第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本神経理学療法学会 一般演題口述
(神経)02

Fri. May 27, 2016 11:10 AM - 12:10 PM 第7会場 (札幌コンベンションセンター 2階 204)

座長:大畑光司(京都大学大学院 医学研究科人間健康科学系専攻)

[O-NV-02-4] 回復期リハビリテーション病棟入院中の脳卒中者における長下肢装具と短下肢装具の処方に関連する入院時の動作能力の要因

太田智裕1, 橋立博幸2, 清水夏生1,2, 松原徹1, 山中誠一郎1, 野口隆太郎1 (1.初台リハビリテーション病院, 2.杏林大学保健学部理学療法学科)

Keywords:脳卒中, 下肢装具, 動作能力

【はじめに,目的】

回復期リハビリテーション病棟入院中の脳卒中者における入院時の動作能力から長下肢装具(KAFO)と短下肢装具(AFO)が処方された者の特性を検証し,下肢装具の処方の差異に関連する動作能力の要因を明らかにすることを目的とした。

【方法】

回復期リハビリテーション病棟に入院した脳卒中者のうち,KAFOまたはAFOを処方された453名(平均年齢69歳)を対象とした。主な調査項目は基本属性(疾患名,損傷側,年齢,性別,発症から入院または装具作製までの日数,入院から装具作製までの日数),身体機能[麻痺側下肢のBrunnstrom recovery stage(BRS),足底表在覚または母趾運動覚の障害の有無],動作能力[functional independence measure(FIM)]であり,各調査は入院後1週間以内に行った。FIMは全18項目(FIM合計),運動13項目(mFIM),認知5項目(cFIM)の各合計点を算出した。KAFOを処方された295名(K群),AFOを処方された158名(A群)の各調査項目を比較し,異なる下肢装具の処方に関連する要因について分析した。

【結果】

基本属性および身体機能を群間で比較した結果,K群にて年齢が有意に高かった。また,K群では脳梗塞者および女性,BRSI,IIの者,足底表在覚または母趾運動覚の障害を有する者が有意に多く,脳出血者,男性が有意に少なかった。一方,A群ではBRSIIIの者が有意に多かった。損傷側,発症から入院または装具作製までの日数,入院から装具作製までの日数に有意な差はみられなかった。動作能力の比較では,K群にてFIM合計,mFIM,cFIM,そしてすべてのFIM細項目が有意に低かった。

さらに,処方された下肢装具を従属変数(0:KAFO,1:AFO),FIMを独立変数とした変数増加法による2項ロジスティック回帰分析を損傷側,年齢,性別,発症から装具作製までの日数,BRS,足底表在覚または母趾運動覚の障害の有無にて調整して行った結果,FIM合計を独立変数としたモデルでは,BRS[オッズ比(OR)2.12,95%信頼区間(CI)1.38-3.26],FIM合計(OR 1.07,95%CI 1.05-1.10)が有意な関連項目として抽出された。mFIMとcFIMを独立変数としたモデルでは,BRS(OR 2.30,95%CI 1.51-3.52),mFIM(OR 1.11,95%CI 1.08-1.15),FIM移乗3項目と移動2項目を独立変数としたモデルでは,BRS(OR 2.46,95%CI 1.60-3.65),FIM移乗(車椅子)(OR 2.66,95%CI 1.91-3.71)が有意な関連項目であった。

【結論】

AFOを処方された者と比較しKAFOを処方された者は,回復期リハビリテーション病棟入院時において運動麻痺,感覚障害,日常生活動作の障害が重度であったが,KAFOとAFOの処方の違いに対して,日常生活動作の中でも移動ではなく,とくに移乗の動作能力が麻痺側下肢の随意性とともに有意に関連した。立位での下肢の支持性がKAFOとAFOの処方の判断に重要とされているが,起立,立位,ステップといった下肢の支持性を必要とする移乗の動作特性が処方される下肢装具の適応に反映される可能性があると考えられた。