[O-MT-19-1] 人工膝関節全置換術後患者の中期成績について~身体機能に着目して~
Keywords:人工膝関節全置換術, 中期成績, 身体機能
【はじめに】
人工膝関節全置換術(TKA)は,インプラントや手術手技の進歩により長期的にも安定した成績が報告されている。TKA術後の中長期成績の報告では,機種や手術手技などに関するものが多く,関節可動域や疼痛,歩行速度などの理学療法評価の観点から経時的に検討しているものは少ない。本研究は,術後3年以上経過している患者の身体機能について,術前と比較してどのように変化しているかを明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,平成18年3月から平成24年9月にTKAを施行した161名233膝のうち,術後3年以上の追跡が可能であった49名76膝(全体の30.4%,71.3±6.9歳,術後経過年数4.3±1.4年,男性9名,女性40名)とした。除外基準は明らかな麻痺を認めるもの重篤な合併症を有するものとした。評価項目は,膝関節屈曲角度(屈曲ROM)と伸展角度(伸展ROM),膝関節痛,膝関節機能,10m歩行時間,Timed up and go test(TUG)とした。膝関節痛と膝関節機能は,日本語版膝機能評価法(準WOMAC)の下位尺度を用いた。評価時期は,術前,退院時,術後3ヶ月,術後3年以上とし,後方視的に調査した。当院における理学療法は,術後約3~4週で退院となり,術後2~3ヶ月は外来で理学療法を継続し,その後は,6か月,1年ごとに理学療法定期健診を行っている。統計解析には,評価時期の比較に反復測定分散分析(事後検定Bonferroni法)を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
各評価項目の結果(術前,退院時,術後3か月,術後3年以上)は,屈曲ROM(°)(119.8±16.8,122.0±11.9,120.2±12.3,122.0±11.5),伸展ROM(°)(-11.7±9.6,-2.0±3.6,-4.2±6.0,-1.0±3.2),膝関節痛(点)(52.9±17.1,77.6±14.6,82.0±15.7,91.6±10.9),膝関節機能(点)(53.3±17.4,78.7±14.1,82.9±13.6,90.1±9.4),10m歩行速度(秒)(11.8±6.7,10.1±4.1,8.3±2.9,8.4±8.9),TUG(秒)(14.4±8.8,11.8±3.6,9.6±2.2,9.3±2.4)であった。術前と比較して,術後3年以上で有意に改善が認められたものは,伸展ROM,膝関節痛,膝関節機能,10m歩行時間,TUGであった。屈曲ROMには有意差が認められなかった。
【結論】
本研究より,術後3年以上経過しても伸展ROM,疼痛,膝関節機能,10m歩行時間,TUGは術前より改善していることが明らかになった。一般的に,健常な高齢者であっても加齢により身体機能が低下することは広く知られている。手術施行時にすでに高齢でありながら,術後3年経過しても身体機能が維持,向上していることは,TKAを施行することで除痛が図られ,歩行や立ち座り動作の改善につながったのではないかと考えられる。本研究の限界として,3年以上経過している患者を追跡できたのは30.4%であり,術後何らかの原因で来院不可能であった患者のデータは得られていない。今後は,今回追跡できていない患者の評価を含め,より長期的な臨床成績を調査していく必要がある。
人工膝関節全置換術(TKA)は,インプラントや手術手技の進歩により長期的にも安定した成績が報告されている。TKA術後の中長期成績の報告では,機種や手術手技などに関するものが多く,関節可動域や疼痛,歩行速度などの理学療法評価の観点から経時的に検討しているものは少ない。本研究は,術後3年以上経過している患者の身体機能について,術前と比較してどのように変化しているかを明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,平成18年3月から平成24年9月にTKAを施行した161名233膝のうち,術後3年以上の追跡が可能であった49名76膝(全体の30.4%,71.3±6.9歳,術後経過年数4.3±1.4年,男性9名,女性40名)とした。除外基準は明らかな麻痺を認めるもの重篤な合併症を有するものとした。評価項目は,膝関節屈曲角度(屈曲ROM)と伸展角度(伸展ROM),膝関節痛,膝関節機能,10m歩行時間,Timed up and go test(TUG)とした。膝関節痛と膝関節機能は,日本語版膝機能評価法(準WOMAC)の下位尺度を用いた。評価時期は,術前,退院時,術後3ヶ月,術後3年以上とし,後方視的に調査した。当院における理学療法は,術後約3~4週で退院となり,術後2~3ヶ月は外来で理学療法を継続し,その後は,6か月,1年ごとに理学療法定期健診を行っている。統計解析には,評価時期の比較に反復測定分散分析(事後検定Bonferroni法)を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
各評価項目の結果(術前,退院時,術後3か月,術後3年以上)は,屈曲ROM(°)(119.8±16.8,122.0±11.9,120.2±12.3,122.0±11.5),伸展ROM(°)(-11.7±9.6,-2.0±3.6,-4.2±6.0,-1.0±3.2),膝関節痛(点)(52.9±17.1,77.6±14.6,82.0±15.7,91.6±10.9),膝関節機能(点)(53.3±17.4,78.7±14.1,82.9±13.6,90.1±9.4),10m歩行速度(秒)(11.8±6.7,10.1±4.1,8.3±2.9,8.4±8.9),TUG(秒)(14.4±8.8,11.8±3.6,9.6±2.2,9.3±2.4)であった。術前と比較して,術後3年以上で有意に改善が認められたものは,伸展ROM,膝関節痛,膝関節機能,10m歩行時間,TUGであった。屈曲ROMには有意差が認められなかった。
【結論】
本研究より,術後3年以上経過しても伸展ROM,疼痛,膝関節機能,10m歩行時間,TUGは術前より改善していることが明らかになった。一般的に,健常な高齢者であっても加齢により身体機能が低下することは広く知られている。手術施行時にすでに高齢でありながら,術後3年経過しても身体機能が維持,向上していることは,TKAを施行することで除痛が図られ,歩行や立ち座り動作の改善につながったのではないかと考えられる。本研究の限界として,3年以上経過している患者を追跡できたのは30.4%であり,術後何らかの原因で来院不可能であった患者のデータは得られていない。今後は,今回追跡できていない患者の評価を含め,より長期的な臨床成績を調査していく必要がある。