[O-NV-01-4] 股関節に着目した脳卒中片麻痺者の立位姿勢制御特性に関する検討
Keywords:脳卒中片麻痺, 立位, 姿勢制御
【目的】
脳卒中片麻痺者の立位姿勢において,麻痺側下肢支持性は重要な要素である。しかし股関節を含む中枢部は同側あるいは両側性の神経支配を受けており,立位姿勢制御の特性は麻痺側や麻痺重症度のみに依拠しないことが推測される。そこで本研究では,健常者と片麻痺者の立位における股関節運動を強調した姿勢制御について比較検討した。
【方法】
健常成人7名{男4・女3名,平均年齢25.7(22~35)歳:以下健常群},当院入院中の脳卒中片麻痺者7名{男6・女1名,右麻痺4・左麻痺3名,平均年齢63(49~79)歳:以下片麻痺群}を対象とした。片麻痺群は,裸足または下肢装具装着下で上肢の支持なく立位保持が可能であった。対象者は靴あるいは下肢装具を履き,両側の上前腸骨棘にマーカーを付けて重心動揺計(Panasonic社製デジタルミラー)上で立位を保持し,同一の開始肢位(両足部を平行に肩幅に開いた開脚立位)から後述する4動作を行った。全試行,前額面・矢状面からデジタルビデオ撮影を行った。対象者には,支持基底面を変えずに立位を保持できる範囲で1)身体を前方・後方,2)骨盤を前方・後方,3)身体を右方・左方,4)骨盤を右方・左方,へそれぞれ移動させるよう指示した。画像処理ソフトImageJを用い,各動作中にマーカーの移動距離が最大となる点で,1)2)は矢状面で足底の前後中心とマーカーを結ぶ線と垂線の成す角度,3)4)は前額面で運動方向と同側下肢のマーカーと足底の左右径の中心を結ぶ線と垂線の成す角度を計測した。矩形動揺面積の前後・左右成分,計測角度について,Mann-WhitneyのU検定を用いて有意水準5%で分析した。
【結果】
矩形動揺面積は,前後成分平均値(健常群:片麻痺群・単位cm)が1)16.2±3.1:10.4±4.9,2)17.1±3.3:9.8±4.3,3)4.1±0.8:4.4±1.2,4)4.4±1.0:4.6±1.6であった。左右成分平均値は1)2.4±0.6:3.8±1.1,2)2.6±1.0:4.7±2.0,3)26.2±1.9:20.3±6.7,4)27.1±3.0:19.3±7.0であった。1)2)で前後成分は片麻痺群より健常群が,左右成分は健常群より片麻痺群が有意に大きかった。3)4)では股関節の運動を強調した4)のみ,左右成分が片麻痺群より健常群が有意に大きかった。計測角度は,1)2)とも健常群の前方移動の際の角度が片麻痺群より有意に大きかった。健常群では左右とも3)より4)が有意に大きかった。片麻痺群では麻痺側・非麻痺側に関わらず3)と4)での有意差を認めなかった。
【結論】
立位保持可能な麻痺側下肢支持性を有する条件下では,片麻痺者の立位姿勢制御は,1.前方への重心移動を伴う運動がより困難であり,可動範囲が狭小化し動揺が増大する,2.側方への運動は,股関節周囲の制御を強調すると麻痺側に加え非麻痺側方向にも制限を生じる,という可能性が示唆された。姿勢制御はいわゆる麻痺側に留まらない評価が必要である。
脳卒中片麻痺者の立位姿勢において,麻痺側下肢支持性は重要な要素である。しかし股関節を含む中枢部は同側あるいは両側性の神経支配を受けており,立位姿勢制御の特性は麻痺側や麻痺重症度のみに依拠しないことが推測される。そこで本研究では,健常者と片麻痺者の立位における股関節運動を強調した姿勢制御について比較検討した。
【方法】
健常成人7名{男4・女3名,平均年齢25.7(22~35)歳:以下健常群},当院入院中の脳卒中片麻痺者7名{男6・女1名,右麻痺4・左麻痺3名,平均年齢63(49~79)歳:以下片麻痺群}を対象とした。片麻痺群は,裸足または下肢装具装着下で上肢の支持なく立位保持が可能であった。対象者は靴あるいは下肢装具を履き,両側の上前腸骨棘にマーカーを付けて重心動揺計(Panasonic社製デジタルミラー)上で立位を保持し,同一の開始肢位(両足部を平行に肩幅に開いた開脚立位)から後述する4動作を行った。全試行,前額面・矢状面からデジタルビデオ撮影を行った。対象者には,支持基底面を変えずに立位を保持できる範囲で1)身体を前方・後方,2)骨盤を前方・後方,3)身体を右方・左方,4)骨盤を右方・左方,へそれぞれ移動させるよう指示した。画像処理ソフトImageJを用い,各動作中にマーカーの移動距離が最大となる点で,1)2)は矢状面で足底の前後中心とマーカーを結ぶ線と垂線の成す角度,3)4)は前額面で運動方向と同側下肢のマーカーと足底の左右径の中心を結ぶ線と垂線の成す角度を計測した。矩形動揺面積の前後・左右成分,計測角度について,Mann-WhitneyのU検定を用いて有意水準5%で分析した。
【結果】
矩形動揺面積は,前後成分平均値(健常群:片麻痺群・単位cm)が1)16.2±3.1:10.4±4.9,2)17.1±3.3:9.8±4.3,3)4.1±0.8:4.4±1.2,4)4.4±1.0:4.6±1.6であった。左右成分平均値は1)2.4±0.6:3.8±1.1,2)2.6±1.0:4.7±2.0,3)26.2±1.9:20.3±6.7,4)27.1±3.0:19.3±7.0であった。1)2)で前後成分は片麻痺群より健常群が,左右成分は健常群より片麻痺群が有意に大きかった。3)4)では股関節の運動を強調した4)のみ,左右成分が片麻痺群より健常群が有意に大きかった。計測角度は,1)2)とも健常群の前方移動の際の角度が片麻痺群より有意に大きかった。健常群では左右とも3)より4)が有意に大きかった。片麻痺群では麻痺側・非麻痺側に関わらず3)と4)での有意差を認めなかった。
【結論】
立位保持可能な麻痺側下肢支持性を有する条件下では,片麻痺者の立位姿勢制御は,1.前方への重心移動を伴う運動がより困難であり,可動範囲が狭小化し動揺が増大する,2.側方への運動は,股関節周囲の制御を強調すると麻痺側に加え非麻痺側方向にも制限を生じる,という可能性が示唆された。姿勢制御はいわゆる麻痺側に留まらない評価が必要である。