第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本神経理学療法学会 一般演題口述
(神経)04

Fri. May 27, 2016 2:50 PM - 3:50 PM 第6会場 (札幌コンベンションセンター 2階 小ホール)

座長:北山哲也(山梨リハビリテーション病院 理学療法課)

[O-NV-04-3] 回復期脳卒中患者における非麻痺側上肢運動による全身持久力評価の特徴

小田ちひろ1, 小宅一彰1,2, 山口智史3, 工藤大輔1, 佐久間達生1, 木下琴枝1, 井上靖悟1, 近藤国嗣1, 大高洋平1,3 (1.東京湾岸リハビリテーション病院, 2.信州大学大学院医学系研究科, 3.慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室)

Keywords:最高酸素摂取量, 最高心拍数, エルゴメータ

【はじめに,目的】

運動麻痺の影響を受けずに脳卒中患者の全身持久力を評価する手法として,非麻痺側上肢でのエルゴメータ運動による運動負荷試験(CPX)が提案されている(原,1996)。この非麻痺側上肢CPXは,脳卒中患者の全身持久力を客観的に評価する有用な手法となる可能性がある。しかし,脳卒中患者において,CPXの終了理由も含めた非麻痺側上肢CPXによる持久力評価の特徴は明らかにされていない。そこで本研究の目的は,回復期脳卒中患者において,非麻痺側上肢運動によるCPXを用いた全身持久力評価について,健常成人と比較し,特徴を検討する事である。


【方法】

対象は,2014年8月から2015年7月までに当院回復期病棟に入院した脳卒中患者29名(男性21名,年齢56±11歳,体格指数21.6±2.8 kg/m2,発症後82±31日;平均±標準偏差)であった。日常生活自立度はFunctional Independence Measureの運動項目で67.5±18.0点であった。採用基準は,片側半球皮質下の初発脳卒中,端座位保持が自立,Mini Mental State Examinationが22点以上,研究参加の同意が得られる者とした。除外基準は,内科的疾患により運動制限,関節拘縮や疼痛,神経変性疾患の既往を有する者とした。対照群は健常成人17名(男性2名,年齢50±8歳,体格指数22.1±2.6 kg/m2)とした。

CPXにおける運動課題は,エルゴメータを用いた非麻痺側上肢運動とした。健常成人は利き腕で実施した。運動負荷強度は10 Wで開始し,1分毎に5 Wずつ漸増した。回転速度は,脳卒中患者は10 Wでの至適速度,健常成人は50 rpmを維持するよう指示した。

全身持久力の指標は,運動中の最高酸素摂取量(Peak VO2)について,呼気ガス分析計を用いて測定した。Peak VO2は,過去の最大運動負荷試験で得られた参考値(Loe, et al., 2013)にて年齢と性別の影響を補正した。運動終了基準は,心拍数が予測最大心拍数の85% に到達,回転速度の維持困難,血圧異常,心電図異常,自覚症状の出現とした。

統計解析では,Peak VO2について,脳卒中患者と健常成人の比較に対応のないt検定を用いた。運動終了理由の比較には,Fisher正確確率検定を用いた。有意水準は5%とした。


【結果】

Peak VO2は脳卒中患者で29.1±6.6%,健常成人で34.9±8.1%で有意差を認めた(p<0.05)。脳卒中患者の終了理由は,心拍数が終了基準に到達が12名(41.4%),回転速度の維持困難が12名(41.4%),血圧異常(拡張期血圧が115 mmHg以上)が5名(17.3%)であった。健常成人の終了理由は心拍数が終了基準に到達が5名(29.4%),回転速度の維持困難が6名(35.3%),血圧異常(拡張期血圧が115 mmHg以上)が6名(35.3%)であった。終了理由は群間に有意差を認めなかった(p=0.46)。


【結論】

非麻痺側上肢運動によるCPXの特徴として,健常者と同様,約半数以上の対象者が心拍数以外の条件で運動が終了した。しかし,Peak VO2は健常者より有意に低下しており,脳卒中患者の全身持久力を評価するために有用である事が示された。