[O-MT-12-3] GNRIを用いた大腿骨近位部骨折患者の術前栄養状態と術後ADLの関連
神戸市急性期総合病院の理学療法士による多施設共同研究
Keywords:大腿骨近位部骨折, GNRI, 多施設共同研究
【はじめに,目的】
現在,人口の高齢化とともに大腿骨近位部骨折患者は増加と高齢化傾向にある。また近年,リハビリテーション分野における栄養と運動機能との関連が注目されてきているが,栄養スケールは多数あり先行研究でも種々の指標を散見する。Geriatric nutritional risk index(以下,GNRI)は高齢者や透析患者に適応されるスケールで,客観的指標(Alb値・体重)を使用しており栄養状態との相関が報告されている。しかし大腿骨近位部骨折術後運動機能との関連はあまり報告されていない。そこで今回,大腿骨近位部骨折患者を対象にGNRIを用いて術前の栄養状態を評価し,術後日常生活動作(以下,ADL)との関連について検討した。
【方法】
第2・3次救急総合病院の3施設で行った。2013年6月1日から2015年6月30日に入院した患者を調査対象とした。大腿骨近位部骨折の手術を施行した329症例のうち,65歳未満例,死亡・術後急性増悪例,受傷前歩行不能例,術後免荷期間を要した例を除いた232名(男性41名,女性191名,83.4±7.1歳)を対象とした。
年齢・性別等の基本情報,HDS-R,骨折型,術式,既往歴,術後合併症,術前Alb・Hbを記録した。運動機能は術後2週/退院時にFIMと10m歩行速度を測定した。統計解析は,栄養指標にはGNRIを用い運動機能との関連をピアソンの相関係数を用いて検討した。またGNRIの中央値を基準に良好群と低栄養群に分けて各項目の群間比較を行った。数値項目にMann-Whitneyの検定と対応のないt-検定,カテゴリー項目にχ2検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
GNRIは運動項目FIM(以下,mFIM)の術後2週(r=0.33,p<0.01),退院時(r=0.30,p<0.01)と正の相関を認めた。また歩行速度は術後2週でGNRIと負の相関(r=-0.35,p<0.01)を認めたが,退院時では相関を認めなかった。
両群のGNRIの平均値は良好群97.6±5.1,低栄養群83.5±6.7であった。両群間で年齢・骨折型などに有意差は認めなかった。Hb値は良好群12.3±1.5と低栄養群11.1±1.6で有意差を認めた(p<0.01)。HDS-Rは20点未満が良好群47名(40.5%),低栄養群69名(59.5%)と低栄養群で偏りを認めた(p<0.05)。10m歩行速度は術後2週で良好群21.0±12.1秒と低栄養群31.1±20.8秒(p<0.01),退院時は良好群19.9±13.0秒と低栄養群27.7±18.4(p<0.05)であり良好群で有意に速かった。退院時mFIMは良好群61.3±20.3と低栄養群53.2±20.4であり良好群で有意に高値であった(p<0.01)。在院日数と退院転帰には差を認めなかった。
【結論】
大腿骨近位部骨折患者の栄養状態を評価しADLとの比較を行った結果,GNRIと運動機能に相関を認めた。また栄養状態良好群で歩行速度と退院時mFIMが有意に高値であった。今回の結果より,術前栄養状態が術後ADLに影響していることが示唆され,GNRIが術後理学療法において有用な情報である可能性がある。
現在,人口の高齢化とともに大腿骨近位部骨折患者は増加と高齢化傾向にある。また近年,リハビリテーション分野における栄養と運動機能との関連が注目されてきているが,栄養スケールは多数あり先行研究でも種々の指標を散見する。Geriatric nutritional risk index(以下,GNRI)は高齢者や透析患者に適応されるスケールで,客観的指標(Alb値・体重)を使用しており栄養状態との相関が報告されている。しかし大腿骨近位部骨折術後運動機能との関連はあまり報告されていない。そこで今回,大腿骨近位部骨折患者を対象にGNRIを用いて術前の栄養状態を評価し,術後日常生活動作(以下,ADL)との関連について検討した。
【方法】
第2・3次救急総合病院の3施設で行った。2013年6月1日から2015年6月30日に入院した患者を調査対象とした。大腿骨近位部骨折の手術を施行した329症例のうち,65歳未満例,死亡・術後急性増悪例,受傷前歩行不能例,術後免荷期間を要した例を除いた232名(男性41名,女性191名,83.4±7.1歳)を対象とした。
年齢・性別等の基本情報,HDS-R,骨折型,術式,既往歴,術後合併症,術前Alb・Hbを記録した。運動機能は術後2週/退院時にFIMと10m歩行速度を測定した。統計解析は,栄養指標にはGNRIを用い運動機能との関連をピアソンの相関係数を用いて検討した。またGNRIの中央値を基準に良好群と低栄養群に分けて各項目の群間比較を行った。数値項目にMann-Whitneyの検定と対応のないt-検定,カテゴリー項目にχ2検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
GNRIは運動項目FIM(以下,mFIM)の術後2週(r=0.33,p<0.01),退院時(r=0.30,p<0.01)と正の相関を認めた。また歩行速度は術後2週でGNRIと負の相関(r=-0.35,p<0.01)を認めたが,退院時では相関を認めなかった。
両群のGNRIの平均値は良好群97.6±5.1,低栄養群83.5±6.7であった。両群間で年齢・骨折型などに有意差は認めなかった。Hb値は良好群12.3±1.5と低栄養群11.1±1.6で有意差を認めた(p<0.01)。HDS-Rは20点未満が良好群47名(40.5%),低栄養群69名(59.5%)と低栄養群で偏りを認めた(p<0.05)。10m歩行速度は術後2週で良好群21.0±12.1秒と低栄養群31.1±20.8秒(p<0.01),退院時は良好群19.9±13.0秒と低栄養群27.7±18.4(p<0.05)であり良好群で有意に速かった。退院時mFIMは良好群61.3±20.3と低栄養群53.2±20.4であり良好群で有意に高値であった(p<0.01)。在院日数と退院転帰には差を認めなかった。
【結論】
大腿骨近位部骨折患者の栄養状態を評価しADLとの比較を行った結果,GNRIと運動機能に相関を認めた。また栄養状態良好群で歩行速度と退院時mFIMが有意に高値であった。今回の結果より,術前栄養状態が術後ADLに影響していることが示唆され,GNRIが術後理学療法において有用な情報である可能性がある。