第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本運動器理学療法学会 一般演題口述
(運動器)12

Sat. May 28, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第4会場 (札幌コンベンションセンター 1階 107+108)

座長:岡田誠(松阪市民病院 リハビリテーション室)

[O-MT-12-2] 大腿骨近位部骨折患者に対する理学療法が肺炎の発症に及ぼす影響

小根田夏子1, 熊代功児1, 半田和也1, 塩出速雄2 (1.倉敷中央病院リハビリテーション部, 2.倉敷中央病院整形外科)

Keywords:大腿骨近位部骨折, 肺炎, 早期離床

【はじめに,目的】

大腿骨近位部骨折の術後合併症のうち,肺炎は入院中の死亡原因として最も多い。特に誤嚥性肺炎は大腿骨近位部骨折後に生じることが多く,生命予後に影響する。一方で,誤嚥性肺炎発症後の理学療法の有用性は報告されているが,誤嚥性肺炎の予防における理学療法の効果は明確ではない。本研究の目的は,理学療法が大腿骨近位部骨折患者の肺炎発症に及ぼす影響を明らかにすることとした。

【方法】

対象は2014年1月から2015年6月に大腿骨近位部骨折にて当院整形外科に入院した65歳以上の患者175例(男性40例,女性135例,平均年齢81.9±8.2歳)とした。保存療法,病的骨折,院内発症例は除外した。従属変数として肺炎の有無,独立変数として,患者要因(年齢,性別,神経学的疾患既往の有無,認知症の有無,呼吸器疾患既往の有無),医学的要因(骨折タイプ(頚部・転子部・転子下),受傷から手術までの日数),理学療法要因(手術からPT開始までの日数,手術から端座位開始までの日数)を後方視的に調査した。

統計解析は,対象者を肺炎発症群と非発症群に分類し,群間比較を行った。群間比較にてp<0.2以下の変数を独立変数,肺炎の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。統計学的有意水準は5%とした。

【結果】

肺炎発症群は14例(発生率8%)で,誤嚥性肺炎11例,不明3例であった。手術から肺炎発症までの平均日数は-3.8日と術前発症が多く,術後発症は3例であった。

肺炎発症群と非発症群の比較の結果,性別(p=0.019),呼吸器疾患既往の有無(p=0.004),受傷から手術までの日数(p=0.078),手術からPT開始までの日数(p=0.180)が選択された。ロジスティック回帰分析の結果,呼吸器疾患既往の有無(OR:5.491,95%CI:1.714-17.589),性別(OR:3.702,95%CI:1.160-11.815)が有意な項目として抽出された(モデルχ2検定p=0.001)。

【結論】

先行研究によると大腿骨近位部骨折患者の手術前後における肺炎の発生率は7~9%と報告されており,本研究の肺炎発生率は8%と同様であった。肺炎発症までの日数は先行研究によって様々だが,本研究では術前発症が11例(79%)と多かった。

本研究の結果より,大腿骨近位部骨折患者の肺炎発症に影響する因子として,呼吸器疾患の既往を有すること,男性であることが挙げられ,理学療法要因は選択されなかった。理学療法要因とした手術からPT開始までの日数が選択されなかった要因として,手術から肺炎発症までの平均日数が-3.8日であるのに対し,手術からPT開始までの平均日数は-1.5日とPT開始より早期に肺炎を発症していたことが考えられる。一方,術後発症が少ない要因として,誤嚥性肺炎の危険因子の一つに長時間の仰臥位が報告されているが,本研究では手術から端座位開始までの平均日数が2.2日と術後早期から端座位を開始したことで肺炎を予防できたと考える。