[O-NV-04-4] 脳卒中患者における意欲とADL・身体機能との関連
Keywords:脳卒中患者, 意欲, ADL
【はじめに,目的】
意欲がリハビリテーション(以下リハ)に大きく影響する重要な因子であることが知られている。意欲とADLの関連についての研究の多くが運動器疾患を含んでいることや脳卒中の病期を規定していない。そこで本研究では,回復期脳卒中患者を対象とし,意欲とADL,身体機能との関連を検討することを目的とした。
【方法】
対象は発症30日以上経過した脳卒中患者とした。除外基準は重度の意識低下,認知症などにより指示を理解できない者,不安定な全身状態により自発的なリハが行えない者とした。評価項目は意欲の評価指標であるPittsburgh Rehabilitation Participation Scale(PRPS)とVitality index(VI),ADLの指標としてFIM運動項目,認知項目,脳卒中の身体機能としてStroke Impairment Assessment Set(SIAS),歩行能力の分類としてFunctional Ambulation Categories(FAC)を用いた。発症から30日,90日の時点に上記の評価項目を実施した。群分けとしてFIMの総合得点90点以上を軽度群,89~55点を中等度群,54点以下を重度群として分類した。解析には各評価結果の90日から30日の点数を減算した変化量を使用し,PRPS,VIの変化量と運動FIM,認知FIM,SIAS,FACの変化量との相関を,Spearman順位相関係数を用いて分析した。さらに,意欲と身体機能,ADLに有意な相関がみられた場合,サブグループ分析として,その群の中で変化が見られたものとそうでないものの2群に分け,運動FIM,認知FIM,SIAS,FACの変化量を群間で比較した。このときの検定は,Mann-WhitneyのU検定とした。有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象者は40名であり,軽度群が10名,中等度群が18名,重度群が12名であった。PRPS,VIの変化量と運動FIM,SIAS,FACの変化量との相関では,重度群のみに運動FIM,SIASの変化量と有意な相関が認められた(PRPS×運動FIM:r=0.75,PRPS×SIAS:0.70,VI×運動FIM:r=0.52,VI×SIAS:0.76)。また,重度群の中で意欲に1点以上変化がみられたのが7名(意欲変化あり群)と変化がみられなかったのが5名(意欲変化なし群)であった。各評価項目における群間比較では,意欲変化あり群が変化なし群に比べて運動FIM,SIASの変化量が有意に大きかった。
【結論】
今回,脳卒中の重度群に関しては意欲の変化量と運動FIM,SIASとの相関が認められた。また,重度群の中で意欲が向上した群に運動FIM,SIASの有意な向上がみられた。先行研究では,重症患者ほど身体活動が低下しているため,リハプログラムに参加するためには十分な耐久性が必要であると言われている。そのような集中的なリハに耐えうるには意欲が必要となることから今回重度群のみに変化がみられたと考える。今回の結果から,特に重度の脳卒中患者のリハを実施していくにあたって身体機能面だけに主眼を置くのではなく,意欲という側面もみながら予後予測を行い,アプローチしていくことが重要になると考える。
意欲がリハビリテーション(以下リハ)に大きく影響する重要な因子であることが知られている。意欲とADLの関連についての研究の多くが運動器疾患を含んでいることや脳卒中の病期を規定していない。そこで本研究では,回復期脳卒中患者を対象とし,意欲とADL,身体機能との関連を検討することを目的とした。
【方法】
対象は発症30日以上経過した脳卒中患者とした。除外基準は重度の意識低下,認知症などにより指示を理解できない者,不安定な全身状態により自発的なリハが行えない者とした。評価項目は意欲の評価指標であるPittsburgh Rehabilitation Participation Scale(PRPS)とVitality index(VI),ADLの指標としてFIM運動項目,認知項目,脳卒中の身体機能としてStroke Impairment Assessment Set(SIAS),歩行能力の分類としてFunctional Ambulation Categories(FAC)を用いた。発症から30日,90日の時点に上記の評価項目を実施した。群分けとしてFIMの総合得点90点以上を軽度群,89~55点を中等度群,54点以下を重度群として分類した。解析には各評価結果の90日から30日の点数を減算した変化量を使用し,PRPS,VIの変化量と運動FIM,認知FIM,SIAS,FACの変化量との相関を,Spearman順位相関係数を用いて分析した。さらに,意欲と身体機能,ADLに有意な相関がみられた場合,サブグループ分析として,その群の中で変化が見られたものとそうでないものの2群に分け,運動FIM,認知FIM,SIAS,FACの変化量を群間で比較した。このときの検定は,Mann-WhitneyのU検定とした。有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象者は40名であり,軽度群が10名,中等度群が18名,重度群が12名であった。PRPS,VIの変化量と運動FIM,SIAS,FACの変化量との相関では,重度群のみに運動FIM,SIASの変化量と有意な相関が認められた(PRPS×運動FIM:r=0.75,PRPS×SIAS:0.70,VI×運動FIM:r=0.52,VI×SIAS:0.76)。また,重度群の中で意欲に1点以上変化がみられたのが7名(意欲変化あり群)と変化がみられなかったのが5名(意欲変化なし群)であった。各評価項目における群間比較では,意欲変化あり群が変化なし群に比べて運動FIM,SIASの変化量が有意に大きかった。
【結論】
今回,脳卒中の重度群に関しては意欲の変化量と運動FIM,SIASとの相関が認められた。また,重度群の中で意欲が向上した群に運動FIM,SIASの有意な向上がみられた。先行研究では,重症患者ほど身体活動が低下しているため,リハプログラムに参加するためには十分な耐久性が必要であると言われている。そのような集中的なリハに耐えうるには意欲が必要となることから今回重度群のみに変化がみられたと考える。今回の結果から,特に重度の脳卒中患者のリハを実施していくにあたって身体機能面だけに主眼を置くのではなく,意欲という側面もみながら予後予測を行い,アプローチしていくことが重要になると考える。