[O-MT-20-4] 開排動作(股関節複合運動)の直接的評価方法の検討
股関節可動域との関連性
キーワード:人工股関節, 関節可動域, 開排動作
【はじめに,目的】
人工股関節全置換術(以下THA)患者において股関節の可動域(以下ROM)測定はADL遂行機能を評価・推測する必要な項目である。術後早期では股関節後方脱臼予防の観点から開排パターンでの動作遂行を指導するが,ADL動作に必要な開排動作は股関節屈曲・外転・外旋の複合運動となっており直接的に股関節ROMを測定するのは困難である。また開排動作が各股関節ROMの計測値をどの程度反映しているか明らかでない。今回,開排動作を直接的に評価する方法を検討し股関節ROMとの関連性を検討する。
【方法】
対象はTHA術後の患者15名20肢(男性2肢,女性18肢,平均年齢62.6±9.7歳)とした。測定時に疼痛出現,膝・足関節のROM制限があるものは除外した。動作は背臥位にて骨盤ベルトで固定し,下肢中間位にて膝関節屈曲位(膝立て)からの自動開排を実施。測定項目は開排時の脛骨粗面(最突起部)からプラットホームまでの垂線の距離を同側棘果長で除した値(以下Tibia-Plat home Distance:TPD)で表した。膝関節屈曲角度は最大屈曲位(以下最大TPD),膝関節90°位(以下90TPD)の2方法としそれぞれ3回施行し平均値を使用した(最小単位0.5cm)。ROM測定は角度計を用い股関節屈曲・外転・外旋を各3回測定し平均値を求めた(最小単位5°)。
統計処理は各TPDとROM総和のPearson相関係数(r)を求め,TPDに影響するROM要素の検討に重回帰分析(変数増加法)を行った。事前に独立変数間の相関係数が0.9以上でないことを確認し投入した。従属変数には各TPDを独立変数には股関節屈曲,外転,外旋ROMを使用し有意水準は5%未満とした。
【結果】
各ROM計測値の平均値は股関節屈曲89.0±9.8°,外転26.0±6.2°,外旋27.8±11.4°,総和142.8±21.6°であった。最大TPDは31.7±6.7%,90TPDは26.2±5.4%であった。ROM総和との相関は最大TPD(r=-075,p<0.01),90TPD(r=-0.87,p<0.01)で有意な負の相関関係が認められた。重回帰分析の結果,最大TPDでは股関節屈曲,外転が抽出され標準回帰係数は順に-0.60,-0.41で調整済みR2は0.51であった。90TPDでは股関節外旋,外転が抽出され標準回帰係数は順に-0.73,-0.37で調整済みR2は0.76で全ての変数は有意だった(p<0.01)。
【結論】
股関節ROMの総和と各TPDには有意な負の相関が認められ,この測定方法が開排動作の臨床的程度を表す指標となることが示唆された。重回帰分析の結果よりTHA患者の開排動作では膝最大屈曲位には股関節屈曲・外転を,膝90°位では股関節外旋・外転が関与することが示された。THA患者では靴下着脱・爪切り動作の自立は患者満足度に影響を及ぼす重要な動作であり,難渋する場合がある。先行研究でも股関節屈曲・外旋が靴下着脱獲得・方法を決定する指標となることが示されており,今後この評価法を用いてTHA患者の靴下着脱・爪切り動作の獲得の指標を検討していきたいと考える。
人工股関節全置換術(以下THA)患者において股関節の可動域(以下ROM)測定はADL遂行機能を評価・推測する必要な項目である。術後早期では股関節後方脱臼予防の観点から開排パターンでの動作遂行を指導するが,ADL動作に必要な開排動作は股関節屈曲・外転・外旋の複合運動となっており直接的に股関節ROMを測定するのは困難である。また開排動作が各股関節ROMの計測値をどの程度反映しているか明らかでない。今回,開排動作を直接的に評価する方法を検討し股関節ROMとの関連性を検討する。
【方法】
対象はTHA術後の患者15名20肢(男性2肢,女性18肢,平均年齢62.6±9.7歳)とした。測定時に疼痛出現,膝・足関節のROM制限があるものは除外した。動作は背臥位にて骨盤ベルトで固定し,下肢中間位にて膝関節屈曲位(膝立て)からの自動開排を実施。測定項目は開排時の脛骨粗面(最突起部)からプラットホームまでの垂線の距離を同側棘果長で除した値(以下Tibia-Plat home Distance:TPD)で表した。膝関節屈曲角度は最大屈曲位(以下最大TPD),膝関節90°位(以下90TPD)の2方法としそれぞれ3回施行し平均値を使用した(最小単位0.5cm)。ROM測定は角度計を用い股関節屈曲・外転・外旋を各3回測定し平均値を求めた(最小単位5°)。
統計処理は各TPDとROM総和のPearson相関係数(r)を求め,TPDに影響するROM要素の検討に重回帰分析(変数増加法)を行った。事前に独立変数間の相関係数が0.9以上でないことを確認し投入した。従属変数には各TPDを独立変数には股関節屈曲,外転,外旋ROMを使用し有意水準は5%未満とした。
【結果】
各ROM計測値の平均値は股関節屈曲89.0±9.8°,外転26.0±6.2°,外旋27.8±11.4°,総和142.8±21.6°であった。最大TPDは31.7±6.7%,90TPDは26.2±5.4%であった。ROM総和との相関は最大TPD(r=-075,p<0.01),90TPD(r=-0.87,p<0.01)で有意な負の相関関係が認められた。重回帰分析の結果,最大TPDでは股関節屈曲,外転が抽出され標準回帰係数は順に-0.60,-0.41で調整済みR2は0.51であった。90TPDでは股関節外旋,外転が抽出され標準回帰係数は順に-0.73,-0.37で調整済みR2は0.76で全ての変数は有意だった(p<0.01)。
【結論】
股関節ROMの総和と各TPDには有意な負の相関が認められ,この測定方法が開排動作の臨床的程度を表す指標となることが示唆された。重回帰分析の結果よりTHA患者の開排動作では膝最大屈曲位には股関節屈曲・外転を,膝90°位では股関節外旋・外転が関与することが示された。THA患者では靴下着脱・爪切り動作の自立は患者満足度に影響を及ぼす重要な動作であり,難渋する場合がある。先行研究でも股関節屈曲・外旋が靴下着脱獲得・方法を決定する指標となることが示されており,今後この評価法を用いてTHA患者の靴下着脱・爪切り動作の獲得の指標を検討していきたいと考える。