第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本運動器理学療法学会 一般演題口述
(運動器)09

2016年5月28日(土) 12:30 〜 13:30 第4会場 (札幌コンベンションセンター 1階 107+108)

座長:内田茂博(広島国際大学 総合リハビリテーション学部 リハビリテーション学科)

[O-MT-09-2] 人工膝関節全置換術後の入院期間短縮による運動機能改善の相違

―術後6ヶ月までの推移―

前川昭次1, 谷口匡史1, 久郷真人1, 澤野翔一郎1, 有吉直弘1, 白鳥早樹子1, 川崎拓2 (1.滋賀医科大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2.滋賀医科大学医学部附属病院リハビリテーション科)

キーワード:人工膝関節全置換術, クリニカルパス, 運動機能

【はじめに,目的】

近年,人工膝関節全置換術(以下TKA)後のクリニカルパス(以下パス)は,短縮される傾向にある。我々はこれまでの学術大会で術後4週パスの妥当性を検証し,術後4週では術前機能までに改善することを報告した。当院では2014年4月より術後3週パスに変更されたが,期間短縮が退院時における運動機能の改善に違いがあるかは不明である。また,TKA機能の改善は術後6ヶ月で達成されるため,退院時機能だけでなく長期間の比較検討が必要である。本研究の目的は,入院期間の短縮が術後6ヶ月までの運動機能改善に差違があるかを検討することである。

【方法】

対象は当院整形外科で,2013年7月~2015年1月に変形性膝関節症を原因疾患として初回片側TKAを施行した87名とした。これらの患者を,4週パスから逸脱することなく経過した43名(平均在院日数29.3±3.9日;男性5名,女性38名,平均年齢72.9±8.5歳)と,3週パスで経過した44名(平均在院日数24.0±3.2日;男性3名,女性41名,平均年齢74.2±5.9歳)の2群に分けた。測定項目は膝関節他動的伸展可動域(以下伸展ROM),膝関節他動的屈曲可動域(以下屈曲ROM),筋力測定器(OG技研社製ISOFORCE GT-360)にて測定した最大等尺性膝関節伸展筋力(以下伸展筋力),10m歩行時間,Timed Up & Go Test(以下TUG),5回椅子立ち座りテスト(Sit to stand test;以下STS),歩行時疼痛(以下VAS),静止立位荷重量(術側荷重量/体重×100%)の計8項目であった。測定時期は術前,退院時,術後3カ月,術後6カ月であった。統計処理は2群の平均値を各々算出し,2群間の有意差の検定には対応のないt検定を行った。有意水準は5%未満とし,統計ソフトSPSS Ver20を使用した。

【結果】

術前のすべての項目において有意差を認めなかった。4週パス群,3週パス群の2群間の比較において,退院時に有意差を示した項目は伸展筋力(Nm/kg;4週0.68±0.24,3週0.58±0.20,p=0.02),STS(4週11.2±2.5秒,3週12.3±5.1秒,p=0.02)の2項目で,いずれも4週パス群が有意に改善していた。その他の項目で有意差はみられなかった。術後3カ月では伸展筋力(4週0.95±0.30,3週0.79±0.25,p=0.01)のみに有意差がみられ,その他の項目ではみられなかった。術後6カ月では両群間の有意差を示す項目はなかった。

【結論】

退院時及び術後3カ月で3週パス群の膝伸展筋力が有意に低かったことから,現在当院で採用している3週パスでは,入院中および退院時指導において,大腿四頭筋の筋力トレーニングを更に重視していく必要性が示唆された。一方で,術後6ヶ月における両群の運動機能に違いはなかったことから,長期的には入院期間短縮の影響を受けず,良好な機能改善が得られることを示した。