[O-MT-10-2] 人工股関節置換術後の静的立位姿勢制御の変化
―前外側進入と後側方進入の比較―
Keywords:人工股関節置換術, 重心動揺, 荷重率
【はじめに,目的】人工股関節置換術(以下THA)における進入法の違いが身体へ与える影響を比較した報告は多数されているが,静的立位姿勢制御を比較した報告は少ない。当院では前外側進入(以下AL)と後側方進入(以下PL)を行い,可及的早期の社会復帰を目指している。本研究は,AL,PLの進入法の違いが静的立位姿勢制御に及ぼす影響を術後経過などとあわせて比較検討し,明確にすることを目的とした。
【方法】対象は当院で片側THAを行った37名(AL群18名,PL群19名,平均年齢67.8±9.6歳)で,術側分布・性差・年齢・術前JOAスコア(以下JOA)において両群間に有意差はなかった。方法はANIMA社ツイングラビコーダーGP6000を用い,計測時間を30秒とし,静止立位時の重心動揺,術側荷重率(以下荷重率)を術前と退院時に測定した。重心動揺指標は総軌跡長,X方向・Y方向動揺中心変位(以下MX・MY)を採用した。術後経過として杖歩行自立日,在院日数を調査した。統計処理は,両群の重心動揺指標・荷重率・退院時JOA・杖歩行自立日・在院日数をMann-whitney-U検定を用いて比較し,群内の術前,退院時の重心動揺指標・荷重率・JOAの分析をWilcoxonの符号付順位和検定を用いて検討した。有意水準は5%未満とした。
【結果】AL群,PL群の順に,総軌跡長(cm)は,術前37.1±9.6/退院時38.4±16.6,34.5±19.7/35.5±13.8,MXは-0.98±1.28/0.23±1.09,-1.20±1.21/-0.10±1.20,MYは,-2.72±1.78/-1.88±2.09,-2.06±1.53/-1.91±1.83であり,両群間に差は無かった。荷重率(%)は,42.4±8.6/50.7±5.7,41.5±7.6/47.2±5.1であり,退院時でAL群が有意に高値であった(p<0.05)。退院時JOAは,86.1±43.2,80.3±41.3であり,両群間に差は無かった。杖歩行自立日(術後病日)は15.9±6.4,20.6±5.7,在院日数(術後病日)は30.2±10.3,42.6±15.6であり,AL群が有意に低値であった(p<0.05)。群内の比較は両群とも荷重率,JOAが退院時に有意に高値であった(p<0.05)。
【結論】重心動揺は両群間で有意差はなく,進入法の違いは重心動揺に影響しないことが示唆された。両群ともJOAは有意に改善したが,総軌跡長は,同年代健常者データに対して高値を示し,姿勢動揺量が大きく,姿勢制御の安定化を図ることが重要であると考えた。また,AL群がPL群と比較して有意に荷重率が改善し,杖歩行自立が早く,早期退院した。これは,ALはPLに比べ,股関節周囲筋の侵襲が少なく,股関節外転筋力が早期に回復すること,股関節内転可動域が増大することが報告されており,AL群が荷重に必要な股関節機能を早期に獲得したことによると考えられた。術側荷重不足は下肢筋出力の低下,姿勢,動作の非対称性を招き,運動機能の回復の遅延につながることが知られている。そのため,PLは,ALに比べ,より侵襲の影響を踏まえて,荷重向上に着目した理学療法が必要であることが示唆された。
【方法】対象は当院で片側THAを行った37名(AL群18名,PL群19名,平均年齢67.8±9.6歳)で,術側分布・性差・年齢・術前JOAスコア(以下JOA)において両群間に有意差はなかった。方法はANIMA社ツイングラビコーダーGP6000を用い,計測時間を30秒とし,静止立位時の重心動揺,術側荷重率(以下荷重率)を術前と退院時に測定した。重心動揺指標は総軌跡長,X方向・Y方向動揺中心変位(以下MX・MY)を採用した。術後経過として杖歩行自立日,在院日数を調査した。統計処理は,両群の重心動揺指標・荷重率・退院時JOA・杖歩行自立日・在院日数をMann-whitney-U検定を用いて比較し,群内の術前,退院時の重心動揺指標・荷重率・JOAの分析をWilcoxonの符号付順位和検定を用いて検討した。有意水準は5%未満とした。
【結果】AL群,PL群の順に,総軌跡長(cm)は,術前37.1±9.6/退院時38.4±16.6,34.5±19.7/35.5±13.8,MXは-0.98±1.28/0.23±1.09,-1.20±1.21/-0.10±1.20,MYは,-2.72±1.78/-1.88±2.09,-2.06±1.53/-1.91±1.83であり,両群間に差は無かった。荷重率(%)は,42.4±8.6/50.7±5.7,41.5±7.6/47.2±5.1であり,退院時でAL群が有意に高値であった(p<0.05)。退院時JOAは,86.1±43.2,80.3±41.3であり,両群間に差は無かった。杖歩行自立日(術後病日)は15.9±6.4,20.6±5.7,在院日数(術後病日)は30.2±10.3,42.6±15.6であり,AL群が有意に低値であった(p<0.05)。群内の比較は両群とも荷重率,JOAが退院時に有意に高値であった(p<0.05)。
【結論】重心動揺は両群間で有意差はなく,進入法の違いは重心動揺に影響しないことが示唆された。両群ともJOAは有意に改善したが,総軌跡長は,同年代健常者データに対して高値を示し,姿勢動揺量が大きく,姿勢制御の安定化を図ることが重要であると考えた。また,AL群がPL群と比較して有意に荷重率が改善し,杖歩行自立が早く,早期退院した。これは,ALはPLに比べ,股関節周囲筋の侵襲が少なく,股関節外転筋力が早期に回復すること,股関節内転可動域が増大することが報告されており,AL群が荷重に必要な股関節機能を早期に獲得したことによると考えられた。術側荷重不足は下肢筋出力の低下,姿勢,動作の非対称性を招き,運動機能の回復の遅延につながることが知られている。そのため,PLは,ALに比べ,より侵襲の影響を踏まえて,荷重向上に着目した理学療法が必要であることが示唆された。