[O-NV-03-3] パーキンソン病患者に対するtDCS(経頭蓋直流刺激)が歩行へ及ぼす即時的効果の検討
キーワード:経頭蓋直流刺激, パーキンソン病, 歩行
【はじめに,目的】起立・歩行動作障害を呈するパーキンソン病(PD)患者に対し,経頭蓋直流刺激(Transcranial direct current stimulation:tDCS)と偽刺激(sham刺激)をランダムに実施し,tDCSがPD患者の歩行動作に及ぼす即時的な影響について検討することを目的とした。
【方法】対象はPD患者 6名(平均年齢77.2歳:70~86歳)とし,ホーンヤールの分類III:2名,IV:4名,指示理解が可能な者,重度の認知症がない者とし,PD診断からの平均期間は10.8±3.1年(7~15年)であった。tDCSはDC Stimulator(Neuro Conn GmbH社製)を利用し,陽極を左運動野,陰極を右前頭部に設置し,1mAの直流電流を安楽座位で20分実施した。また,同様の電極配置で最初だけ電流の流れるsham刺激を,tDCSと順番はランダムに実施した。各刺激は48時間以上あけて実施しており,被験者によって各刺激1~3回実施した。また,1日1回40分の理学療法は継続的に実施した。各刺激とも服薬後に薬の効いている時間を選択し,投薬状況による変化の少ない時間を設定した。各刺激前後での評価は10m歩行テストを実施し,10mの快適歩行時間と歩数の計測を行い,歩行速度(m/min),歩幅(cm),歩行率(steps/min)を算出した。統計学的な検討はSPSS ver.21を利用して,tDCSとsham刺激で各刺激前後の歩行速度,歩幅,歩行率の変化に関して,Wilcoxonの符号付順位和検定を用いて分析した。有意水準は5%未満とした。
【結果】歩行速度(m/min)は,tDCS前25.9±12.5m/min,tDCS後30.8±11.8m/minであった。Sham刺激前29.1±11.2 m/min,刺激後26.2±12.5m/minであり,tDCS後に有意な差があった(p<0.05)。歩行率(steps/min)は,tDCS前105.5±21.1steps/min,tDCS後113.6±24.5steps/min,Sham刺激前99.9±23.1steps/min,刺激後103.7±25.4steps/minであり,有意差はなかった。歩幅(cm)は,tDCS前24.9±12.5cm,tDCS後27.4±10.7cm,Sham刺激前29.9±12.1 cm,刺激後25.2±11.8 cmであった。tDCS後に有意差があった(p<0.05)。
【結論】tDCSにより運動野を刺激することで,歩行動作に関与するPD特有の症状の改善が認められた。tDCSによって一次運動野から興奮性の入力刺激によって,大脳基底核の入力刺激が増大することが知られている。大脳皮質から線状体,淡蒼球内節・黒質網様部,視床を介して運動関連領野を刺激することとなり,運動機能改善につながったことが考えられる。PDは黒質からの入力が減少しているため,tDCSによるこの経路の活性化が歩行動作に効果的なことが示唆された。刺激位置(電極接触位置)から運動野前方の補足運動野へも刺激が波及し,運動プログラムの活性化などが関与した可能性が考えられる。また,歩行はリズム性で自動化された動作であり,その運動プログラムの促通刺激となりえることが示唆された。
【方法】対象はPD患者 6名(平均年齢77.2歳:70~86歳)とし,ホーンヤールの分類III:2名,IV:4名,指示理解が可能な者,重度の認知症がない者とし,PD診断からの平均期間は10.8±3.1年(7~15年)であった。tDCSはDC Stimulator(Neuro Conn GmbH社製)を利用し,陽極を左運動野,陰極を右前頭部に設置し,1mAの直流電流を安楽座位で20分実施した。また,同様の電極配置で最初だけ電流の流れるsham刺激を,tDCSと順番はランダムに実施した。各刺激は48時間以上あけて実施しており,被験者によって各刺激1~3回実施した。また,1日1回40分の理学療法は継続的に実施した。各刺激とも服薬後に薬の効いている時間を選択し,投薬状況による変化の少ない時間を設定した。各刺激前後での評価は10m歩行テストを実施し,10mの快適歩行時間と歩数の計測を行い,歩行速度(m/min),歩幅(cm),歩行率(steps/min)を算出した。統計学的な検討はSPSS ver.21を利用して,tDCSとsham刺激で各刺激前後の歩行速度,歩幅,歩行率の変化に関して,Wilcoxonの符号付順位和検定を用いて分析した。有意水準は5%未満とした。
【結果】歩行速度(m/min)は,tDCS前25.9±12.5m/min,tDCS後30.8±11.8m/minであった。Sham刺激前29.1±11.2 m/min,刺激後26.2±12.5m/minであり,tDCS後に有意な差があった(p<0.05)。歩行率(steps/min)は,tDCS前105.5±21.1steps/min,tDCS後113.6±24.5steps/min,Sham刺激前99.9±23.1steps/min,刺激後103.7±25.4steps/minであり,有意差はなかった。歩幅(cm)は,tDCS前24.9±12.5cm,tDCS後27.4±10.7cm,Sham刺激前29.9±12.1 cm,刺激後25.2±11.8 cmであった。tDCS後に有意差があった(p<0.05)。
【結論】tDCSにより運動野を刺激することで,歩行動作に関与するPD特有の症状の改善が認められた。tDCSによって一次運動野から興奮性の入力刺激によって,大脳基底核の入力刺激が増大することが知られている。大脳皮質から線状体,淡蒼球内節・黒質網様部,視床を介して運動関連領野を刺激することとなり,運動機能改善につながったことが考えられる。PDは黒質からの入力が減少しているため,tDCSによるこの経路の活性化が歩行動作に効果的なことが示唆された。刺激位置(電極接触位置)から運動野前方の補足運動野へも刺激が波及し,運動プログラムの活性化などが関与した可能性が考えられる。また,歩行はリズム性で自動化された動作であり,その運動プログラムの促通刺激となりえることが示唆された。