[O-MT-12-5] 大腿骨近位部骨折術後の理学療法において認知症に伴う攻撃性が参加状況と機能予後に及ぼす影響
キーワード:大腿骨近位部骨折, 認知症, 予後予測
【はじめに,目的】
整形外科疾患の入院患者のBarthel Indexの改善は,理学療法への参加状況に加え,認知機能障害とも関連していたとPaolucciらは報告している。認知症合併例は行動心理学的症候(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia,以下BPSD)を伴うことが多く,特に攻撃性を有する患者で理学療法への参加拒否をしばしば経験する。しかし,その攻撃性が理学療法への参加に与える影響を検討した報告はみあたらない。今回,我々は,大腿骨近位部骨折術後に回復期リハビリテーション病棟へ入院した患者を対象にして,認知症に伴う攻撃性が理学療法への参加状況と機能予後に与える影響を検討したので報告する。
【方法】
対象は,大腿骨近位部骨折術後にA病院回復期リハビリテーション病棟へX年4月からX+3年3月までの期間に入院した96例のうち,認知症あり,重篤な合併症なし,受傷前の歩行が杖なしか一本杖で自立,という組入基準を満たした41例(女性28例,平均年齢84.9±6.0歳)である。なお,本研究では入院時Mini Mental State Examination(以下MMSE)23点以下を認知症ありとした。対象の平均入院日数は83.0±14.4日,診断名は大腿骨頸部骨折/大腿骨転子部骨折が10/31例で,頸部骨折患者は全例人工骨頭置換術を,転子部骨折患者は全例骨接合術を施行されていた。理学療法への参加状況は,1~6点で評価するPittsburgh Rehabilitation Participation Scale(以下PRPS)を用い,入院中の平均値を算出した。BPSDは,症状を点数化するBehavioral Pathology in Alzheimer's Disease Frequency Weighted Severity Scaleを用いて入院2週目に評価し,攻撃性1点以上を攻撃性ありとした。機能予後は,退院時の歩行のFunctional Independence Measure(以下FIM)で評価した。本研究では,対象を攻撃性なし群とあり群とに分け,MMSE,退院時歩行FIM,PRPSを比較した。次に,攻撃性あり群を退院時歩行FIMが4点以上の群(改善良好群)と3点以下の群(改善不良群)とに分け,その2群間でMMSE,PRPS,攻撃性の点数を比較した。統計手法はMann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
攻撃性は15例で認め,26例に認めなかった。攻撃性あり群はなし群よりMMSE,退院時歩行FIM,PRPSが有意に低かった(p<0.01)。攻撃性あり群を改善良好群と不良群に分けると,それぞれ7例と8例であった。改善不良群のPRPSは良好群よりも有意に低く,攻撃性は有意に高かった(p<0.01)が,MMSEは有意差を認めなかった。
【結論】
本研究より,大腿骨近位部骨折術後の患者において,攻撃性を認めた症例では参加状況及び機能予後が不良となり,攻撃性が重度である症例ほどその傾向が強くなることが示唆された。従って,大腿骨近位部骨折術後の認知症合併例に対する理学療法において,認知症に伴う攻撃性に関する評価は参加状況と機能予後を予測する有用な評価の一つであると考えられた。
整形外科疾患の入院患者のBarthel Indexの改善は,理学療法への参加状況に加え,認知機能障害とも関連していたとPaolucciらは報告している。認知症合併例は行動心理学的症候(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia,以下BPSD)を伴うことが多く,特に攻撃性を有する患者で理学療法への参加拒否をしばしば経験する。しかし,その攻撃性が理学療法への参加に与える影響を検討した報告はみあたらない。今回,我々は,大腿骨近位部骨折術後に回復期リハビリテーション病棟へ入院した患者を対象にして,認知症に伴う攻撃性が理学療法への参加状況と機能予後に与える影響を検討したので報告する。
【方法】
対象は,大腿骨近位部骨折術後にA病院回復期リハビリテーション病棟へX年4月からX+3年3月までの期間に入院した96例のうち,認知症あり,重篤な合併症なし,受傷前の歩行が杖なしか一本杖で自立,という組入基準を満たした41例(女性28例,平均年齢84.9±6.0歳)である。なお,本研究では入院時Mini Mental State Examination(以下MMSE)23点以下を認知症ありとした。対象の平均入院日数は83.0±14.4日,診断名は大腿骨頸部骨折/大腿骨転子部骨折が10/31例で,頸部骨折患者は全例人工骨頭置換術を,転子部骨折患者は全例骨接合術を施行されていた。理学療法への参加状況は,1~6点で評価するPittsburgh Rehabilitation Participation Scale(以下PRPS)を用い,入院中の平均値を算出した。BPSDは,症状を点数化するBehavioral Pathology in Alzheimer's Disease Frequency Weighted Severity Scaleを用いて入院2週目に評価し,攻撃性1点以上を攻撃性ありとした。機能予後は,退院時の歩行のFunctional Independence Measure(以下FIM)で評価した。本研究では,対象を攻撃性なし群とあり群とに分け,MMSE,退院時歩行FIM,PRPSを比較した。次に,攻撃性あり群を退院時歩行FIMが4点以上の群(改善良好群)と3点以下の群(改善不良群)とに分け,その2群間でMMSE,PRPS,攻撃性の点数を比較した。統計手法はMann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
攻撃性は15例で認め,26例に認めなかった。攻撃性あり群はなし群よりMMSE,退院時歩行FIM,PRPSが有意に低かった(p<0.01)。攻撃性あり群を改善良好群と不良群に分けると,それぞれ7例と8例であった。改善不良群のPRPSは良好群よりも有意に低く,攻撃性は有意に高かった(p<0.01)が,MMSEは有意差を認めなかった。
【結論】
本研究より,大腿骨近位部骨折術後の患者において,攻撃性を認めた症例では参加状況及び機能予後が不良となり,攻撃性が重度である症例ほどその傾向が強くなることが示唆された。従って,大腿骨近位部骨折術後の認知症合併例に対する理学療法において,認知症に伴う攻撃性に関する評価は参加状況と機能予後を予測する有用な評価の一つであると考えられた。