[O-MT-18-1] 前十字靭帯再建者の関節変動性とWBIの関係性について
キーワード:前十字靭帯, 変動性, WBI
【はじめに,目的】
前十字靭帯(Anterior cruciate ligament:ACL)再建後は,術後期間や,大腿四頭筋の筋力指数である体重支持指数(Weight Bearing Index:WBI)を用いることによってスポーツ復帰時期が決定される。しかし筋力のみでは膝関節機能の評価としては不十分である可能性があり,関節機能の評価として時系列データを用いた評価が必要である。
最大リアプノフ指数(Lyapunov exponent:LyE)は変動性を有する時系列データの評価に有用である。我々は第50回日本理学療法学術大会において,ACL再建後10か月の時点でも歩行時高い最大LyEを示し,正常より不安定な関節変動性を示すことを報告した。しかし術期間による関節変動性の回復過程や,WBIと最大LyEの関係については明らかになっていない。
本研究の目的は,関節角度変化の時系列データを用い最大LyE算出しACL再建者の関節変動性の回復過程およびWBIと関節変動性との関係性を明らかにすることとした。
【方法】
対象は健常者6名(男性3名,女性3名,年齢25.1±2.1歳,身長168.3±9.6cm,体重64±10.7kg),ACL再建後3ヵ月(3M)群6名(男性3名,女性3名,年齢24.2±5.2歳,身長167.5±7.4cm,体重64.5±9.9kg,術後期間97.7±11.4日),再建後10か月(10M)群6名(男性3名,女性3名,年齢23.2±5.2歳,身長165.2±9.1cm,体重62.8±9.9kg,術後期間310.8±7.8日)とし,WBI計測を行った。解析動作は快適速度でのトレッドミル上歩行とし,三次元動作解析装置Myomotion(NORAXON社,100Hz)を用いて行い,6分間の予備施行後,2分間計測を行った。
歩行時の関節角度データから最大LyEを算出した。術後3M,10M時点での最大角度,WBI,最大LyEの左右差を比較するために,2再建群間の健側,再建側を対応のあるT検定で比較した。つぎに健常群とACL再建群の各データを比較するために,健常群と3M群および10M群の健側,健常群と3M群および10M群の再建側をone way ANOVAと多重比較法(Tukey)を用い検定を行った(P<0.05)。
【結果】
各関節最大角度は3群間で差は生じなかった。WBIは健常群(0.72±0.12)と比較し,3M群では健側,再建側(0.51±0.12,0.32±0.08)ともに有意低下していたが,10M群では健側,再建側(0.67±0.16,0.56±0.21)間に有意差は認められなかった。最大LyEは健常群と比較し,すべての関節で10M群再建側が優位に高い最大LyEを示した。3M群では膝関節再建側のみ健常群より低値を示し,他関節では差は生じなかった。
【結論】
Stergiouらは人体の動きを時系列的にみると,変動性をもっており,変動性が最適な状態から逸脱することは異常な状態であると述べている。本研究で筋力は改善している状態でも,正常な関節機能まで回復していない可能性が示唆された。最大LyEを用いることでWBIなどの既存の評価では,表せない関節機能を明らかにすることができた。既存の評価と最大LyEを組み合わせることで関節機能を多角的に評価でき,治療介入の効果判定の一助となる可能性がある。
前十字靭帯(Anterior cruciate ligament:ACL)再建後は,術後期間や,大腿四頭筋の筋力指数である体重支持指数(Weight Bearing Index:WBI)を用いることによってスポーツ復帰時期が決定される。しかし筋力のみでは膝関節機能の評価としては不十分である可能性があり,関節機能の評価として時系列データを用いた評価が必要である。
最大リアプノフ指数(Lyapunov exponent:LyE)は変動性を有する時系列データの評価に有用である。我々は第50回日本理学療法学術大会において,ACL再建後10か月の時点でも歩行時高い最大LyEを示し,正常より不安定な関節変動性を示すことを報告した。しかし術期間による関節変動性の回復過程や,WBIと最大LyEの関係については明らかになっていない。
本研究の目的は,関節角度変化の時系列データを用い最大LyE算出しACL再建者の関節変動性の回復過程およびWBIと関節変動性との関係性を明らかにすることとした。
【方法】
対象は健常者6名(男性3名,女性3名,年齢25.1±2.1歳,身長168.3±9.6cm,体重64±10.7kg),ACL再建後3ヵ月(3M)群6名(男性3名,女性3名,年齢24.2±5.2歳,身長167.5±7.4cm,体重64.5±9.9kg,術後期間97.7±11.4日),再建後10か月(10M)群6名(男性3名,女性3名,年齢23.2±5.2歳,身長165.2±9.1cm,体重62.8±9.9kg,術後期間310.8±7.8日)とし,WBI計測を行った。解析動作は快適速度でのトレッドミル上歩行とし,三次元動作解析装置Myomotion(NORAXON社,100Hz)を用いて行い,6分間の予備施行後,2分間計測を行った。
歩行時の関節角度データから最大LyEを算出した。術後3M,10M時点での最大角度,WBI,最大LyEの左右差を比較するために,2再建群間の健側,再建側を対応のあるT検定で比較した。つぎに健常群とACL再建群の各データを比較するために,健常群と3M群および10M群の健側,健常群と3M群および10M群の再建側をone way ANOVAと多重比較法(Tukey)を用い検定を行った(P<0.05)。
【結果】
各関節最大角度は3群間で差は生じなかった。WBIは健常群(0.72±0.12)と比較し,3M群では健側,再建側(0.51±0.12,0.32±0.08)ともに有意低下していたが,10M群では健側,再建側(0.67±0.16,0.56±0.21)間に有意差は認められなかった。最大LyEは健常群と比較し,すべての関節で10M群再建側が優位に高い最大LyEを示した。3M群では膝関節再建側のみ健常群より低値を示し,他関節では差は生じなかった。
【結論】
Stergiouらは人体の動きを時系列的にみると,変動性をもっており,変動性が最適な状態から逸脱することは異常な状態であると述べている。本研究で筋力は改善している状態でも,正常な関節機能まで回復していない可能性が示唆された。最大LyEを用いることでWBIなどの既存の評価では,表せない関節機能を明らかにすることができた。既存の評価と最大LyEを組み合わせることで関節機能を多角的に評価でき,治療介入の効果判定の一助となる可能性がある。