[O-MT-16-2] 前期から進行期の変形性股関節症患者における片脚立位・歩行機能に影響を与える要因は何か?
キーワード:変形性股関節症, 歩行, 片脚立位
【はじめに,目的】
二次性の変形性股関節症(股OA)の運動機能は,寛骨臼形成不全などを有する前期から初期,進行期を経て末期に至る間に徐々に低下する。しかし,股OA患者の運動機能低下やその原因の調査は限られている上に,末期やTHA後を対象としたものがほとんどである。保存療法の適応は末期に至る以前が最適と考えられており,末期以前の運動機能低下の原因の解明は,保存療法を行う上で重要である。本研究の目的は,運動機能が大きく変化する前期から進行期における片脚立位(OLS)・歩行機能低下に影響する要因を包括的に分析し明らかにすることである。
【方法】
対象は,前期から進行期の二次性股OA患者55名(全例女性:年齢;47.9±10.4歳)とした。臥位レントゲン正面像から,股OAの指標として最小関節裂隙幅,寛骨臼形成不全の指標としてSharp角,CE角,acetabular head index(AHI)を測定した。股関節痛は,visual analog scaleで評価し,股ROM(屈曲,伸展,内転,外転,内旋,外旋;°)と股筋力(屈曲,伸展,外転,内旋,外旋;N/kg)は角度計と徒手筋力計を用いて,1名の検者が測定を行った(ICC(1,1);0.82~0.99)。動作解析には,3次元動作解析装置と床反力計を用いた。OLS能力の指標として重心動揺面積(安定した10秒の中央5秒間)を求め,3次元股関節角度(5秒間平均値と反対側離地時)も求めた。歩行能力の指標として自然歩行速度を求め,歩行周期における3次元股関節角度最大値を算出した。3試行平均値を解析に用いた。OLS・歩行機能それぞれに対して,年齢,BMI,レントゲン指標,疼痛,股ROM・筋力の単相関分析を行い,複数の要因が抽出された場合は重回帰分析を行った(有意水準5%)。
【結果】
OLS保持中の股関節角度には股筋力が関連し,特に股屈曲・伸展・外転・外旋筋力低下が屈曲変位と関連し(r=-0.27~-0.35),股屈曲・外旋・内旋筋力低下が内旋変位と関連した(r=-0.28~-0.29)(筋力要因間の多重共線性のため相関分析のみ実施)。OLS時の重心動揺面積と有意に関連する要因はなかった。一方,反対側離地時の外転変位には重回帰分析の結果,疼痛が関連し(標準偏回帰係数β=0.31),伸展変位にはAHIの減少が関連した(β=0.28)。
歩行速度(1.14±0.16 m/秒)には,股伸展筋力(β=0.47)と疼痛(β=-0.27)が関連した。さらに,歩行時股関節角度の減少(伸展・内転・内旋・外旋)には,それぞれ,股関節ROMの減少が関連した(β=0.40~0.49)。
【結論】
OLS保持中や歩行時の股関節角度,歩行速度には,股筋力や股ROM,疼痛など保存療法で改善し得る要因が関連し,年齢やレントゲン指標は関連しなかった。これは,保存療法を行う上で重要な知見である。一方,OLSの反対側離地時には,被覆率が減少(AHI減少)するほど接触面積が減少する方向への変位(股伸展)を示した。これは,力学的不利を助長する姿勢変化であり注意を要する。
二次性の変形性股関節症(股OA)の運動機能は,寛骨臼形成不全などを有する前期から初期,進行期を経て末期に至る間に徐々に低下する。しかし,股OA患者の運動機能低下やその原因の調査は限られている上に,末期やTHA後を対象としたものがほとんどである。保存療法の適応は末期に至る以前が最適と考えられており,末期以前の運動機能低下の原因の解明は,保存療法を行う上で重要である。本研究の目的は,運動機能が大きく変化する前期から進行期における片脚立位(OLS)・歩行機能低下に影響する要因を包括的に分析し明らかにすることである。
【方法】
対象は,前期から進行期の二次性股OA患者55名(全例女性:年齢;47.9±10.4歳)とした。臥位レントゲン正面像から,股OAの指標として最小関節裂隙幅,寛骨臼形成不全の指標としてSharp角,CE角,acetabular head index(AHI)を測定した。股関節痛は,visual analog scaleで評価し,股ROM(屈曲,伸展,内転,外転,内旋,外旋;°)と股筋力(屈曲,伸展,外転,内旋,外旋;N/kg)は角度計と徒手筋力計を用いて,1名の検者が測定を行った(ICC(1,1);0.82~0.99)。動作解析には,3次元動作解析装置と床反力計を用いた。OLS能力の指標として重心動揺面積(安定した10秒の中央5秒間)を求め,3次元股関節角度(5秒間平均値と反対側離地時)も求めた。歩行能力の指標として自然歩行速度を求め,歩行周期における3次元股関節角度最大値を算出した。3試行平均値を解析に用いた。OLS・歩行機能それぞれに対して,年齢,BMI,レントゲン指標,疼痛,股ROM・筋力の単相関分析を行い,複数の要因が抽出された場合は重回帰分析を行った(有意水準5%)。
【結果】
OLS保持中の股関節角度には股筋力が関連し,特に股屈曲・伸展・外転・外旋筋力低下が屈曲変位と関連し(r=-0.27~-0.35),股屈曲・外旋・内旋筋力低下が内旋変位と関連した(r=-0.28~-0.29)(筋力要因間の多重共線性のため相関分析のみ実施)。OLS時の重心動揺面積と有意に関連する要因はなかった。一方,反対側離地時の外転変位には重回帰分析の結果,疼痛が関連し(標準偏回帰係数β=0.31),伸展変位にはAHIの減少が関連した(β=0.28)。
歩行速度(1.14±0.16 m/秒)には,股伸展筋力(β=0.47)と疼痛(β=-0.27)が関連した。さらに,歩行時股関節角度の減少(伸展・内転・内旋・外旋)には,それぞれ,股関節ROMの減少が関連した(β=0.40~0.49)。
【結論】
OLS保持中や歩行時の股関節角度,歩行速度には,股筋力や股ROM,疼痛など保存療法で改善し得る要因が関連し,年齢やレントゲン指標は関連しなかった。これは,保存療法を行う上で重要な知見である。一方,OLSの反対側離地時には,被覆率が減少(AHI減少)するほど接触面積が減少する方向への変位(股伸展)を示した。これは,力学的不利を助長する姿勢変化であり注意を要する。