第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本神経理学療法学会 一般演題口述
(神経)04

2016年5月27日(金) 14:50 〜 15:50 第6会場 (札幌コンベンションセンター 2階 小ホール)

座長:北山哲也(山梨リハビリテーション病院 理学療法課)

[O-NV-04-5] 回復期脳卒中患者における家族介護力別の自宅復帰に必要なADL自立度

日本リハビリテーション・データベースを用いた分析

佐藤惇史1, 藤田貴昭2, 山本優一3 (1.八千代リハビリテーション学院, 2.東北福祉大学, 3.北福島医療センター)

キーワード:自宅復帰, ADL, 介護力

【はじめに,目的】

回復期リハビリテーション(リハ)分野では,対象者の自宅復帰が目標の一つになることが多い。自宅復帰の可否には対象者の日常生活活動(ADL)自立度が重要となるため,近年,ADLの予後予測に関する知見が多く報告されている。一方,自宅復帰は臨床的に家族の介護力にも左右される部分が大きく,退院時のADL自立度の予測値だけでは自宅復帰の可否を予測することが困難である。そこで本研究の目的は,家族の介護力に対応する自宅復帰に必要なADL自立度のカットオフポイントを算出することで,転帰先の予後予測を検討する資料を作成することである。

【方法】

対象は,リハに関わる国内最大のデータベースを構築,運用する「日本リハビリテーション・データベース協議会(JARD)」の脳卒中回復期病棟版に2014年5月までに登録された4949名で,このうち選択基準を満たし,欠損値,異常値を示すものを除外した1600名とした。除外基準として,死亡,急変や胃瘻造設による転科,発症前より施設などの自宅以外で生活していた者とした。対象者の観察項目は,性別,年齢,脳卒中病型,退院先,介護力,退院時のFunctional Independence Measure(FIM)およびBarthel Index(BI)とした。分析は,全対象,家族の介護力無し,介護者1人以上,介護者2人以上のそれぞれにおいて,従属変数を自宅復帰の可否,独立変数を退院時のFIMとBIとしたReceiver Operating Characteristic(ROC)解析を行い,カットオフ値を算出した。また,カットオフ値の精度についてはROC曲線下面積(AUC),感度,特異度を算出し検討した。統計ソフトは,SPSS ver.22 for windowsを用いた。

【結果】

FIMでは,全対象が90点(AUC0.89,感度78%,特異度81%),介護力なしが102点(AUC0.89,感度80%,特異度88%),介護者1人以上が87点(AUC0.88,感度79%,特異度83%),介護者2人以上が86点(AUC0.90,感度71%,特異度97%)であった。BIでは,全対象が65点(AUC0.85,感度77%,特異度81%),介護力なしが75点(AUC0.87,感度83%,特異度84%),介護者1人以上が60点(AUC0.87,感度79%,特異度82%),介護者2人以上が40点(AUC0.89,感度85%,特異度81%)であった。

【結論】

本研究から,家族の介護力が大きいほど自宅復帰に必要なADL自立度の水準は低くなること,そして介護力に応じた自宅復帰に必要なADL自立度の具体的なカットオフ値が示された。またAUCの結果から,カットオフ値の精度は実用的なものであると考えられる。本研究結果はADL予後予測式と組み合わせることで,自宅復帰の可否や退院可能な時期の予測に活用できると思われる。