[O-MT-20-3] THAの術式の違いにおけるADLと退院先についての検討
キーワード:Barthel Index, THA, 転帰
【はじめに,目的】
当院では,大腿骨頚部骨折及び変形性股関節症の手術療法で人工股関節置換術(以下THA)が施行されている。THA術後生活での注意点として,脱臼,感染及び弛みなどがあり,侵入方法及び術中の脱臼角度等の確認は理学療法を実施する上で重要であることは周知のとおりである。本研究では自宅退院者におけるTHA施行例について,侵入方法(前方侵入及び後方侵入)の違いにおけるBarthel Index(以下BI)と入院期間及び退院先について調査検討することである。
【方法】
対象は,2013年~2015年に当院にて大腿骨頚部骨折及び変形性股関節症により手術を受け,入院中に理学療法を実施した患者40例,平均年齢76.2±11.1歳,男性9例,女性31例で,疾患は大腿骨頚部骨折31例及び変形性股関節症9例であり,手術方法は最小侵襲手術(MIS)前方侵入THA施行例20例,後方侵入THA及び人工骨頭施行例20例であった。基礎となるデータは入院中の診療記録より抽出した。抽出項目は年齢,性,術式,退院先,理学療法開始時と退院時のBI,在院日数,認知症の有無とした。分析方法は得られたデータから術式により前方侵入群及び後方侵入群に分け,術後理学療法開始時BI,終了時BI及び入院期間については平均値の差をt検定によって比較した。退院先(非自宅退院,自宅退院)についてはカイ二乗検定により分析を行った。統計学的有位水準は5%未満とした。これらに加えて,術式,理学療法開始時BI,退院時のBI,在院日数及び認知症の有無を説明変数とし,退院先を自宅退院および非自宅退院とする従属変数として,尤度比による変数減少法で多重ロジスティック回帰分析を用いて検討した。
【結果】
症例全体のBIは,理学療法開始時36.9±19.6,退院時76.8±29.9であった。術式別では,理学療法開始時BIは,前方侵入群44.0±16.4,後方侵入群29.8±20.3であり,有意に前方侵入群が高値を示した(p<0.01)。退院時BIは,前方侵入群88.3±22.0,後方侵入群65.3±32.7であり,有意に前方侵入群が高値を示した(p<0.01)。また,症例全体の入院期間は,33.1±18.2日で,前方侵入群26.6±15.3日,後方侵入群39.7±18.9日であり,有意に前方侵入群が短かった(p<0.05)。退院先は,自宅退院が全体で28名,非自宅退院が12名であったが,術式による内訳としては前方侵入群で18名,後方侵入群で10名であり,カイ二乗検定による分析の結果有意に前方侵入群の自宅退院が多かった(p<0.01)。退院先を従属変数とする多重ロジスティック回帰分析を行った結果では,退院時BIが有意な項目として選択された。判別的中率は自宅群83.3%,非自宅群96.4%,全体92.5%となった。
【結論】
MIS前方侵入THAは,理学療法開始時及び退院時BIが高く早期自宅退院の傾向にあることがわかったが,退院先を決定する因子として退院時BIが重要であることが示された。
当院では,大腿骨頚部骨折及び変形性股関節症の手術療法で人工股関節置換術(以下THA)が施行されている。THA術後生活での注意点として,脱臼,感染及び弛みなどがあり,侵入方法及び術中の脱臼角度等の確認は理学療法を実施する上で重要であることは周知のとおりである。本研究では自宅退院者におけるTHA施行例について,侵入方法(前方侵入及び後方侵入)の違いにおけるBarthel Index(以下BI)と入院期間及び退院先について調査検討することである。
【方法】
対象は,2013年~2015年に当院にて大腿骨頚部骨折及び変形性股関節症により手術を受け,入院中に理学療法を実施した患者40例,平均年齢76.2±11.1歳,男性9例,女性31例で,疾患は大腿骨頚部骨折31例及び変形性股関節症9例であり,手術方法は最小侵襲手術(MIS)前方侵入THA施行例20例,後方侵入THA及び人工骨頭施行例20例であった。基礎となるデータは入院中の診療記録より抽出した。抽出項目は年齢,性,術式,退院先,理学療法開始時と退院時のBI,在院日数,認知症の有無とした。分析方法は得られたデータから術式により前方侵入群及び後方侵入群に分け,術後理学療法開始時BI,終了時BI及び入院期間については平均値の差をt検定によって比較した。退院先(非自宅退院,自宅退院)についてはカイ二乗検定により分析を行った。統計学的有位水準は5%未満とした。これらに加えて,術式,理学療法開始時BI,退院時のBI,在院日数及び認知症の有無を説明変数とし,退院先を自宅退院および非自宅退院とする従属変数として,尤度比による変数減少法で多重ロジスティック回帰分析を用いて検討した。
【結果】
症例全体のBIは,理学療法開始時36.9±19.6,退院時76.8±29.9であった。術式別では,理学療法開始時BIは,前方侵入群44.0±16.4,後方侵入群29.8±20.3であり,有意に前方侵入群が高値を示した(p<0.01)。退院時BIは,前方侵入群88.3±22.0,後方侵入群65.3±32.7であり,有意に前方侵入群が高値を示した(p<0.01)。また,症例全体の入院期間は,33.1±18.2日で,前方侵入群26.6±15.3日,後方侵入群39.7±18.9日であり,有意に前方侵入群が短かった(p<0.05)。退院先は,自宅退院が全体で28名,非自宅退院が12名であったが,術式による内訳としては前方侵入群で18名,後方侵入群で10名であり,カイ二乗検定による分析の結果有意に前方侵入群の自宅退院が多かった(p<0.01)。退院先を従属変数とする多重ロジスティック回帰分析を行った結果では,退院時BIが有意な項目として選択された。判別的中率は自宅群83.3%,非自宅群96.4%,全体92.5%となった。
【結論】
MIS前方侵入THAは,理学療法開始時及び退院時BIが高く早期自宅退院の傾向にあることがわかったが,退院先を決定する因子として退院時BIが重要であることが示された。