第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本運動器理学療法学会 一般演題口述
(運動器)17

Sat. May 28, 2016 6:20 PM - 7:20 PM 第7会場 (札幌コンベンションセンター 2階 204)

座長:東裕一(高木病院 リハビリテーション部)

[O-MT-17-6] 脊柱後側弯症に対する矯正固定術施行1年後のQOL変化について

遠藤浩1, 八木野孝義1, 山内正樹1, 田中優貴1, 谷口恵里1, 小尾伸二1, 江幡重人2, 大場哲郎2, 藤田康稚2, 波呂浩孝2 (1.山梨大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2.山梨大学医学部附属病院整形外科学講座)

Keywords:脊柱後側弯症, 矯正固定術, QOL

【はじめに,目的】

脊柱後側弯症は,脊柱のアライメント異常によって腰痛,歩行障害,呼吸障害,逆流性食道炎,心理障害など多岐にわたる症状を呈する。これら本症に対して矯正固定術が実施されるが,術後は症状の軽快をみ,1か月程度で退院することが多い。一方で,術後長期のADLやQOLに関する報告は少ない。そこで,今回は変形矯正固定術後1年を経過した症例のQOL変化を検討したので報告する。

【方法】

2012年7月から2015年10月までに当院で矯正固定術を施行した41症例のうち,現在までに術後1年以上が経過した12例(男性1名,女性11名,平均70±3.8歳)を対象とし,日本整形外科学会腰痛評価質問票(以下JOABPEQ),Roland Morris Disability Questionnaire(以下RDQ)およびVisual Analog Scale(以下VAS)を用いて術前,術後1年のQOL変化を比較検討した。統計処理はwilcoxonの符号不順位和検定を用い統計学的有意水準は5%未満とした。

【結果】

術前と術後1年の変化はJOABPEQの中央値では疼痛関連障害では57点が100点(P=0.039),歩行機能障害では46点が54点(P=0.005),心理的障害では42点が56.5点(P=0.034)であった。また,RDQの中央値では12±5.7点が9±6.3点(P=0.009)であった。さらに,VASの中央値では48.5±23.4mm,18±28.5mm(P=0.04)と有意に改善がみられた。しかし一方では,JOABPEQの腰椎機能障害では46点が54点(P=0.06),社会生活障害42点が48.5点(P=0.14)と有意差はみなかった。

【結論】

今回,矯正固定術施行による疼痛関連障害の改善と姿勢矯正に伴う諸症状の改善が術後の歩行機能障害および心理的障害の改善へ繋がったと考える。一方,JOABPEQの腰椎機能障害,社会生活障害の項目に有意差が認められなかったのは,術後多椎間固定による胸椎・腰椎・骨盤までの脊柱の可動性が制限され,新たなADL障害が発生したことが原因である。したがって,矯正固定術は疼痛,歩行機能,心理面が改善する有用な手術であるが,脊柱の可動性が制限されることで機能障害・社会生活で大きな改善が認められないことから,理学療法では代償動作の獲得や仕事動作練習などに積極的にアプローチしていく必要があると思われた。