[O-MT-22-2] 非特異的腰痛患者において身体知覚異常と運動恐怖は疼痛と能力障害の関係を媒介する
キーワード:慢性腰痛, 能力障害, 媒介因子
【はじめに,目的】
慢性腰痛患者において,疼痛が能力障害に影響することや,能力障害には疼痛のみでなく心理社会的要因など様々な要因が関与していることが報告されている。しかし,疼痛がどのように能力障害につながっているかは十分に明らかではない。また,近年,慢性腰痛患者の臨床症状との関連が報告されている身体知覚異常についても同様に,どのように能力障害や疼痛と関連しているのか明らかではない。今回,慢性腰痛患者において能力障害に関与する因子の検討および,疼痛と能力障害の関係を媒介している因子の検討を行った。
【方法】
痛みが3ヶ月以上持続している非特異的腰痛患者100名(男性36名,女性64名,平均年齢56.0±16.4歳)を対象とし,動作時の疼痛強度(Visual Analogue Scale;VAS),疼痛持続期間,能力障害(Roland-Morris Disability Questionnaire;RDQ),破局的思考(Pain Catastrophizing Scale;PCS),運動恐怖(Tampa Scale for Kinesiophobia;TSK),不安・抑うつ(Hospital Anxiety and Depression Scale;HADS)及び自己身体知覚異常(Fremantle Back Awareness Questionnaire;FreBAQ)を評価した。統計解析はSPSSを用い,従属変数をRDQ,独立変数をVAS,PCS,TSK,HADS,FreBAQ,疼痛持続期間として重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。また,PROCESSマクロを用い,独立変数をVAS,従属変数をRDQ,媒介変数をPCS,TSK,HADS,FreBAQ,共変数を年齢,性別,Body Mass Index(BMI)とした媒介分析を行った。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
重回帰分析の結果(p<0.001,R=0.531,R2=0.260),RDQに影響を及ぼす因子としてFreBAQ(β=0.255,p=0.007),VAS(β=0.273,p=0.003),TSK(β=0.236,p=0.011)が抽出された。媒介分析の結果,疼痛強度と能力障害間に総合効果(Total Effect=0.0569,p=0.0006),直接効果(Direct Effect=0.0364,p=0.0229)が認められた。また,媒介変数のうちTSK(Indirect Effect=0.009,95%CI=0.0012-0.0255)及びFreBAQ(Indirect Effect=0.0077,95%CI=0.0004-0.0244)で媒介効果を認めた。
【結論】
能力障害に影響する因子として身体知覚異常,疼痛強度,運動恐怖が抽出された。また,疼痛強度は直接的に能力障害に影響するのみでなく,部分的に能力障害に影響していた。さらに,疼痛強度と能力障害を媒介する因子として運動恐怖と身体知覚異常が抽出された。以上のことから,慢性腰痛患者の理学療法において能力障害を改善するには疼痛強度の改善のみを治療目標とするのではなく,身体知覚異常および運動恐怖の改善を目標とした治療戦略の必要性が示唆された。
慢性腰痛患者において,疼痛が能力障害に影響することや,能力障害には疼痛のみでなく心理社会的要因など様々な要因が関与していることが報告されている。しかし,疼痛がどのように能力障害につながっているかは十分に明らかではない。また,近年,慢性腰痛患者の臨床症状との関連が報告されている身体知覚異常についても同様に,どのように能力障害や疼痛と関連しているのか明らかではない。今回,慢性腰痛患者において能力障害に関与する因子の検討および,疼痛と能力障害の関係を媒介している因子の検討を行った。
【方法】
痛みが3ヶ月以上持続している非特異的腰痛患者100名(男性36名,女性64名,平均年齢56.0±16.4歳)を対象とし,動作時の疼痛強度(Visual Analogue Scale;VAS),疼痛持続期間,能力障害(Roland-Morris Disability Questionnaire;RDQ),破局的思考(Pain Catastrophizing Scale;PCS),運動恐怖(Tampa Scale for Kinesiophobia;TSK),不安・抑うつ(Hospital Anxiety and Depression Scale;HADS)及び自己身体知覚異常(Fremantle Back Awareness Questionnaire;FreBAQ)を評価した。統計解析はSPSSを用い,従属変数をRDQ,独立変数をVAS,PCS,TSK,HADS,FreBAQ,疼痛持続期間として重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。また,PROCESSマクロを用い,独立変数をVAS,従属変数をRDQ,媒介変数をPCS,TSK,HADS,FreBAQ,共変数を年齢,性別,Body Mass Index(BMI)とした媒介分析を行った。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
重回帰分析の結果(p<0.001,R=0.531,R2=0.260),RDQに影響を及ぼす因子としてFreBAQ(β=0.255,p=0.007),VAS(β=0.273,p=0.003),TSK(β=0.236,p=0.011)が抽出された。媒介分析の結果,疼痛強度と能力障害間に総合効果(Total Effect=0.0569,p=0.0006),直接効果(Direct Effect=0.0364,p=0.0229)が認められた。また,媒介変数のうちTSK(Indirect Effect=0.009,95%CI=0.0012-0.0255)及びFreBAQ(Indirect Effect=0.0077,95%CI=0.0004-0.0244)で媒介効果を認めた。
【結論】
能力障害に影響する因子として身体知覚異常,疼痛強度,運動恐怖が抽出された。また,疼痛強度は直接的に能力障害に影響するのみでなく,部分的に能力障害に影響していた。さらに,疼痛強度と能力障害を媒介する因子として運動恐怖と身体知覚異常が抽出された。以上のことから,慢性腰痛患者の理学療法において能力障害を改善するには疼痛強度の改善のみを治療目標とするのではなく,身体知覚異常および運動恐怖の改善を目標とした治療戦略の必要性が示唆された。