[O-MT-16-5] 大腿骨近位部骨折術後早期の股関節外転・伸展反応時間,関節トルクの特性とその回復過程
キーワード:大腿骨近位部骨折術後, 反応時間, トルク増加率
【はじめに,目的】
高齢者は下肢反応時間(RT)が延長し,トルク増加率(RFD)が低下する。手術侵襲もRT,RFDに影響する。したがって高齢者の大腿骨近位部骨折術後はRTやRFDといった筋力の質的変化も著しいと予測できるが,その特性や回復過程は明らかではない。本研究は大腿骨近位部骨折術後の股関節機能の質的変化とその回復過程,並びに歩行能力の回復過程を明らかにすることを目的とした。
【方法】
神経障害,明らかな認知症のない大腿骨近位部骨折術後症例7例,年齢77.3±6.0歳を対象とした。背臥位で股関節外転,伸展運動を各10回計測した。それぞれ股関節内外転中間位,股関節屈曲20°に固定し,予告信号後の音信号で素早く最大努力の等尺運動を開始するよう指示した。表面筋電計にて中殿筋,大腿筋膜張筋,大殿筋,半腱様筋の筋活動,プルセンサーにて関節トルク,Visual analog scale(VAS)にて股関節痛を記録した。音信号からトルク発現までの時間をRTとし,さらにRTを音信号から筋活動発現までの中枢過程時間(PMT)と筋活動発現からトルク発現までの末梢過程時間(EMD)に分けて分析した。RT,PMTは音信号前1秒間のトルクおよび背景筋放電量の平均±2標準偏差を超える時点を抽出した。トルク波形より最大値(F max),RFDを算出し,RFDはF maxの20,50,80%時点の値を抽出した(RFD%)。各値は術後より1ヶ月(M)ごとに3 Mまで計測し,同日に歩行速度も計測した。
患側1,2,3 M,健側3 Mのデータ(歩行速度は患側1,2,3 Mのデータ)を正規性の有無により反復測定一元配置分散分析またはFriedman検定で比較し有意差を認めた場合,それぞれTukey法,Steel-Dwass法により各群間を比較した。有意水準は5%とした。
【結果】
外転時のRTは健側に比べ1 Mで有意に延長し,2 M以降は1 Mに比べ有意な改善を認めた。一方,伸展時のRTは群間に有意差を認めなかった。中殿筋のPMTも健側に比べ1 Mで有意に延長し,2 M以降は1 Mに比べ有意な改善を認めた。大腿筋膜張筋のPMTも1 Mに比べ2 M以降で有意な改善を認めた。EMDはいずれの筋にも群間の有意差を認めなかった。
外転時のF maxは2 Mまで健側に比べ有意に低下し,2 M以降は1 Mに比べ有意な改善を認めた。他方,伸展時のF maxは3 Mまで健側に比べ有意に低下し改善は認められなかった。外転時RFD 20%は健側に比べ1 Mで有意に低下し,2 M以降は1 Mに比べ有意な改善を認めた。VASは外転,伸展時ともに群間に有意差を認めなかった。歩行速度は1 Mに比べ2 M以降で有意な改善を認めた。
【結論】
外転RTは術後1 Mまで著しく延長し,PMTの延長を伴うことから中枢過程時間の変調に起因することが明らかとなった。さらに術後1 MはF max,RFD双方に低下を認めたことから筋力の量的・質的障害が混在していると考える。外転時RT,PMT,F max,RFD 20%は歩行速度と一致した回復過程を辿ることから,歩行速度の改善には股関節伸展よりも外転の量的および質的機能が関与している可能性がある。
高齢者は下肢反応時間(RT)が延長し,トルク増加率(RFD)が低下する。手術侵襲もRT,RFDに影響する。したがって高齢者の大腿骨近位部骨折術後はRTやRFDといった筋力の質的変化も著しいと予測できるが,その特性や回復過程は明らかではない。本研究は大腿骨近位部骨折術後の股関節機能の質的変化とその回復過程,並びに歩行能力の回復過程を明らかにすることを目的とした。
【方法】
神経障害,明らかな認知症のない大腿骨近位部骨折術後症例7例,年齢77.3±6.0歳を対象とした。背臥位で股関節外転,伸展運動を各10回計測した。それぞれ股関節内外転中間位,股関節屈曲20°に固定し,予告信号後の音信号で素早く最大努力の等尺運動を開始するよう指示した。表面筋電計にて中殿筋,大腿筋膜張筋,大殿筋,半腱様筋の筋活動,プルセンサーにて関節トルク,Visual analog scale(VAS)にて股関節痛を記録した。音信号からトルク発現までの時間をRTとし,さらにRTを音信号から筋活動発現までの中枢過程時間(PMT)と筋活動発現からトルク発現までの末梢過程時間(EMD)に分けて分析した。RT,PMTは音信号前1秒間のトルクおよび背景筋放電量の平均±2標準偏差を超える時点を抽出した。トルク波形より最大値(F max),RFDを算出し,RFDはF maxの20,50,80%時点の値を抽出した(RFD%)。各値は術後より1ヶ月(M)ごとに3 Mまで計測し,同日に歩行速度も計測した。
患側1,2,3 M,健側3 Mのデータ(歩行速度は患側1,2,3 Mのデータ)を正規性の有無により反復測定一元配置分散分析またはFriedman検定で比較し有意差を認めた場合,それぞれTukey法,Steel-Dwass法により各群間を比較した。有意水準は5%とした。
【結果】
外転時のRTは健側に比べ1 Mで有意に延長し,2 M以降は1 Mに比べ有意な改善を認めた。一方,伸展時のRTは群間に有意差を認めなかった。中殿筋のPMTも健側に比べ1 Mで有意に延長し,2 M以降は1 Mに比べ有意な改善を認めた。大腿筋膜張筋のPMTも1 Mに比べ2 M以降で有意な改善を認めた。EMDはいずれの筋にも群間の有意差を認めなかった。
外転時のF maxは2 Mまで健側に比べ有意に低下し,2 M以降は1 Mに比べ有意な改善を認めた。他方,伸展時のF maxは3 Mまで健側に比べ有意に低下し改善は認められなかった。外転時RFD 20%は健側に比べ1 Mで有意に低下し,2 M以降は1 Mに比べ有意な改善を認めた。VASは外転,伸展時ともに群間に有意差を認めなかった。歩行速度は1 Mに比べ2 M以降で有意な改善を認めた。
【結論】
外転RTは術後1 Mまで著しく延長し,PMTの延長を伴うことから中枢過程時間の変調に起因することが明らかとなった。さらに術後1 MはF max,RFD双方に低下を認めたことから筋力の量的・質的障害が混在していると考える。外転時RT,PMT,F max,RFD 20%は歩行速度と一致した回復過程を辿ることから,歩行速度の改善には股関節伸展よりも外転の量的および質的機能が関与している可能性がある。