[O-MT-22-1] 痛みの強度と心理的要素の関連について
Keywords:痛み, 強度, 心理的要素
【はじめに,目的】
痛みは主観的で,情動的・認知的側面を含んでおり,客観・定量化は難しく,その把握には身体・心理・社会的要素を含む多面かつ包括的評価が必要といわれている。痛みの強度や時間的経過が心理面やQOL(Quality of Life)に及ぼす影響は様々な研究により明らかとなっている。今回,痛みの変動の中でも日内での最小値に着目し,身体・心理的要素とQOLの関連を調査し,若干の知見を得たので報告する。
【方法】
対象は,当院外来にてリハビリテーションを施行中で,3ヶ月以上腰背痛を訴えている歩行可能な症例のうち,痛み強度がNumerical Rating Scale(NRS)5以上の症例44名(男性9名,女性35名)で,NRSを用いて24時間内の最小値を聴取,最小NRSの有無により二群に分け検討を行った。内訳は,最小NRS0の群(I群)は23名,平均年齢70.7±14.9歳,最小NRS1以上の群(II群)は21名,平均年齢68.9±18.4歳である。心理的評価は,痛みの破局的思考(Pain Catastrophizing Scale:PCS),不安抑うつ尺度(Hospital Anxiety and Depression Scale:HADS)を調査した。歩行評価としては,スピード,ケイデンス,ストライド長,Time Up and Go test(TUG)を測定した。日常生活活動評価として,Barthel Index(BI),QOL評価としてEuro QOL5 dimension(EQ-5D)を用いて行った。EQ-5Dは各項目の健康状態をそれぞれ5水準で表現した5項目法(EQ-5D-5L)を用い,QOL換算値を求めた。各項目を群間比較し関連性を検討した。統計学的処理は,対応のないt検定を用いて算出し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
II群の最小NRSは平均4.1±1.7であった。年齢および最大NRS(I群6.7±1.7,II群6.9±1.9)では有意差がなかった。なお,歩行評価,BI,EQ-5D総点数においても有意差は認められなかった。EQ-5D総点数に差はないものの,下位項目では「痛み/不快感」がI群2.8±0.7,II群3.3±0.9,「不安/ふさぎ込み」がI群1.8±0.9,II群2.6±1.1で有意差が認められた。また,PCS総得点(I群23.2±11.4点,II群32.9±13.6点),HADS-A項目(I群6.2±3.2,II群8.8±4.1),HADS-D項目(I群6.0±3.5,II群8.6±4.2)において有意差が認められた。
【結論】
痛みは心理的要素により身体・行動・感情面が影響を受け,痛みが持続・悪化するといわれている。今回,痛みの最小値を有する症例では,心理面への影響が強い傾向となった。痛みにより破局的思考が増強し,痛みの悪循環に陥ってしまうことは明らかにされているが,自発痛の持続により痛みから解放がないことで,無力感や抑うつ傾向が強くなったと考えられる。痛みの最小値の有無を知ることは治療方法の選択および治療成果の一指標となると推察される。また身体・心理的ストレスにより痛みは変化するため,心理的側面を含む個人を取り巻く環境を把握した上でアプローチしていくことが重要である。
痛みは主観的で,情動的・認知的側面を含んでおり,客観・定量化は難しく,その把握には身体・心理・社会的要素を含む多面かつ包括的評価が必要といわれている。痛みの強度や時間的経過が心理面やQOL(Quality of Life)に及ぼす影響は様々な研究により明らかとなっている。今回,痛みの変動の中でも日内での最小値に着目し,身体・心理的要素とQOLの関連を調査し,若干の知見を得たので報告する。
【方法】
対象は,当院外来にてリハビリテーションを施行中で,3ヶ月以上腰背痛を訴えている歩行可能な症例のうち,痛み強度がNumerical Rating Scale(NRS)5以上の症例44名(男性9名,女性35名)で,NRSを用いて24時間内の最小値を聴取,最小NRSの有無により二群に分け検討を行った。内訳は,最小NRS0の群(I群)は23名,平均年齢70.7±14.9歳,最小NRS1以上の群(II群)は21名,平均年齢68.9±18.4歳である。心理的評価は,痛みの破局的思考(Pain Catastrophizing Scale:PCS),不安抑うつ尺度(Hospital Anxiety and Depression Scale:HADS)を調査した。歩行評価としては,スピード,ケイデンス,ストライド長,Time Up and Go test(TUG)を測定した。日常生活活動評価として,Barthel Index(BI),QOL評価としてEuro QOL5 dimension(EQ-5D)を用いて行った。EQ-5Dは各項目の健康状態をそれぞれ5水準で表現した5項目法(EQ-5D-5L)を用い,QOL換算値を求めた。各項目を群間比較し関連性を検討した。統計学的処理は,対応のないt検定を用いて算出し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
II群の最小NRSは平均4.1±1.7であった。年齢および最大NRS(I群6.7±1.7,II群6.9±1.9)では有意差がなかった。なお,歩行評価,BI,EQ-5D総点数においても有意差は認められなかった。EQ-5D総点数に差はないものの,下位項目では「痛み/不快感」がI群2.8±0.7,II群3.3±0.9,「不安/ふさぎ込み」がI群1.8±0.9,II群2.6±1.1で有意差が認められた。また,PCS総得点(I群23.2±11.4点,II群32.9±13.6点),HADS-A項目(I群6.2±3.2,II群8.8±4.1),HADS-D項目(I群6.0±3.5,II群8.6±4.2)において有意差が認められた。
【結論】
痛みは心理的要素により身体・行動・感情面が影響を受け,痛みが持続・悪化するといわれている。今回,痛みの最小値を有する症例では,心理面への影響が強い傾向となった。痛みにより破局的思考が増強し,痛みの悪循環に陥ってしまうことは明らかにされているが,自発痛の持続により痛みから解放がないことで,無力感や抑うつ傾向が強くなったと考えられる。痛みの最小値の有無を知ることは治療方法の選択および治療成果の一指標となると推察される。また身体・心理的ストレスにより痛みは変化するため,心理的側面を含む個人を取り巻く環境を把握した上でアプローチしていくことが重要である。