第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本運動器理学療法学会 一般演題口述
(運動器)18

2016年5月28日(土) 18:20 〜 19:20 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:田邉芳恵(北海道文教大学 人間科学部理学療法学科)

[O-MT-18-3] 脛骨骨折後の外傷性変形性膝関節症における歩行時膝周囲筋の同時収縮について

梶原和久1, 上谷清隆1, 水野貴文1, 瀬戸川啓1, 本田陽亮1, 児玉典彦2, 道免和久2, 藤岡宏幸3 (1.兵庫医科大学病院リハビリテーション部, 2.兵庫医科大学リハビリテーション医学教室, 3.兵庫医療大学リハビリテーション学部)

キーワード:外傷性変形性膝関節症, 歩行時膝周囲筋, 同時収縮

【はじめに】

変形性膝関節症(以下膝OA)患者では,歩行時に膝関節において拮抗筋同士の同時収縮が増大かつ持続することが多く報告されている。しかし,このような膝OA患者に特徴的な拮抗筋同士の同時収縮の解釈を巡っては,変形により不安定となった関節の安定性を強化し関節保護に働くとする解釈と,異常な同時収縮によって生じる関節間接触圧の増加が関節面の破壊を促進するとする解釈が存在し,いまだ統一的な見解が得られていない。

変形に対応して同時収縮が強化されるかを判定する一つの方法として,片側正常膝でかつ,片側はアライメントが変化した膝を呈する一症例の両膝の筋活動を比較する方法が挙げられる。しかし,一般に膝OAは加齢性,かつ両側性の疾患であり上記要件を満たす症例は限られている。

そこで本研究では,脛骨骨折後のアライメント変化により二次的に片側膝OA変化を呈した症例における,両膝の歩行時膝周囲筋活動と同時収縮の特徴について調査する。
【症例紹介】

71歳,男性,身長163cm,体重64.5kg,BMI24.2kg/m2。現病歴:約40年前に脛骨骨折をきたした後,内反変形が進行し膝OAとなりTKA目的に入院となった。理学療法評価:FTAは手術予定膝(以下OA膝)190度,非手術予定膝(以下健常膝)175度。膝伸展筋力はOA膝1.25Nm/kg,健常膝1.22Nm/kg,屈曲筋力はOA膝0.42Nm/kg,健常膝0.43Nm/kgであった。


【方法】

自由快適速度で平地歩行を行った際の両側内側広筋,外側広筋,半腱様筋,大腿二頭筋の筋活動を筋電計(ニホンサンテク社製,サンプリング周波数1800Hz)を用いて測定した。得られたデータは立脚相で100%に正規化し,遊脚終期,荷重応答期,立脚中期,立脚後期に分割した。さらに,膝関節伸展筋と屈曲筋の同時収縮co-contraction-index(CCI)を内側および外側について算出し,左右で比較を行った。


【結果】

内外側CCIの経時変化として,健常膝では荷重応答期で高値を示した後,速やかに減衰し立脚中期以降は低い値で持続した。一方OA膝では内外側CCIともに立脚相を通じて減衰が乏しく,持続的な活動を認めた。

各時期の比較では,OA膝において荷重応答期の外側CCI,立脚中期,後期の内外側CCIで健常膝より高値を示した。


【考察】

脛骨骨折後二次的にOA変化を呈した膝では,一次性膝OA患者に特徴的な拮抗筋同士の同時収縮の増大と持続を認めたが,健常膝ではこれらの筋活動の変化を認めなかった。このことから,一次性膝OA患者も同様に,内反アライメントの増強によって生じる不安定性や内側荷重圧偏位を是正し,疼痛を最小化する目的で選択的に同時収縮を強化している可能性が示唆された。これらの知見は,膝OA予防のリハビリテーションを考慮する上で有用であると考える。