すため,左と右の一側上肢振り子運動での体幹における姿勢制御の相違を検討し,左右上肢の役割が異なることを示した。臨床上,この姿勢制御の相違は体幹だけでなく下肢にも波及していることが観察される。そこで今回,下肢の動態も含めてさらに考察を深め,興味深い結果が得られたので報告する。
【方法】
対象者は健常成人男性14名(年齢25.5±3.2歳)とした。課題動作は立位での上肢振り子運動で,肩関節屈伸各30°の幅で上肢を振ることとした。使用機器は三次元動作分析システムVICON MX(VICON社)と床反力計(AMTI社)を用いた。マーカーはPlug-In-Gait Modelに準じ貼付した。算出項目は上肢振り子運動時の骨盤,胸郭回旋角度,骨盤,胸郭中心点の総軌跡長と移動幅,足圧中心点(以下,COP)位置,床反力鉛直成分,下肢関節モーメントとした。各値は上肢振り子運動5往復分から算出し,3施行の平均値を解析値とした。更にCOP位置と床反力鉛直成分は安静立位3秒間の平均値を算出した。統計学的解析は左右上肢振り子運動の比較を対応のあるt検定またはWilcoxonの符号付き順位検定を用い,骨盤,胸郭回旋角度のばらつきを比較するためF検定を用いた。有意水準5%未満とした。
【結果】
床反力鉛直成分は,安静立位で左下肢が大きい傾向であり,左上肢振り子運動(以下,左側)では左下肢,右上肢振り子運動(以下,右側)では右下肢が大きい傾向があった。COP位置の前後方向は,右側で有意に前方に位置した(p<0.05)。骨盤回旋角度は左側で有意に大きく(p<0.05),胸郭回旋角度は有意差が認められなかった。F検定より,骨盤,胸郭回旋共に有意差が認められ,右側でばらつきが小さかった(p<0.01)。骨盤,胸郭中心点の総軌跡長は左側で有意に大きかった(p<0.01,p<0.05)。骨盤,胸郭中心点の移動幅は左側で有意に大きかった(p<0.05,p<0.01)。下肢関節モーメントは右側で右足関節底屈モーメントが有意に大きく(p<0.05)。左側で左股関節屈曲モーメントが有意に大きかった(p<0.01)。
【結論】
左側では支持脚とされる左下肢での荷重が多くなるため体幹では機能性を高めるシステムが働き,動揺が大きくなる。そのため,下肢では不安定性の高い場合に用いられる股関節制御が働くと考える。一方,右側では機能脚とされる右下肢での荷重が多くなるため体幹では安定性を高めるシステムが働き,動揺が小さくなる。そのため下肢では小さい範囲での動揺で用いられる足関節制御が働くと考える。
左右上肢振り子運動では体幹だけでなく下肢による姿勢制御も異なることが示された。上肢の左右機能差は身体全身に波及することが明らかになった。
前回大会で,左右上肢の機能差を見出すため,左と右の一側上肢振り子運動での体幹における姿勢制御の相違を検討し,左右上肢の役割が異なることを示した。臨床上,この姿勢制御の相違は体幹だけでなく下肢にも波及していることが観察される。そこで今回,下肢の動態も含めてさらに考察を深め,興味深い結果が得られたので報告する。
【方法】
対象者は健常成人男性14名(年齢25.5±3.2歳)とした。課題動作は立位での上肢振り子運動で,肩関節屈伸各30°の幅で上肢を振ることとした。使用機器は三次元動作分析システムVICON MX(VICON社)と床反力計(AMTI社)を用いた。マーカーはPlug-In-Gait Modelに準じ貼付した。算出項目は上肢振り子運動時の骨盤,胸郭回旋角度,骨盤,胸郭中心点の総軌跡長と移動幅,足圧中心点(以下,COP)位置,床反力鉛直成分,下肢関節モーメントとした。各値は上肢振り子運動5往復分から算出し,3施行の平均値を解析値とした。更にCOP位置と床反力鉛直成分は安静立位3秒間の平均値を算出した。統計学的解析は左右上肢振り子運動の比較を対応のあるt検定またはWilcoxonの符号付き順位検定を用い,骨盤,胸郭回旋角度のばらつきを比較するためF検定を用いた。有意水準5%未満とした。
【結果】
床反力鉛直成分は,安静立位で左下肢が大きい傾向であり,左上肢振り子運動(以下,左側)では左下肢,右上肢振り子運動(以下,右側)では右下肢が大きい傾向があった。COP位置の前後方向は,右側で有意に前方に位置した(p<0.05)。骨盤回旋角度は左側で有意に大きく(p<0.05),胸郭回旋角度は有意差が認められなかった。F検定より,骨盤,胸郭回旋共に有意差が認められ,右側でばらつきが小さかった(p<0.01)。骨盤,胸郭中心点の総軌跡長は左側で有意に大きかった(p<0.01,p<0.05)。骨盤,胸郭中心点の移動幅は左側で有意に大きかった(p<0.05,p<0.01)。下肢関節モーメントは右側で右足関節底屈モーメントが有意に大きく(p<0.05)。左側で左股関節屈曲モーメントが有意に大きかった(p<0.01)。
【結論】
左側では支持脚とされる左下肢での荷重が多くなるため体幹では機能性を高めるシステムが働き,動揺が大きくなる。そのため,下肢では不安定性の高い場合に用いられる股関節制御が働くと考える。一方,右側では機能脚とされる右下肢での荷重が多くなるため体幹では安定性を高めるシステムが働き,動揺が小さくなる。そのため下肢では小さい範囲での動揺で用いられる足関節制御が働くと考える。
左右上肢振り子運動では体幹だけでなく下肢による姿勢制御も異なることが示された。上肢の左右機能差は身体全身に波及することが明らかになった。