[O-MT-17-5] 姿勢の違いによる腰部の筋活動量と循環動態変化について
キーワード:腰痛, 筋活動, 近赤外線分光法
【はじめに】
組織硬度の過剰な上昇は血流不全由来の阻血性疼痛を引き起こし,筋・筋膜性腰痛は多裂筋のコンパートメント症候群による筋阻血が一因であるとの報告がある。我々は,先行研究にて体幹屈曲位保持での背筋群の筋活動と組織硬度を検討した結果,筋活動は立位で高く,組織硬度は座位の多裂筋部で高いことを報告したが,循環動態変化の検証が課題となった。
本研究の目的は,同一姿勢保持における背筋群の循環動態変化を体位と部位別で解明し,腰痛発症予防とそれに対する運動療法の根拠となる知見を得ることである。
【方法】
健常成人13名(平均年齢22.1歳,指床間距離4.9cm,modified Schober test屈曲+5.2cm)を対象とした。電気角度計(NorAngle,Noraxon)で体幹屈曲角度を設定した。各対象の体幹最大屈曲角度を10度単位で切り捨て,10度ごとの多段階体幹屈曲角度を設定,各角度で体幹屈曲保持させる運動をランダムに施行させる課題とした。体位は立位と座位で実施した。腰部脊柱起立筋部(LES)と多裂筋部(MF)の筋活動量を表面筋電計(TeleMyo G2,EM-601,Noraxon),組織血流動態変化を近赤外線組織酸素モニタ装置(Pocket NIRS Duo,DynaSense)で測定した。左側で筋活動量,右側で組織血流動態変化を同期計測した。先行研究に則り,LESは第3腰椎,MFは第5腰椎および第1仙椎レベルを測定部位とした。各体幹屈曲角度保持中の積分筋電値を最大等尺性収縮時の筋電値で正規化し%IEMGを算出し,組織血流動態変化を運動課題前の安静体幹屈曲0度の値を0とした酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb),脱酸素化ヘモグロビン(deOxy-Hb)の相対的変化を求めた。検討項目は,体幹屈曲角度と測定部位の二要因について,反復測定による分散分析を立位と座位の計測値で各々統計処理した。多重比較法にはShaffer法を用いて補正後のp値を求めた。統計学的検討は統計ソフトウェアRを用いて行い,有意水準を5%とした。
【結果】
座位での体幹最大屈曲角度が30度を下回ったものが6名いたため,体幹屈曲角度は0,10,20度,体幹最大屈曲位の4水準で比較検討した。筋活動量は体幹屈曲に伴う筋活動の増加と体幹最大屈曲位での減少,屈曲20度でのMF(立位25.2,座位19.2%IEMG)がLES(立位19.7,座位14.6%IEMG)よりも有意に高い筋活動量となった。組織血流動態変化は,立位も座位も体幹屈曲角度の増加に伴うMFでのOxy-Hbの有意な低下を認めた。また,立位では体幹屈曲角度の増加に伴うLES,座位では両筋部でのdeOxy-Hbの有意な増加を認めた。
【結論】
体幹屈曲保持において,立位と比較して,座位では筋活動量の負担が少ないが,特に多裂筋部では阻血性の循環動態変化が生じる。
組織硬度の過剰な上昇は血流不全由来の阻血性疼痛を引き起こし,筋・筋膜性腰痛は多裂筋のコンパートメント症候群による筋阻血が一因であるとの報告がある。我々は,先行研究にて体幹屈曲位保持での背筋群の筋活動と組織硬度を検討した結果,筋活動は立位で高く,組織硬度は座位の多裂筋部で高いことを報告したが,循環動態変化の検証が課題となった。
本研究の目的は,同一姿勢保持における背筋群の循環動態変化を体位と部位別で解明し,腰痛発症予防とそれに対する運動療法の根拠となる知見を得ることである。
【方法】
健常成人13名(平均年齢22.1歳,指床間距離4.9cm,modified Schober test屈曲+5.2cm)を対象とした。電気角度計(NorAngle,Noraxon)で体幹屈曲角度を設定した。各対象の体幹最大屈曲角度を10度単位で切り捨て,10度ごとの多段階体幹屈曲角度を設定,各角度で体幹屈曲保持させる運動をランダムに施行させる課題とした。体位は立位と座位で実施した。腰部脊柱起立筋部(LES)と多裂筋部(MF)の筋活動量を表面筋電計(TeleMyo G2,EM-601,Noraxon),組織血流動態変化を近赤外線組織酸素モニタ装置(Pocket NIRS Duo,DynaSense)で測定した。左側で筋活動量,右側で組織血流動態変化を同期計測した。先行研究に則り,LESは第3腰椎,MFは第5腰椎および第1仙椎レベルを測定部位とした。各体幹屈曲角度保持中の積分筋電値を最大等尺性収縮時の筋電値で正規化し%IEMGを算出し,組織血流動態変化を運動課題前の安静体幹屈曲0度の値を0とした酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb),脱酸素化ヘモグロビン(deOxy-Hb)の相対的変化を求めた。検討項目は,体幹屈曲角度と測定部位の二要因について,反復測定による分散分析を立位と座位の計測値で各々統計処理した。多重比較法にはShaffer法を用いて補正後のp値を求めた。統計学的検討は統計ソフトウェアRを用いて行い,有意水準を5%とした。
【結果】
座位での体幹最大屈曲角度が30度を下回ったものが6名いたため,体幹屈曲角度は0,10,20度,体幹最大屈曲位の4水準で比較検討した。筋活動量は体幹屈曲に伴う筋活動の増加と体幹最大屈曲位での減少,屈曲20度でのMF(立位25.2,座位19.2%IEMG)がLES(立位19.7,座位14.6%IEMG)よりも有意に高い筋活動量となった。組織血流動態変化は,立位も座位も体幹屈曲角度の増加に伴うMFでのOxy-Hbの有意な低下を認めた。また,立位では体幹屈曲角度の増加に伴うLES,座位では両筋部でのdeOxy-Hbの有意な増加を認めた。
【結論】
体幹屈曲保持において,立位と比較して,座位では筋活動量の負担が少ないが,特に多裂筋部では阻血性の循環動態変化が生じる。