第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本運動器理学療法学会 一般演題口述
(運動器)19

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第4会場 (札幌コンベンションセンター 1階 107+108)

座長:森口晃一(恩賜財団 済生会八幡総合病院 診療技術部リハビリテーション技術科)

[O-MT-19-3] 人工膝関節置換術患者におけるSF-36の役割/社会的側面のQOLサマリースコアに影響する因子の検討

三浦正和1, 伊藤秀幸2, 加藤聡純1, 杉本雅彦1, 松下慎也1, 椎木栄一3, 関寿大3, 赤川誠3, 田中浩3 (1.山口県立総合医療センターリハビリテーション科, 2.山口コ・メディカル学院, 3.山口県立総合医療センター整形外科)

Keywords:人工膝関節置換術, 健康関連QOL, 質問紙法

【はじめに,目的】

変形性膝関節症(以下膝OA)患者に対する人工膝関節全置換術(以下TKA)または人工膝関節単顆置換術(以下UKA)は身体機能,日常生活動作能力,生活の質(以下QOL)を改善させる治療法である。治療効果は,患者側の主観的な評価として健康関連QOLを定量的に評価できるSF-36が広く汎用されている。膝OAは女性に多く,主婦または社会での役割を担う症例が多数存在し,近年の入院期間の短縮化に伴い術後早期のQOL向上は必須である。本研究の目的は,SF-36の下位項目である役割/社会的側面のQOLサマリースコア(以下RCS)に影響する因子を抽出し,入院期間中の理学療法アプローチの一助とする事である。

【方法】

研究デザインは横断研究。対象は平成26年10月~平成27年9月に片側TKA/UKAを実施した女性,1次性膝関節症,当院クリティカルパス通り経過した46名(平均年齢76±6歳)。従属変数は,SF-36の下位項目である日常役割機能-身体(RP),社会生活機能(SF),日常役割機能-精神(RE)の3要因からなるRCSとした。TKA/UKA術後患者のSF-36に影響する因子としてTimed Up and Go test(以下TUG)の最大値,患側膝伸展・屈曲等尺性筋力,患側他動膝伸展・屈曲・股伸展可動域,5m歩行時間,痛み,自己効力感(self-efficacy for rehabilitation outcome scale)を従属変数であるRCSと共に術後14日目に測定した。また,年齢,Body Mass Index,術前患側Femoro Tibial Angle,内科疾患(循環器疾患,呼吸器疾患,糖尿病)の有無を交絡因子として調整した。統計学的解析は,比率・間隔尺度の要因はShapiro-Wilkの正規性検定を行い,Peasonの積率相関係数またはSpearmanの順位相関係数を使用し多重共線性に留意した。単相関分析によりRCSと関係性が強い(p<0.20)要因を独立変数,RCSを従属変数としステップワイズ重回帰分析を行った。次にモデルに交絡因子を強制投入し再度重回帰分析を実施した。統計処理はR2. 8. 1を使用し有意確率は5%未満。

【結果】

Spearmanの順位相関係数により相関行列を作成。多重共線性を認める要因はなく,単相関分析の結果,患側股伸展可動域,5m歩行時間,TUGが独立変数として抽出された。ステップワイズ重回帰分析の結果5m歩行時間(p=0.018)のみ有意差を認めた。決定係数は0.12,自由度調整済み重相関係数の二乗は0.10であった。交絡因子を強制投入し重回帰分析を実施した結果,有意な独立変数は抽出されなかった。

【結論】

術後14日目のRCSに影響する要因は5m歩行時間であった。しかし,決定係数が低値のためRCSに十分寄与しているとは言えない。また,交絡因子を強制投入後,5m歩行時間がモデルから除外された事を鑑みると,交絡因子から独立してRCSを説明出来ていなかった。モデルに交絡因子を1因子ずつ投入すると,年齢を投入した際に従属変数であるRCSを説明できなくなったため,年齢が5m歩行時間と従属変数であるRCSに交絡しており結果に影響している可能性が示唆された。