第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本運動器理学療法学会 一般演題口述
(運動器)14

2016年5月28日(土) 18:20 〜 19:20 第4会場 (札幌コンベンションセンター 1階 107+108)

座長:来間弘展(首都大学東京)

[O-MT-14-2] 3Dデジタイザーによる肩甲骨角度の測定信頼性

乙戸崇寛1,2, 服部寛2,4, 福多佑貴3, 赤坂清和1,2 (1.埼玉医科大学保健医療学部理学療法学科, 2.埼玉医科大学大学院医学研究科, 3.特別養護老人ホーム大野の郷, 4.埼玉医科大学総合医療センター)

キーワード:3Dデジタイザー, 肩甲骨, 信頼性

【はじめに,目的】これまでの肩甲骨角度の測定方法には電磁トラッキング法,電気傾斜角度計,ハイスピードカメラによる動画撮影とマーカー貼付による動作解析装置を用いた測定方法等が報告されている。しかし,肩甲骨は肩関節運動時に皮下で運動するため,簡便にその角度変化を正確に捉える方法は十分に確立されていない。そこで我々は,製図デザインや口腔内形状の測定で用いられる3Dデジタイザーにより体表上からみた肩甲骨の位置を3次元座標として求め,肩甲骨角度を算出する方法を考案した。本研究の目的は3Dデジタイザーを用いた肩甲骨角度の測定信頼性を明らかにすることである。


【方法】対象は本学の男子学生8名の左側肩甲骨とした。測定肢位は座位とし,フレームとベルトで頭部と体幹を固定した。測定項目は,1)上位胸椎棘突起(Th1-Th3)に対する肩甲骨内側縁(肩甲棘内側端-下角)を指標とした上方回旋角度,2)上位胸椎棘突起に対する肩甲棘(肩甲骨内側端-肩峰)を指標とした上方回旋角度,3)身体内矢状面(Th1-Th3-胸骨柄の頚切痕)に対する肩甲骨面(肩甲棘内側端-下角-肩峰)を指標とした回旋角度,4)上位胸椎棘突起に対する肩甲骨面を指標とした前傾角度,5)身体内矢状面に対する鎖骨(胸骨柄の頚切痕-肩峰)の角度を指標とした屈曲角度,6)上位胸椎棘突起の垂線に対する鎖骨の角度を指標とした挙上角度の計6項目とした。対象者に肩関節屈曲位0°,30°,60°,90°,120°,150°各々で保持させ,3Dデジタイザー(MicroscribeG2X)を用いて上記各指標の3次元座標を測定した後,3Dモデリングソフトウェア(Rhinoceros Ver.5.0)を用いて肩甲骨角度を求めた。上記測定を研究者2名が各1回実施し,検者間級内相関係数(ICC 2.1)と95%信頼区間(95%CI),および測定の標準誤差(SEM)を求めた。


【結果】6項目の測定結果を平均ICC,95%CI,SEMの順に示す。1)肩甲骨内側縁を指標とした上方回旋角度は,0.95,0.99-0.75,0.68[°],2)肩甲棘を指標とした上方回旋角度は,0.98,0.99-0.89,0.36[°],3)回旋角度は,0.99,0.99-0.92,0.16[°],4)前傾角度は,0.95,0.99-0.73,0.3[°],5)屈曲角度は,0.97,0.99-0.86,0.23[°],6)挙上角度は,0.97,0.99-0.84,0.22[°]であった。


【結論】3Dデジタイザーによる測定信頼性はいずれの肩甲骨角度測定においても高いことが示された。また,上方回旋角度では肩甲骨内側縁よりも肩甲棘を指標とした方がICC,95%CI,SEMすべての値が良好であることが判明した。本研究の一部はJSPS科研費基盤研究C(No.25350775)の助成を受けたものである。