[O-MT-19-6] 人工膝関節全置換術施行前のTimed Up & Go Testに影響する要因の検討
キーワード:人工膝関節全置換術, TUG, 膝伸展筋力
【はじめに,目的】
人工膝関節全置換術(以下,TKA)後の在院日数に影響する要因として術後T字杖自立歩行獲得期間が影響すると報告されている。また,術前のTimed Up & Go Test(以下,TUG)が術後の自立歩行獲得期間,ならびにその前段階にあたる歩行器歩行獲得期間に影響する可能性が示唆されたとも報告されている。しかし,TKA施行前のTUGに影響する要因を検討した報告は,渉猟した中では見当たらなかった。以上より,TKA施行前のTUGに影響する要因を明らかにし術後歩行能力の早期改善を目的とした術前介入を行うことは重要であると考える。本研究はTKA施行前のTUGに影響する要因を検討することを目的とした。
【方法】
対象は2013年9月~2015年10月に変形性膝関節症(以下,膝OA)と診断され,TKA施行予定の患者136名(男性30名,女性106名,年齢75.5±7.4歳)とした。
測定項目は性別,年齢,BMI,障害側(両側性または片側性),疼痛(安静時・歩行時),術側・非術側膝伸展筋力,術側・非術側膝屈曲筋力,術側・非術側膝伸展可動域,術側・非術側膝屈曲可動域,術側・非術側股伸展可動域,CS-30,TUGの18項目とした。
統計学的処理は変数の正規性を確認した後に,TUGと各項目との相関分析を行った。その後,TUGを従属変数,TUGと測定項目との間に有意な相関を認めた変数を独立変数としたステップワイズ重回帰分析を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
TUGと有意な相関を認めた項目は年齢,歩行時痛,術側・非術側膝伸展筋力,術側・非術側膝屈曲筋力,非術側膝屈曲可動域,術側・非術側股伸展可動域であった。重回帰分析の結果,TUGに影響を与える要因として年齢(β=0.250)と術側膝伸展筋力(β=-0.210)が抽出された。
【結論】
TKA施行予定患者における術前のTUGに影響を与える要因を検討した結果,年齢および術側膝伸展筋力が抽出された。一般在宅高齢者では,年齢が歩行速度やTUGに影響を与えることが報告されている。今回の結果から,膝OA患者においても年齢がTUGに影響することが明らかになった。膝伸展筋力は,膝OA患者を対象とした先行研究において,立ち上がり速度や歩行速度を決定する要因として報告されている。また,TUGは動作局面を分けると①起立着座,②直線歩行,③方向転換に分けることができる。今回の結果からも,膝伸展筋力が膝OA患者の立ち上がり速度や歩行速度に影響し,TUGの動作局面では①起立着座と②直線歩行に影響したと考える。しかし,非術側ではなく術側膝伸展筋力のみが独立して抽出された要因として,前述した膝OA患者を対象とした先行研究では,より重症側の膝関節を対象としており,本研究においても術側膝伸展筋力のみがTUGに影響したと考える。本研究の結果より,術側膝伸展筋力を改善することによって,術前のTUGや術後の運動機能が改善するかは不明であるが,術側膝伸展筋力に対する術前のアプローチを検討する必要性が示唆された。
人工膝関節全置換術(以下,TKA)後の在院日数に影響する要因として術後T字杖自立歩行獲得期間が影響すると報告されている。また,術前のTimed Up & Go Test(以下,TUG)が術後の自立歩行獲得期間,ならびにその前段階にあたる歩行器歩行獲得期間に影響する可能性が示唆されたとも報告されている。しかし,TKA施行前のTUGに影響する要因を検討した報告は,渉猟した中では見当たらなかった。以上より,TKA施行前のTUGに影響する要因を明らかにし術後歩行能力の早期改善を目的とした術前介入を行うことは重要であると考える。本研究はTKA施行前のTUGに影響する要因を検討することを目的とした。
【方法】
対象は2013年9月~2015年10月に変形性膝関節症(以下,膝OA)と診断され,TKA施行予定の患者136名(男性30名,女性106名,年齢75.5±7.4歳)とした。
測定項目は性別,年齢,BMI,障害側(両側性または片側性),疼痛(安静時・歩行時),術側・非術側膝伸展筋力,術側・非術側膝屈曲筋力,術側・非術側膝伸展可動域,術側・非術側膝屈曲可動域,術側・非術側股伸展可動域,CS-30,TUGの18項目とした。
統計学的処理は変数の正規性を確認した後に,TUGと各項目との相関分析を行った。その後,TUGを従属変数,TUGと測定項目との間に有意な相関を認めた変数を独立変数としたステップワイズ重回帰分析を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
TUGと有意な相関を認めた項目は年齢,歩行時痛,術側・非術側膝伸展筋力,術側・非術側膝屈曲筋力,非術側膝屈曲可動域,術側・非術側股伸展可動域であった。重回帰分析の結果,TUGに影響を与える要因として年齢(β=0.250)と術側膝伸展筋力(β=-0.210)が抽出された。
【結論】
TKA施行予定患者における術前のTUGに影響を与える要因を検討した結果,年齢および術側膝伸展筋力が抽出された。一般在宅高齢者では,年齢が歩行速度やTUGに影響を与えることが報告されている。今回の結果から,膝OA患者においても年齢がTUGに影響することが明らかになった。膝伸展筋力は,膝OA患者を対象とした先行研究において,立ち上がり速度や歩行速度を決定する要因として報告されている。また,TUGは動作局面を分けると①起立着座,②直線歩行,③方向転換に分けることができる。今回の結果からも,膝伸展筋力が膝OA患者の立ち上がり速度や歩行速度に影響し,TUGの動作局面では①起立着座と②直線歩行に影響したと考える。しかし,非術側ではなく術側膝伸展筋力のみが独立して抽出された要因として,前述した膝OA患者を対象とした先行研究では,より重症側の膝関節を対象としており,本研究においても術側膝伸展筋力のみがTUGに影響したと考える。本研究の結果より,術側膝伸展筋力を改善することによって,術前のTUGや術後の運動機能が改善するかは不明であるが,術側膝伸展筋力に対する術前のアプローチを検討する必要性が示唆された。