[O-MT-17-2] 腰痛の経年的変化に影響を及ぼす脊柱矢状面アライメントおよび体幹機能因子の検討
中高齢女性コホートによる5年間の追跡調査
キーワード:腰痛, 脊柱矢状面アライメント, 体幹機能
【はじめに,目的】
腰痛は1995年より男女共に厚生労働省による国民生活基礎調査の有訴受診率上位を占めている。2013年には19年ぶりに厚生労働省は腰痛予防対策指針を変更しており,今後,腰痛予防対策の重要性はますます増してくると同時に,理学療法士による腰痛予防への介入やエビデンスの構築が求められている。腰痛予防に関する報告は増加傾向にあるが,腰痛と脊柱矢状面アライメントや体幹機能に関する縦断データを用いた報告は我々が知る限り,ほとんど存在しない。そこで,本研究の目的は,中高齢女性の腰痛の経年的変化に影響を及ぼす脊柱矢状面アライメントおよび体幹機能因子を検討することとした。
【方法】
対象は,初回(ベースライン,以下BL)と5年後(フォローアップ,以下FU)に全項目の評価が可能であった,北海道上川地方および十勝地方に在住する中高齢女性28名(初回時平均年齢57.4±6.8歳)とした。評価項目は,腰痛Visual Analogue Scale(以下,腰痛VAS),Health Related QOL(SF-36下位尺度),全脊柱立位X線側面像による計測項目として胸椎後弯角,腰椎前弯角,仙骨傾斜角,矢状面バランス(Sagittal Vertical Axis),体幹機能項目として脊柱他動背屈域テスト(Prone Press up test;以下PP,腹臥位から下肢・骨盤固定で上肢を使用して体幹を最大背屈させた時の床から胸骨頚切痕までの距離),脊柱自動背屈域テスト(Back Extension Test,腹臥位から下肢・骨盤固定で上肢を使用せずに体幹を最大背屈させた時の下顎床間距離),等尺性筋力計を用いた腹筋力および背筋力とした。方法は,腰痛VASの変化値(FU値-BL値)と各評価項目の変化値(FU値-BL値)との関係について統計的解析を行い,腰痛VASに影響する因子を検討した。統計的解析は,腰痛VASの変化値と各評価項目の変化値との関連をPearsonの積率相関係数にて分析し,さらに腰痛VASの変化値を従属変数,相関分析にて有意とみなされた値を独立変数とするステップワイズ法による重回帰分析にて関連要因を抽出した。いずれも有意水準は5%とした。
【結果】
腰痛VASの変化値は,腰椎前弯角(r=-0.40,p<0.05),PP(r=-0.42,p<0.01),SF-36の下位尺度であるPF(r=-0.57,p<0.01)およびBP(r=-0.41,p<0.05)と中等度の相関を認めた。重回帰分析では,腰痛VASの関連因子としてPP(標準偏回帰係数-0.34,p<0.05,95%信頼区間-2.438--0.142)および腰椎前弯角(標準偏回帰係数-0.32,p<0.05,95%信頼区間-1.822--0.042)が抽出された。
【結論】
今回の中高齢女性においては,腰痛VASの変化は,腰椎前弯の減少とともに,脊柱背屈可動域の低下が最も関連が強い結果であった。腰痛症状には脊柱変性,体幹機能の他にも生活習慣,職歴,心因など多因子が影響すると報告されているが,長期的な腰痛予防の観点からは,体幹機能の中でも脊柱背屈可動域の評価と指導が重要と考えられた。
腰痛は1995年より男女共に厚生労働省による国民生活基礎調査の有訴受診率上位を占めている。2013年には19年ぶりに厚生労働省は腰痛予防対策指針を変更しており,今後,腰痛予防対策の重要性はますます増してくると同時に,理学療法士による腰痛予防への介入やエビデンスの構築が求められている。腰痛予防に関する報告は増加傾向にあるが,腰痛と脊柱矢状面アライメントや体幹機能に関する縦断データを用いた報告は我々が知る限り,ほとんど存在しない。そこで,本研究の目的は,中高齢女性の腰痛の経年的変化に影響を及ぼす脊柱矢状面アライメントおよび体幹機能因子を検討することとした。
【方法】
対象は,初回(ベースライン,以下BL)と5年後(フォローアップ,以下FU)に全項目の評価が可能であった,北海道上川地方および十勝地方に在住する中高齢女性28名(初回時平均年齢57.4±6.8歳)とした。評価項目は,腰痛Visual Analogue Scale(以下,腰痛VAS),Health Related QOL(SF-36下位尺度),全脊柱立位X線側面像による計測項目として胸椎後弯角,腰椎前弯角,仙骨傾斜角,矢状面バランス(Sagittal Vertical Axis),体幹機能項目として脊柱他動背屈域テスト(Prone Press up test;以下PP,腹臥位から下肢・骨盤固定で上肢を使用して体幹を最大背屈させた時の床から胸骨頚切痕までの距離),脊柱自動背屈域テスト(Back Extension Test,腹臥位から下肢・骨盤固定で上肢を使用せずに体幹を最大背屈させた時の下顎床間距離),等尺性筋力計を用いた腹筋力および背筋力とした。方法は,腰痛VASの変化値(FU値-BL値)と各評価項目の変化値(FU値-BL値)との関係について統計的解析を行い,腰痛VASに影響する因子を検討した。統計的解析は,腰痛VASの変化値と各評価項目の変化値との関連をPearsonの積率相関係数にて分析し,さらに腰痛VASの変化値を従属変数,相関分析にて有意とみなされた値を独立変数とするステップワイズ法による重回帰分析にて関連要因を抽出した。いずれも有意水準は5%とした。
【結果】
腰痛VASの変化値は,腰椎前弯角(r=-0.40,p<0.05),PP(r=-0.42,p<0.01),SF-36の下位尺度であるPF(r=-0.57,p<0.01)およびBP(r=-0.41,p<0.05)と中等度の相関を認めた。重回帰分析では,腰痛VASの関連因子としてPP(標準偏回帰係数-0.34,p<0.05,95%信頼区間-2.438--0.142)および腰椎前弯角(標準偏回帰係数-0.32,p<0.05,95%信頼区間-1.822--0.042)が抽出された。
【結論】
今回の中高齢女性においては,腰痛VASの変化は,腰椎前弯の減少とともに,脊柱背屈可動域の低下が最も関連が強い結果であった。腰痛症状には脊柱変性,体幹機能の他にも生活習慣,職歴,心因など多因子が影響すると報告されているが,長期的な腰痛予防の観点からは,体幹機能の中でも脊柱背屈可動域の評価と指導が重要と考えられた。