第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本運動器理学療法学会 一般演題口述
(運動器)13

2016年5月28日(土) 17:10 〜 18:10 第4会場 (札幌コンベンションセンター 1階 107+108)

座長:植田一幸(広島大学病院 診療支援部 リハビリテーション部門)

[O-MT-13-2] 足趾形成術を受けた関節リウマチ患者の歩行能力,足底圧,疼痛の変化

下田隼人1, 折津英幸1, 清水由貴1, 藤浦達1, 林和子1, 菊地尚久2, 持田勇一3 (1.横浜市立大学附属市民総合医療センターリハビリテーション部, 2.横浜市立大学附属市民総合医療センターリハビリテーション科, 3.横浜市立大学附属市民総合医療センターリウマチ膠原病センター)

キーワード:関節リウマチ, 足趾形成術, 歩行分析

【はじめに,目的】

関節リウマチ(以下RA)患者では,外反母趾,中足趾節(MTP)関節脱臼などの前足部変形により荷重時に疼痛を生じ,歩行能力低下をきたす。足趾形成術は,足部の除痛と歩行能力向上を目的に施行されるが,術前後での歩行能力の変化に関する報告は少ない。また,前足部疼痛の原因として,局所の足底圧上昇が考えられているが,これに関する詳細な報告はない。本研究の目的は,足趾形成術を受けたRA患者の歩行能力,足底圧,局所疼痛の変化を明らかにし,今後の理学療法の一助とすることである。

【方法】

対象は足趾形成術を受けたRA患者14名22足(全例女性,年齢71±8歳,RA罹患歴25±14年,Steinbrocker分類:stageIII11名II3名,classI7名II7名)。足趾形成術の内訳は,関節破壊の程度に応じて母趾人工関節置換術,中足骨骨切り短縮術,切除関節形成術が選択された。後療法は,術後19日間の患肢免荷後にK-wireを抜去し,足底板装着下での全荷重歩行を開始した。理学療法は,手術翌日から開始され,患肢免荷期間中は下肢の関節可動域練習,筋力増強練習を行い,K-wire抜去後は歩行練習を開始した。退院時のBarthel indexは100点(IQR:97.5-100)であり,全例で歩行自立していた。退院時に足趾の関節可動域練習,足趾の屈筋運動を指導し在宅での自主練習を促した。測定は術前と術後4か月に行った。測定項目は,歩行評価として歩行速度,歩行率,歩幅,両脚支持期時間率を計測した。足底圧の評価は,足圧分布測定システムF-Scanを用いて歩行中の足底圧を計測した。解析では,足趾部は母趾,第2趾,第3-5趾に分画し,MTP関節部は1趾MTP,2趾MTP,3-5趾MTPに分画した計6区画の最大圧力(kg/cm2)を抽出した。連続3歩行周期の平均値を各区画の代表値とした。前足部の疼痛評価にはVisual Analog Scale(VAS)を用いた。統計処理には歩行速度,歩行率,歩幅,両脚支持期時間率,足底圧の術前後の比較に対応のあるt検定を用い,また,VASの術前後の比較にWilcoxonの符号付き順位検定を用いた。有意水準は5%未満とした。

【結果】

歩行評価では歩行速度,歩行率,歩幅,両脚支持期時間率において術前後での有意な変化を示さなかった。足底圧は,2趾MTP(術前4.7±3.4kg/cm2,術後2.8±2.9kg/cm2),3-5趾MTP(術前3.5±2.4kg/cm2,術後2.2±1.6kg/cm2)の最大圧力が術後有意に減少した。前足部の疼痛は,術後に有意に改善した(術前50(IQR:25-77),術後0(IQR:0-11))。

【結論】

足趾形成術術後4か月後のRA患者の歩行速度,歩幅,歩行率,両脚支持期時間率は術前と同程度であり,前足部の疼痛は軽減していた。疼痛軽減にはMTP関節部の減圧が寄与していることが示唆された。また,入院中の理学療法と在宅での自主練習指導により,術後4か月には術前と同程度の歩行能力を有することが示された。