第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本運動器理学療法学会 一般演題口述
(運動器)09

Sat. May 28, 2016 12:30 PM - 1:30 PM 第4会場 (札幌コンベンションセンター 1階 107+108)

座長:内田茂博(広島国際大学 総合リハビリテーション学部 リハビリテーション学科)

[O-MT-09-4] 人工膝関節置換術後早期退院時に患者が有する不安

飛山義憲1, 紙谷司2, 中北智士3, 森一晃3, 和田治3 (1.東京工科大学, 2.京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻, 3.あんしん病院)

Keywords:人工膝関節, 早期退院, 不安

【はじめに,目的】

わが国では医療費の増加に伴い,在院日数の短縮化による医療費削減が求められている。人工膝関節置換術(TKA)においても在院日数は短縮化の傾向にあるが,早期退院時には著明な運動機能低下が生じ,退院後にも強い疼痛が生じることが報告されている。そのため早期退院時には疼痛や運動機能に対する不安を有すると推察されるが,これまで早期退院時の不安を調査した報告は見あたらない。本研究ではTKA後早期退院時に患者が有する不安を調査し,その不安がその後の膝機能に及ぼす影響を検討することを目的とした。さらに,早期退院時の不安と術前因子との関連性を検討した。


【方法】

2015年3月から8月に変形性膝関節症を原疾患として初回のTKAを施行する50歳以上80歳未満の129名(男性25名,女性104名,平均年齢70.5±6.5歳)を対象とし,認知機能に問題がある者,歩行に影響を及ぼす他の疾患を有する者を除外した。評価項目は術前の抑うつ症状(Center for Epidemiologic Studies Depression Scale short form;CES-D),術前および術後1ヶ月の膝機能(New Knee Society Score),退院時の創部,疼痛,歩行,転倒に対する不安(Numeric Rating Scale;数値が大きいほど不安が大きく表されるよう評価)とした。術翌日から歩行器歩行練習を開始,術後3日目に杖歩行自立,術後5日目に杖歩行での退院を目標とし,退院後は週に一度の外来リハビリテーションを継続した。統計解析として,従属変数を1ヶ月後のKSS,独立変数を退院時の不安,年齢,性別,Body mass index(BMI),手術時間とした重回帰分析を行い,術後1ヶ月の膝機能と退院時の不安の関係性を検討した。また,退院時の不安と術前の因子との関係性を検討するため,退院時の不安を従属変数,年齢,性別,BMI,CES-D,併存疾患数,術前のKSSを独立変数とした重回帰分析を行った。いずれもステップワイズ法とし,有意水準は5%とした。


【結果】

術後フォローアップを行えなかった13名を除外した116名で解析を行った。退院時の不安はいずれも同程度の不安が報告された(創部;4.1±2.5,疼痛;4.0±2.5,歩行;4.0±2.4,転倒;4.4±2.8)。重回帰分析の結果,術後1ヶ月のKSSと退院時の歩行に対する不安が有意な関連性を示した(標準化回帰係数β=-0.19,95%信頼区間;-3.5~-0.02)。また,退院時の不安と術前の因子との関係性を検討した結果,疼痛に対する不安が術前のCES-Dと有意な関連性を示した(標準化回帰係数β=0.21,95%信頼区間;0.02~0.19)。


【結論】

早期退院時の歩行に対する不安は術後1ヶ月の膝機能に影響を及ぼすことから,早期退院に際しては退院時の歩行に対する不安を軽減させる取り組みが必要であることが示唆された。また,早期退院時の疼痛に対する不安は術前の抑うつ症状の影響を受けることから,術前の抑うつ症状を把握し早期退院に向けて不安の軽減を図ることが重要である。