[O-MT-12-6] 大腿骨近位部骨折における術後機能回復の遅延因子と術後歩行開始日数の関連
~90歳以上と70-80歳代の比較~
Keywords:超高齢者, 大腿骨近位部骨折, 遅延因子
【はじめに,目的】
社会の高齢化に伴い,当院における90歳以上の大腿骨近位部骨折に対する手術件数は近年増加傾向にあり,また今後も更なる増加が予想される。
諸家の報告から,大腿骨近位部骨折の予後予測として,術後の歩行開始時期と,その後のADL獲得には相関があるとされている。また術後における機能回復の遅延因子として「受傷前の活動状況」「認知機能」「(心不全・腎不全などの)全身状態」があげられている。
今回,90歳以上の超高齢患者群と70-80歳代の患者群において,歩行開始時期と上記の3因子との関係を比較検討した。
【方法】
当院にて2014年4月~2015年8月まで,大腿骨近位部骨折で手術を行った70歳代以上の全197例(男性41女性156)から,90歳以上の患者45例(男性7女性38,手術時年齢平均93.1±3.0歳,以下超高齢群)と,70-80歳代152例から無作為に抽出した45例(男性8女性37,手術時年齢平均82.5±4.4歳,以下対照群)を対象とした。
「受傷前の活動状況」の指標として「UCLA Activity Score(以下UCLA)」,「認知機能」の指標として「柄澤式『老人知能の臨床的判定基準』(以下柄澤式認知)」,「全身状態」の指標として「ASA術前状態分類(以下ASA)」を用いてそれぞれを評価し,術後歩行開始日数(以下歩行開始)との関連を比較検討した。
【結果】
超高齢群のうち4例で術後3~6週の荷重制限があり,分析から除外した。対照群では荷重制限の例はなかった。また,歩行開始前に退院した例も11例,6例あり分析から除外した。
歩行開始は超高齢群で平均9.4±5.8日,対照群で平均7.0±3.9日であった。
術後7日以内,14日以内に歩行開始した患者の割合は,超高齢群では43%,83%であったのに対し,対照群では72%,95%であり,超高齢群で歩行開始が遅延する傾向がみられた。
各因子については,「UCLA」が4,3,2,1と低値となるにつれて,歩行開始は超高齢群でそれぞれ術後1.0日,3.8日,8.3日,13.3日と遅延していくのに対し,対照群は5.0日,7.1日,7.0日,8.0日と関連がみられなかった。
「柄澤式認知」についても,-,±,+1,+2,+3と重度化するにつれて歩行開始が超高齢群でそれぞれ術後1.0日,3.9日,10.3日,10.0日,13.3日と,-・±と+1以上との間で歩行開始に大きな差がみられた。対照群は5.0日,9.3日,8.8日,4.4日,7.4日であり関連はみられなかった。
「ASA」については,II,IIIと全身状態がハイリスクとなると歩行開始が超高齢群で平均7.1日,11.1日と遅延したが,対照群では7.4日,6.1日と関連がみられなかった。
【結論】
大腿骨近位部骨折における術後歩行開始日数と,遅延因子とされる「受傷前の活動状況」「認知機能」「全身状態」との関連を,超高齢群と対照群について比較検討した。超高齢群は歩行開始が遅延する例が多く,また対照群と比べ上記の3因子の影響を受けているが,特に認知機能の影響を強く受けていると考えられた。
社会の高齢化に伴い,当院における90歳以上の大腿骨近位部骨折に対する手術件数は近年増加傾向にあり,また今後も更なる増加が予想される。
諸家の報告から,大腿骨近位部骨折の予後予測として,術後の歩行開始時期と,その後のADL獲得には相関があるとされている。また術後における機能回復の遅延因子として「受傷前の活動状況」「認知機能」「(心不全・腎不全などの)全身状態」があげられている。
今回,90歳以上の超高齢患者群と70-80歳代の患者群において,歩行開始時期と上記の3因子との関係を比較検討した。
【方法】
当院にて2014年4月~2015年8月まで,大腿骨近位部骨折で手術を行った70歳代以上の全197例(男性41女性156)から,90歳以上の患者45例(男性7女性38,手術時年齢平均93.1±3.0歳,以下超高齢群)と,70-80歳代152例から無作為に抽出した45例(男性8女性37,手術時年齢平均82.5±4.4歳,以下対照群)を対象とした。
「受傷前の活動状況」の指標として「UCLA Activity Score(以下UCLA)」,「認知機能」の指標として「柄澤式『老人知能の臨床的判定基準』(以下柄澤式認知)」,「全身状態」の指標として「ASA術前状態分類(以下ASA)」を用いてそれぞれを評価し,術後歩行開始日数(以下歩行開始)との関連を比較検討した。
【結果】
超高齢群のうち4例で術後3~6週の荷重制限があり,分析から除外した。対照群では荷重制限の例はなかった。また,歩行開始前に退院した例も11例,6例あり分析から除外した。
歩行開始は超高齢群で平均9.4±5.8日,対照群で平均7.0±3.9日であった。
術後7日以内,14日以内に歩行開始した患者の割合は,超高齢群では43%,83%であったのに対し,対照群では72%,95%であり,超高齢群で歩行開始が遅延する傾向がみられた。
各因子については,「UCLA」が4,3,2,1と低値となるにつれて,歩行開始は超高齢群でそれぞれ術後1.0日,3.8日,8.3日,13.3日と遅延していくのに対し,対照群は5.0日,7.1日,7.0日,8.0日と関連がみられなかった。
「柄澤式認知」についても,-,±,+1,+2,+3と重度化するにつれて歩行開始が超高齢群でそれぞれ術後1.0日,3.9日,10.3日,10.0日,13.3日と,-・±と+1以上との間で歩行開始に大きな差がみられた。対照群は5.0日,9.3日,8.8日,4.4日,7.4日であり関連はみられなかった。
「ASA」については,II,IIIと全身状態がハイリスクとなると歩行開始が超高齢群で平均7.1日,11.1日と遅延したが,対照群では7.4日,6.1日と関連がみられなかった。
【結論】
大腿骨近位部骨折における術後歩行開始日数と,遅延因子とされる「受傷前の活動状況」「認知機能」「全身状態」との関連を,超高齢群と対照群について比較検討した。超高齢群は歩行開始が遅延する例が多く,また対照群と比べ上記の3因子の影響を受けているが,特に認知機能の影響を強く受けていると考えられた。