[O-NV-02-6] 脳卒中片麻痺患者に対する長下肢装具を使用した歩行練習が歩行機能に及ぼす即時的効果
―練習前後での膝関節角度と歩行速度の比較―
キーワード:脳卒中, 歩行, 装具
【はじめに,目的】
脳卒中治療ガイドラインでは脳卒中片麻痺患者に対して歩行機能改善のために下肢装具を使用することを推奨している。脳卒中患者に使用する装具には長下肢装具(以下KAFO)や短下肢装具(以下AFO)があり,発症後早期の脳卒中片麻痺患者には治療用装具としてKAFOを積極的に使用して歩行練習を行うこともある。しかし,KAFOを使用した歩行練習が,歩行機能にどのような影響を及ぼすかはまだ不明確な点も多い。本研究の目的はKAFOを使用した歩行練習が脳卒中片麻痺患者の歩行中の膝関節角度や歩行速度に与える影響を調査することである。
【方法】
対象は急性期病院入院中で,AFOを使用して歩行が可能な脳卒中片麻痺患者7名(年齢:66.9±14.9歳,疾患:脳出血3名,脳梗塞4名,発症後経過日数:14.9±8.3日,麻痺側:右側4名,左側3名,下肢Brunnstrom Recovery Stage:III2名,IV3名,V2名)とした。
方法は両側金属支柱付のKAFO(膝継手:リングロック,足継手:Gait Solution)を使用して介助下での歩行練習を20分間行い,練習の前後で上記KAFOをカットダウンしたAFOでの快適歩行中の麻痺側膝関節角度と10m歩行速度を計測した。マーカーは麻痺側大転子,膝関節裂隙,AFOの外側足継手に貼り付け,矢状面から川村義肢社製Gait Judge Systemを使用してビデオ撮影を行った。角度の計測には画像処理ソフトウェアImage Jを使用し,歩行開始から5歩行周期以降の立脚初期(以下IC),立脚中期(以下MSt),前遊脚期(以下PSw)の麻痺側膝関節角度を計測した。歩行速度の計測は10 mの計測路の両端に3 mを加えた16 mの直線を快適な速度で歩行することで計測を行った。歩行時に杖が必要な対象者は杖を使用して計測することとした。統計学的解析は,練習前後での麻痺側膝関節角度,歩行速度の平均値を対応のあるt検定を使用して比較した。なお,有意水準は5%未満とした。
【結果】
7名の対象者全てが練習と練習前後の評価を完遂した。ICは練習前12.9±4.6°,練習後8.2±4.0°,MStは練習前14.9±6.3°,練習後10.1±5.6°と有意に低下しており,練習後に膝関節がより伸展していた(p<0.05)。PSwに関しては練習前30.7±6.5°,練習後34.6±10.1と有意差は認められなかった。歩行速度は練習前0.35±0.27m/s,練習後0.43±0.32と練習後に有意に改善していた(p<0.05)。
【結論】
KAFOを使用した歩行練習は即時的に麻痺側IC~MStの膝関節伸展を確保し,歩行速度を改善させる効果があることが示唆された。本研究は脳卒中片麻痺患者のKAFOを使用した歩行練習の治療効果や適応を明らかにする上でも重要である。
脳卒中治療ガイドラインでは脳卒中片麻痺患者に対して歩行機能改善のために下肢装具を使用することを推奨している。脳卒中患者に使用する装具には長下肢装具(以下KAFO)や短下肢装具(以下AFO)があり,発症後早期の脳卒中片麻痺患者には治療用装具としてKAFOを積極的に使用して歩行練習を行うこともある。しかし,KAFOを使用した歩行練習が,歩行機能にどのような影響を及ぼすかはまだ不明確な点も多い。本研究の目的はKAFOを使用した歩行練習が脳卒中片麻痺患者の歩行中の膝関節角度や歩行速度に与える影響を調査することである。
【方法】
対象は急性期病院入院中で,AFOを使用して歩行が可能な脳卒中片麻痺患者7名(年齢:66.9±14.9歳,疾患:脳出血3名,脳梗塞4名,発症後経過日数:14.9±8.3日,麻痺側:右側4名,左側3名,下肢Brunnstrom Recovery Stage:III2名,IV3名,V2名)とした。
方法は両側金属支柱付のKAFO(膝継手:リングロック,足継手:Gait Solution)を使用して介助下での歩行練習を20分間行い,練習の前後で上記KAFOをカットダウンしたAFOでの快適歩行中の麻痺側膝関節角度と10m歩行速度を計測した。マーカーは麻痺側大転子,膝関節裂隙,AFOの外側足継手に貼り付け,矢状面から川村義肢社製Gait Judge Systemを使用してビデオ撮影を行った。角度の計測には画像処理ソフトウェアImage Jを使用し,歩行開始から5歩行周期以降の立脚初期(以下IC),立脚中期(以下MSt),前遊脚期(以下PSw)の麻痺側膝関節角度を計測した。歩行速度の計測は10 mの計測路の両端に3 mを加えた16 mの直線を快適な速度で歩行することで計測を行った。歩行時に杖が必要な対象者は杖を使用して計測することとした。統計学的解析は,練習前後での麻痺側膝関節角度,歩行速度の平均値を対応のあるt検定を使用して比較した。なお,有意水準は5%未満とした。
【結果】
7名の対象者全てが練習と練習前後の評価を完遂した。ICは練習前12.9±4.6°,練習後8.2±4.0°,MStは練習前14.9±6.3°,練習後10.1±5.6°と有意に低下しており,練習後に膝関節がより伸展していた(p<0.05)。PSwに関しては練習前30.7±6.5°,練習後34.6±10.1と有意差は認められなかった。歩行速度は練習前0.35±0.27m/s,練習後0.43±0.32と練習後に有意に改善していた(p<0.05)。
【結論】
KAFOを使用した歩行練習は即時的に麻痺側IC~MStの膝関節伸展を確保し,歩行速度を改善させる効果があることが示唆された。本研究は脳卒中片麻痺患者のKAFOを使用した歩行練習の治療効果や適応を明らかにする上でも重要である。