第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本運動器理学療法学会 一般演題口述
(運動器)16

2016年5月28日(土) 17:10 〜 18:10 第7会場 (札幌コンベンションセンター 2階 204)

座長:加藤浩(九州看護福祉大学)

[O-MT-16-6] 大腿骨頚部骨折患者に対する階段昇降練習付加の違いが筋肉量,身体機能,窒素出納変化に及ぼす影響

堀田旭1,4, 谷名英章1, 久堀陽平1, 渡辺広希1, 成原徹1, 真壁昇2, 大古拓史3, 森沢知之4, 玉木彰4, 梅本安則1,5, 恵飛須俊彦1 (1.関西電力病院リハビリテーション科, 2.関西電力病院疾患栄養治療センター, 3.星城大学リハビリテーション学部理学療法学専攻, 4.兵庫医療大学大学院医療科学研究科, 5.和歌山県立医科大学付属病院リハビリテーション科)

キーワード:大腿骨頚部骨折, 筋肉量, 階段昇降練習

【はじめに,目的】大腿骨頚部骨折(頚部骨折)は高齢者に多く,身体機能低下を来し,筋肉量減少を伴うサルコペニアを合併することがある。頚部骨折を既往に持つ地域在住高齢者の6割が筋肉量低下を呈していることが知られており,受傷後の回復期においては身体機能改善,筋肉量増加を図ることが重要である。しかし,頚部骨折受傷後の運動療法の効果を筋肉量の変化で捉えた報告や,窒素出納から蛋白質の同化,異化について検討した研究はない。また理学療法プログラムの1つである階段昇降練習はADL上の動作であり,身体機能改善効果は報告されているが,筋肉量の増減に対する影響については明らかでない。そこで,本研究の目的を頚部骨折患者における階段昇降練習付加の違いが下肢筋肉量,身体機能,窒素出納変化に及ぼす影響を検討することとした。


【方法】対象は当院回復期リハビリテーション病棟入院中の頚部骨折患者とし,対照群と階段群の2群にランダムに振り分けた。除外基準は心臓ペースメーカー留置中である者,重度の膝・腰背部痛を呈する者,四肢に麻痺のある者,心肺系に不安定な病変を有する者とした。両群ともに120分/日の運動療法を実施し,対照群は歩行を中心とした複合運動を行い,階段群は対照群の運動内容に1日300段の階段昇降練習を付加した。入院時と退院時に体成分分析装置を用いて下肢筋肉量を測定し,徒手筋力測定器を用いて健側・患側下肢それぞれの等尺性膝伸展筋力体重比(筋力)を算出,さらに10m歩行速度を測定した。また,24時間畜尿から窒素出納を算出した。統計学的解析は,各項目の入院時から退院時までの変化率を算出し,窒素出納に関しては変化量を,マンホイットニーU検定を用いて群間比較した。有意水準は5%とした。


【結果】5名(84.2±7.5歳,女性5名)が対照群,5名(79.8±12.3歳,女性4名・男性1名)が階段群に振り分けられ,介入期間は対照群47.6±12.6日,階段群50.4±11.2日であった。両側下肢筋肉量の変化率は対照群-3.0±4.7%,階段群5.3±5.7%であり,階段群で有意に高値を示した。(p<0.05)下肢筋肉量変化率を健側と患側に分けて検討すると,健側は対照群-0.4±5.0%,階段群5.9±7.1%で群間に有意差は認めなかった。患側は対照群-5.6±5.6%,階段群4.5±5.5%で階段群で有意に高値を示した。(p<0.05)筋力は,健側で対照群27.3±31.9%,階段群60.9±64.0%,患側で対照群25.7±26.8%,階段群57.6±61.6%と両下肢ともに増加していたが,群間に有意差は認めなかった。10m歩行速度は対照群72.5±51.8%,階段群73.6±43.4%とそれぞれ改善し,群間に有意差は認めなかった。窒素出納は対照群で-0.8±1.7g/dlと減少し,階段群で2.3±2.1g/dlと上昇したが,群間に有意差は認めなかった。

【結論】頚部骨折患者に対する階段昇降練習の付加は骨格筋および蛋白質の合成を促進させ,下肢筋肉量を増加,身体機能を改善させることが示唆された。