[O-NV-03-2] パーキンソン病患者に対するトレッドミル後進歩行の効果について
3軸加速度センサー内蔵携帯歩行計による検討
Keywords:パーキンソン病, トレッドミル, 歩行
【はじめに,目的】
パーキンソン病は,安静時振戦,筋固縮,寡動,姿勢反射障害を特徴とする慢性進行性の神経変性疾患である。パーキンソン病患者は,すくみ足による歩行障害や姿勢反射障害による転倒等により,身体活動量の低下や社会参加の減少,QOL低下をもたらす。
そのため,パーキンソン病患者の歩行障害に対して,体重支持下でのトレッドミル歩行や聴覚,視覚,体性感覚刺激での歩行練習などが行われており,いずれも歩幅や歩行速度の改善を認めている。トレッドミル後進歩行についても先行研究により,歩幅や歩行速度の改善に対する有用性を示す報告がなされているが,各パラメーターに対する詳細な報告は演者たちが知る限りない。
本研究は,携帯型歩行解析装置を用いて,トレッドミル後進歩行前後での歩行を行い,歩行の各パラメーターの比較,検討を行った。
【方法】
対象は,自立歩行が可能であり,整形外科的疾患や重篤な認知機能障害を有さないパーキンソン病患者8名(男性3名,女性5名,平均年齢69.5±6.7歳,身長156.4±8.1cm,体重59.2±9.4kg,Hoehn & Yahr分類にてI度:3名,II度:5名,Unified Parkinson's Disease Rating Scale運動項目:21.0±9.3)だった。
先行研究を参考に傾斜を3%設け,快適速度(0.6~1.6km/h)でのトレッドミル後進歩行を5分間実施した。トレッドミル後進歩行前後で携帯型歩行解析装置を装着し,10m歩行にて,歩行速度,歩幅,上下方向および左右方向の平均振幅と標準偏差,力強さ(G),パーキンソン症状が強い一側を悪側,弱い一側を良側として立脚期と遊脚期および両脚支持期の平均秒数と変動係数(CV)を算出した。
統計解析は,介入前(pre)と介入後(post)の測定結果を比較するために,対応のあるt検定を実施し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
トレッドミル後進歩行前後で,良側支持時間(pre:0.43±0.04,post:0.44±0.03),上下振幅の標準偏差(pre:0.2±0.1cm,post:0.3±0.1cm)で介入前後での有意な増加がみられ,その他のパラメーターに有意差は認めなかった。
【結論】
本研究は,パーキンソン病患者に対するトレッドミル後進歩行後の効果について,携帯型歩行解析装置を用いて検証した。
先行研究によると,健常者と高齢者の通常歩行の比較では健常者の上下振幅の標準偏差が高いことが報告されている。本研究の結果では介入後に上下振幅の標準偏差が増加しており,これはより正常な歩行に近づいた結果であると考える。また,良側支持時間の増加は被験者にとってより困難な条件での練習により良側への依存度が高まった結果と考える。本研究の結果より,トレッドミル後進歩行練習はパーキンソン病患者の歩行をより正常に近づける可能性があることが示唆される。今後は症例数を重ねてより詳細な検証をしていく必要がある。
パーキンソン病は,安静時振戦,筋固縮,寡動,姿勢反射障害を特徴とする慢性進行性の神経変性疾患である。パーキンソン病患者は,すくみ足による歩行障害や姿勢反射障害による転倒等により,身体活動量の低下や社会参加の減少,QOL低下をもたらす。
そのため,パーキンソン病患者の歩行障害に対して,体重支持下でのトレッドミル歩行や聴覚,視覚,体性感覚刺激での歩行練習などが行われており,いずれも歩幅や歩行速度の改善を認めている。トレッドミル後進歩行についても先行研究により,歩幅や歩行速度の改善に対する有用性を示す報告がなされているが,各パラメーターに対する詳細な報告は演者たちが知る限りない。
本研究は,携帯型歩行解析装置を用いて,トレッドミル後進歩行前後での歩行を行い,歩行の各パラメーターの比較,検討を行った。
【方法】
対象は,自立歩行が可能であり,整形外科的疾患や重篤な認知機能障害を有さないパーキンソン病患者8名(男性3名,女性5名,平均年齢69.5±6.7歳,身長156.4±8.1cm,体重59.2±9.4kg,Hoehn & Yahr分類にてI度:3名,II度:5名,Unified Parkinson's Disease Rating Scale運動項目:21.0±9.3)だった。
先行研究を参考に傾斜を3%設け,快適速度(0.6~1.6km/h)でのトレッドミル後進歩行を5分間実施した。トレッドミル後進歩行前後で携帯型歩行解析装置を装着し,10m歩行にて,歩行速度,歩幅,上下方向および左右方向の平均振幅と標準偏差,力強さ(G),パーキンソン症状が強い一側を悪側,弱い一側を良側として立脚期と遊脚期および両脚支持期の平均秒数と変動係数(CV)を算出した。
統計解析は,介入前(pre)と介入後(post)の測定結果を比較するために,対応のあるt検定を実施し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
トレッドミル後進歩行前後で,良側支持時間(pre:0.43±0.04,post:0.44±0.03),上下振幅の標準偏差(pre:0.2±0.1cm,post:0.3±0.1cm)で介入前後での有意な増加がみられ,その他のパラメーターに有意差は認めなかった。
【結論】
本研究は,パーキンソン病患者に対するトレッドミル後進歩行後の効果について,携帯型歩行解析装置を用いて検証した。
先行研究によると,健常者と高齢者の通常歩行の比較では健常者の上下振幅の標準偏差が高いことが報告されている。本研究の結果では介入後に上下振幅の標準偏差が増加しており,これはより正常な歩行に近づいた結果であると考える。また,良側支持時間の増加は被験者にとってより困難な条件での練習により良側への依存度が高まった結果と考える。本研究の結果より,トレッドミル後進歩行練習はパーキンソン病患者の歩行をより正常に近づける可能性があることが示唆される。今後は症例数を重ねてより詳細な検証をしていく必要がある。