[O-NV-01-6] 慢性期脳卒中片麻痺者の歩行における推進力は制動力の大きさと関連する
キーワード:脳卒中, 歩行, 床反力
【はじめに,目的】
脳卒中片麻痺者の歩行では,麻痺側で形成される推進力の積分値(propulsion impulse:PI)が歩行機能に大きく影響するとされる。我々が前回行った報告では,片麻痺者の最大前方ステップ動作で生じる麻痺側PIは,実際の歩行中の推進力より大きく,歩行中に形成可能なPIを最大限に利用していないことが示された。この差異が生じる理由を検討するために,本研究では片麻痺者の歩行における歩行相に応じた推進力や制動力を分析し,床反力前後成分の特性を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,慢性期脳卒中片麻痺者13名(50.8±15.3歳,下肢Fugl-Meyer Assessment 24.4±3.9)とした。3m歩行路の中央に床反力計(KISTLER社製)を設置し,対象者に油圧底屈制動付短下肢装具を装着して快適速度で歩行するように指示した。床反力前後成分のうち立脚期前半に形成される制動力の積分値(braking impulse:BI)と,立脚期後半に形成される推進力の積分値PIを算出した。BIおよびPIは体重で正規化し,麻痺側制動力(PBI),麻痺側推進力(PPI),非麻痺側制動力(NPBI),非麻痺側推進力(NPPI)を求めた。NPPIとPBIの差は,非麻痺側から麻痺側への荷重移動に伴う床反力前後成分の差を表すため,この値をWT1とし,反対にPPIとNPBIの差をWT2とした。さらに,両踵に貼付した3軸加速度計(DELSYS社製)により,踵接地と爪先離地のタイミングから両脚支持期と単脚支持期を同定した。統計解析では,WT1におけるNPPIとPBI,WT2におけるPPIとNPBIとの差を対応あるt検定により比較した。また,NPPIとPBI,PPIとNPBIとの関連をpearsonの相関係数を用いて検討した。さらに,BIおよびPIに占める両脚支持期と単脚支持期のimpulseの割合を求め,同側下肢における制動期と推進期の各パラメーターの関連をpearsonの相関係数を用いて検討した(有意水準5%)。
【結果】
全対象者でWT1は正,大部分(10名)でWT2は負となり,WT1を形成する時期では全体として推進し,WT2を形成する時期では全体として減速する特徴を示した。WT1におけるNPPIがPBIよりも有意に大きかったのに対して,WT2におけるPPIはNPBIよりも有意に小さかった。NPPIとPBI,PPIとNPBIには有意な正の相関(r=0.83,0.63)を認めた。また,PBIに占める単脚支持期のimpulseの割合と,PPIに占める単脚支持期のimpulseの割合には有意な負の相関(r=-0.65)を認めた。
【結論】
対象者の多くは,WT1を形成する時期に身体は前方への推進力を得ていたが,WT2を形成する時期ではむしろ制動力を受けていた。また,非麻痺側推進力の大きさは,麻痺側の制動能力に応じて制御されており,非麻痺側制動力も麻痺側推進力と関連した。単脚立脚期の麻痺側推進力は,単脚立脚期に過剰な制動を受けない人ほど大きくなっていた。したがって麻痺側の推進力を得るには,麻痺側の過剰な制動を減少させる必要があると考えられた。
脳卒中片麻痺者の歩行では,麻痺側で形成される推進力の積分値(propulsion impulse:PI)が歩行機能に大きく影響するとされる。我々が前回行った報告では,片麻痺者の最大前方ステップ動作で生じる麻痺側PIは,実際の歩行中の推進力より大きく,歩行中に形成可能なPIを最大限に利用していないことが示された。この差異が生じる理由を検討するために,本研究では片麻痺者の歩行における歩行相に応じた推進力や制動力を分析し,床反力前後成分の特性を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,慢性期脳卒中片麻痺者13名(50.8±15.3歳,下肢Fugl-Meyer Assessment 24.4±3.9)とした。3m歩行路の中央に床反力計(KISTLER社製)を設置し,対象者に油圧底屈制動付短下肢装具を装着して快適速度で歩行するように指示した。床反力前後成分のうち立脚期前半に形成される制動力の積分値(braking impulse:BI)と,立脚期後半に形成される推進力の積分値PIを算出した。BIおよびPIは体重で正規化し,麻痺側制動力(PBI),麻痺側推進力(PPI),非麻痺側制動力(NPBI),非麻痺側推進力(NPPI)を求めた。NPPIとPBIの差は,非麻痺側から麻痺側への荷重移動に伴う床反力前後成分の差を表すため,この値をWT1とし,反対にPPIとNPBIの差をWT2とした。さらに,両踵に貼付した3軸加速度計(DELSYS社製)により,踵接地と爪先離地のタイミングから両脚支持期と単脚支持期を同定した。統計解析では,WT1におけるNPPIとPBI,WT2におけるPPIとNPBIとの差を対応あるt検定により比較した。また,NPPIとPBI,PPIとNPBIとの関連をpearsonの相関係数を用いて検討した。さらに,BIおよびPIに占める両脚支持期と単脚支持期のimpulseの割合を求め,同側下肢における制動期と推進期の各パラメーターの関連をpearsonの相関係数を用いて検討した(有意水準5%)。
【結果】
全対象者でWT1は正,大部分(10名)でWT2は負となり,WT1を形成する時期では全体として推進し,WT2を形成する時期では全体として減速する特徴を示した。WT1におけるNPPIがPBIよりも有意に大きかったのに対して,WT2におけるPPIはNPBIよりも有意に小さかった。NPPIとPBI,PPIとNPBIには有意な正の相関(r=0.83,0.63)を認めた。また,PBIに占める単脚支持期のimpulseの割合と,PPIに占める単脚支持期のimpulseの割合には有意な負の相関(r=-0.65)を認めた。
【結論】
対象者の多くは,WT1を形成する時期に身体は前方への推進力を得ていたが,WT2を形成する時期ではむしろ制動力を受けていた。また,非麻痺側推進力の大きさは,麻痺側の制動能力に応じて制御されており,非麻痺側制動力も麻痺側推進力と関連した。単脚立脚期の麻痺側推進力は,単脚立脚期に過剰な制動を受けない人ほど大きくなっていた。したがって麻痺側の推進力を得るには,麻痺側の過剰な制動を減少させる必要があると考えられた。