[O-MT-17-3] 脊椎固定術後患者の硬性コルセット着用の有無における立ち上がり動作解析
三次元動作解析装置を用いての各関節運動の変化量に関する検討
キーワード:脊椎固定術後患者, 立ち上がり動作, 硬性コルセット
【はじめに,目的】
近年,高齢化と医療の進歩に伴い,重篤な脊椎疾患に対して外科的治療の選択が増加している。脊椎の手術には大別して切除術と固定術の2種類があり,脊椎固定術(以下,固定術)に関しては,手術後は体幹の過度な動きが禁忌となる。そのため,当院では手術後療法として硬性コルセット(以下,コルセット)の装着を一定期間義務付けている。しかし,少数ではあるが,固定術後患者の中にはインプラントの脱転,スクリューの緩みのため再手術になる者もいる。その原因の一つに,日常場面で体幹の過度な動きを反復していた可能性が考えられる。コルセットを装着する目的のひとつに体幹の過度な動きを抑制することにあるが,コルセットの装着の有無で動作中に体幹の動きをどの程度抑制できているかの報告は見当たらない。そこで本研究の目的は,立ち上がり及び座り動作(以下,立ち座り)時にコルセットを装着することで体幹・下肢に及ぼす影響を検討することとした。
【方法】
対象は,固定術を施行し,術後にコルセットが処方された者11名とした。対象者の属性は,男性5名,女性6名,平均年齢(標準偏差):73.5(7.1)歳であった。固定部位は,腰椎以下の固定4名,胸腰椎を含む固定7名であった。測定課題は,コルセット装着の有無での端座位からの立ち座りとした。対象者にはできるだけ腰を曲げないようにと指示をしてから動作を行わせた。動作解析には,三次元動作解析装置(酒井医療株式会社製,マイオモーション)を使用し,動作中の胸椎・腰椎・股関節の各運動範囲を測定した。データの分析は,立ち上がり,座り動作中それぞれの腰椎最大屈曲角度を算出し,その時の他関節の角度も算出した。統計分析は,コルセット装着の有無でそれぞれの関節角度に差がないかを対応のあるt検定で検討した。なお,有意水準は5%とした。
【結果】
統計解析の結果,コルセット装着の有無で立ち上がり,座り動作ともに腰椎の屈曲角度に有意な差を認めた。コルセットなしでは,立ち上がり時の腰椎屈曲平均角度(標準偏差)は20.0(11.7)°座り動作は20.9(9.1)°,装着した場合の立ち上がり時は9.1(9.2)°座り時は9.0(9.2)°であった。また,座り動作で股関節の屈曲角度にも有意差を認めた。その他の関節角度には有意な差を認めなかった。
【結論】
本研究の結果より,固定術後患者においてコルセットを装着していることで立ち座りに腰椎屈曲角度が減少することが示唆された。また,胸椎の動きはコルセット装着の有無に関わらず制御できていた。解剖学的に胸椎は屈曲方向へは可動性が少なく,腰椎は屈曲方向への可動性が大きいことが知られている。本研究の立ち上がり動作時における検討でも同様の結果になった。今後の患者指導においてコルセットの適切な着用と腰椎伸展を意識した理学療法アプローチ必要があると考える。
近年,高齢化と医療の進歩に伴い,重篤な脊椎疾患に対して外科的治療の選択が増加している。脊椎の手術には大別して切除術と固定術の2種類があり,脊椎固定術(以下,固定術)に関しては,手術後は体幹の過度な動きが禁忌となる。そのため,当院では手術後療法として硬性コルセット(以下,コルセット)の装着を一定期間義務付けている。しかし,少数ではあるが,固定術後患者の中にはインプラントの脱転,スクリューの緩みのため再手術になる者もいる。その原因の一つに,日常場面で体幹の過度な動きを反復していた可能性が考えられる。コルセットを装着する目的のひとつに体幹の過度な動きを抑制することにあるが,コルセットの装着の有無で動作中に体幹の動きをどの程度抑制できているかの報告は見当たらない。そこで本研究の目的は,立ち上がり及び座り動作(以下,立ち座り)時にコルセットを装着することで体幹・下肢に及ぼす影響を検討することとした。
【方法】
対象は,固定術を施行し,術後にコルセットが処方された者11名とした。対象者の属性は,男性5名,女性6名,平均年齢(標準偏差):73.5(7.1)歳であった。固定部位は,腰椎以下の固定4名,胸腰椎を含む固定7名であった。測定課題は,コルセット装着の有無での端座位からの立ち座りとした。対象者にはできるだけ腰を曲げないようにと指示をしてから動作を行わせた。動作解析には,三次元動作解析装置(酒井医療株式会社製,マイオモーション)を使用し,動作中の胸椎・腰椎・股関節の各運動範囲を測定した。データの分析は,立ち上がり,座り動作中それぞれの腰椎最大屈曲角度を算出し,その時の他関節の角度も算出した。統計分析は,コルセット装着の有無でそれぞれの関節角度に差がないかを対応のあるt検定で検討した。なお,有意水準は5%とした。
【結果】
統計解析の結果,コルセット装着の有無で立ち上がり,座り動作ともに腰椎の屈曲角度に有意な差を認めた。コルセットなしでは,立ち上がり時の腰椎屈曲平均角度(標準偏差)は20.0(11.7)°座り動作は20.9(9.1)°,装着した場合の立ち上がり時は9.1(9.2)°座り時は9.0(9.2)°であった。また,座り動作で股関節の屈曲角度にも有意差を認めた。その他の関節角度には有意な差を認めなかった。
【結論】
本研究の結果より,固定術後患者においてコルセットを装着していることで立ち座りに腰椎屈曲角度が減少することが示唆された。また,胸椎の動きはコルセット装着の有無に関わらず制御できていた。解剖学的に胸椎は屈曲方向へは可動性が少なく,腰椎は屈曲方向への可動性が大きいことが知られている。本研究の立ち上がり動作時における検討でも同様の結果になった。今後の患者指導においてコルセットの適切な着用と腰椎伸展を意識した理学療法アプローチ必要があると考える。