[O-MT-17-4] 上殿皮神経に起因する腰臀部痛が疑われた症例に対する理学療法の効果と症状再発に及ぼす因子の検討
立位姿勢アライメントが症状再発に及ぼす影響に着目して
キーワード:上殿皮神経, 理学療法, 再発
【はじめに,目的】
近年,腰臀部痛の原因として上殿皮神経が注目されている。上殿皮神経は胸腰筋膜貫通部での絞扼や牽引刺激が加わる事で腰臀部痛が生じると考えられている。理学療法は上殿皮神経に起因する腰臀部痛に対して,一定の効果がある事が報告されているが,複数例に対する治療効果をまとめた報告はない。また,他の治療法では症状の再発例を認め,その原因についても検討されているが,理学療法実施後の経過を観察し,予後因子について検討した報告はない。そこで本研究では,上殿皮神経に起因する腰臀部痛を呈する症例に対して実施した理学療法の治療成績をまとめる。また,理学療法実施後の経過を観察し,症状再発例に関しては上殿皮神経に起因する腰臀部痛の発症に関与する因子であると報告されている立位姿勢アライメントに着目し,症状再発との関係について検討した。
【方法】
対象は,平成26年6月から平成27年9月までの間で,上殿皮神経障害による腰臀部痛が疑われた当施設利用者13名とした。理学療法実施後より,1ヶ月以上の経過観察を行えなかった者は除外した。上殿皮神経の鑑別テストは,絞扼による病態を想定した國谷らの方法に,牽引刺激の影響を確認する項目を追加した独自の方法を採用した。理学療法は主に徒手療法や筋の反復収縮を行う事で,上殿皮神経が分布する臀部の皮下組織の滑走性改善や胸腰筋膜の柔軟性改善を促し,上殿皮神経への絞扼・牽引刺激の軽減を図った。その後症状の消失を認めた者は,立位姿勢アライメントの評価を行った。評価項目は,円背指数と骨盤傾斜角度とした。円背指数は,Milneらの報告を基に算出した。骨盤傾斜角度は,ゴニオメーター(東大型角度計)にて測定した。同時に基本情報として,性別,年齢,既往歴,罹患側,罹患期間,疼痛誘発動作を診療録より取得した。平成27年10月末日時点で症状の再発を認めた者(再発群)と再発を認めなかった者(非再発群)について,立位姿勢アライメントおよび基本情報の比較を行った。
【結果】
全例,1~5回の治療にて一時的な症状の消失を認めた。経過観察を行い,症状の再発を認めた者は4名であった。再発までの期間は,最短で1ヶ月後,最長で5ヶ月後であった。再発群の基本情報は,罹患期間と疼痛誘発動作に特徴を認めた。罹患期間は非再発群が当日~5日に対して,再発群は2週間~6ヶ月と長期であった。再発群の疼痛誘発動作は全て立位保持であった。また,再発群の立位姿勢アライメントは大きく2つに分類された。1つは円背と定義される円背指数13以上かつ骨盤前傾角度が小さい姿勢であった。もう1つは円背指数は13以下かつ骨盤前傾角度が大きい姿勢であった。
【結論】
上殿皮神経に起因する腰臀部痛は,理学療法により全例で一時的な症状消失を得た。また,上殿皮神経に起因する腰臀部痛の症状再発に,立位姿勢アライメント,罹患期間,疼痛誘発動作が関与している可能性が示唆された。
近年,腰臀部痛の原因として上殿皮神経が注目されている。上殿皮神経は胸腰筋膜貫通部での絞扼や牽引刺激が加わる事で腰臀部痛が生じると考えられている。理学療法は上殿皮神経に起因する腰臀部痛に対して,一定の効果がある事が報告されているが,複数例に対する治療効果をまとめた報告はない。また,他の治療法では症状の再発例を認め,その原因についても検討されているが,理学療法実施後の経過を観察し,予後因子について検討した報告はない。そこで本研究では,上殿皮神経に起因する腰臀部痛を呈する症例に対して実施した理学療法の治療成績をまとめる。また,理学療法実施後の経過を観察し,症状再発例に関しては上殿皮神経に起因する腰臀部痛の発症に関与する因子であると報告されている立位姿勢アライメントに着目し,症状再発との関係について検討した。
【方法】
対象は,平成26年6月から平成27年9月までの間で,上殿皮神経障害による腰臀部痛が疑われた当施設利用者13名とした。理学療法実施後より,1ヶ月以上の経過観察を行えなかった者は除外した。上殿皮神経の鑑別テストは,絞扼による病態を想定した國谷らの方法に,牽引刺激の影響を確認する項目を追加した独自の方法を採用した。理学療法は主に徒手療法や筋の反復収縮を行う事で,上殿皮神経が分布する臀部の皮下組織の滑走性改善や胸腰筋膜の柔軟性改善を促し,上殿皮神経への絞扼・牽引刺激の軽減を図った。その後症状の消失を認めた者は,立位姿勢アライメントの評価を行った。評価項目は,円背指数と骨盤傾斜角度とした。円背指数は,Milneらの報告を基に算出した。骨盤傾斜角度は,ゴニオメーター(東大型角度計)にて測定した。同時に基本情報として,性別,年齢,既往歴,罹患側,罹患期間,疼痛誘発動作を診療録より取得した。平成27年10月末日時点で症状の再発を認めた者(再発群)と再発を認めなかった者(非再発群)について,立位姿勢アライメントおよび基本情報の比較を行った。
【結果】
全例,1~5回の治療にて一時的な症状の消失を認めた。経過観察を行い,症状の再発を認めた者は4名であった。再発までの期間は,最短で1ヶ月後,最長で5ヶ月後であった。再発群の基本情報は,罹患期間と疼痛誘発動作に特徴を認めた。罹患期間は非再発群が当日~5日に対して,再発群は2週間~6ヶ月と長期であった。再発群の疼痛誘発動作は全て立位保持であった。また,再発群の立位姿勢アライメントは大きく2つに分類された。1つは円背と定義される円背指数13以上かつ骨盤前傾角度が小さい姿勢であった。もう1つは円背指数は13以下かつ骨盤前傾角度が大きい姿勢であった。
【結論】
上殿皮神経に起因する腰臀部痛は,理学療法により全例で一時的な症状消失を得た。また,上殿皮神経に起因する腰臀部痛の症状再発に,立位姿勢アライメント,罹患期間,疼痛誘発動作が関与している可能性が示唆された。