[O-NV-05-1] 重度脳卒中片麻痺患者における低頻度反復性経頭蓋磁気刺激と集中的リハビリテーションの併用効果
キーワード:低頻度反復性経頭蓋磁気刺激, 重度脳卒中片麻痺患者, 運動イメージ
【はじめに】
低頻度反復性経頭蓋磁気刺激(LF-rTMS)と集中的リハビリテーション(RH)の効果として,脳卒中片麻痺(CVA)患者で上肢運動機能の回復が良好なのはBRSIV以上とされている(角田2012)。しかし,重度CVA患者に対するLF-rTMSとRHを併用した報告は少ない。本研究では,重度CVA患者に対するLF-rTMSとRHの治療効果を各種機能検査と運動イメージ(MI)を用いて検討した。
【対象と方法】
本研究では,脳画像所見より皮質脊髄路(CST)完全損傷患者,BRSIII以下の7名を対象とした。LF-rTMSは経頭蓋磁気刺激装置(Magstim社製)を使用し,刺激強度を安静時運動閾値の90%とした。非損傷側運動野に1Hzで1300発刺激後,RH60分間実施を1セッションとし,14日間で22セッション実施した。LF-rTMS前後の上肢機能評価は,FMAの上肢運動項目,手指ROM,MAS,MEP,MIの評価としてKVIQ,脳波を用いて比較した。MEPは,経頭蓋磁気刺激装置(日本光電社製)にて,損傷側M1を刺激し,麻痺側第1背側骨間筋から振幅値を記録した。刺激強度は,安静時運動閾値の110%とし,10~15回測定した。刺激部位は,光学系ナビゲーションシステム(Rouge Resarch社製)を用いて解剖学的に決定した。脳波の測定は,脳波計(日本光電社製)を使用し,国際10-20法に基づき19chを記録した。プロトコルは安静12秒と運動観察(AO)12秒を5トライアル×5セッション実施した。脳波は,感覚運動皮質野直上から8~13Hz帯域の周波数解析を行い,安静時を基準としたAO時のパワー値を比率で算出した。各評価の治療前後の比較として統計学的処理は対応のあるt検定を使用し,有意水準を5%未満とした。
【結果】
LF-rTMS前後は,ROM,MAS,KVIQの有意な改善(p<0.01),脳波のパワー値の比率は有意な減衰を認めた(p<0.05)。しかし,MEP振幅値は,LF-rTMS前後で導出が困難であり,FMAにおいても有意な改善は認めなかった。
【結論】
脳波における感覚運動皮質野直上の8~13Hz帯域成分は,安静時と比較してMI,AO,運動実行によって減衰するといわれている(松尾 2010)。本研究では,治療後にKVIQの改善や有意な脳波の減衰を認めたことから,LF-rTMSを実施することで,運動関連領域の賦活が得られたと考えられる。Veraら(2015)はMIを想起させた際にMASと脳波の減衰に負の相関を認めたと報告している。LF-rTMSとRHの併用療法を実施することで,MIの想起能力が向上した結果,ROM,MASが有意に改善を認めたと考えられる。一方,先行研究と同様に本研究における重度CVA患者では,上肢運動機能の顕著な改善は認められなかった。
低頻度反復性経頭蓋磁気刺激(LF-rTMS)と集中的リハビリテーション(RH)の効果として,脳卒中片麻痺(CVA)患者で上肢運動機能の回復が良好なのはBRSIV以上とされている(角田2012)。しかし,重度CVA患者に対するLF-rTMSとRHを併用した報告は少ない。本研究では,重度CVA患者に対するLF-rTMSとRHの治療効果を各種機能検査と運動イメージ(MI)を用いて検討した。
【対象と方法】
本研究では,脳画像所見より皮質脊髄路(CST)完全損傷患者,BRSIII以下の7名を対象とした。LF-rTMSは経頭蓋磁気刺激装置(Magstim社製)を使用し,刺激強度を安静時運動閾値の90%とした。非損傷側運動野に1Hzで1300発刺激後,RH60分間実施を1セッションとし,14日間で22セッション実施した。LF-rTMS前後の上肢機能評価は,FMAの上肢運動項目,手指ROM,MAS,MEP,MIの評価としてKVIQ,脳波を用いて比較した。MEPは,経頭蓋磁気刺激装置(日本光電社製)にて,損傷側M1を刺激し,麻痺側第1背側骨間筋から振幅値を記録した。刺激強度は,安静時運動閾値の110%とし,10~15回測定した。刺激部位は,光学系ナビゲーションシステム(Rouge Resarch社製)を用いて解剖学的に決定した。脳波の測定は,脳波計(日本光電社製)を使用し,国際10-20法に基づき19chを記録した。プロトコルは安静12秒と運動観察(AO)12秒を5トライアル×5セッション実施した。脳波は,感覚運動皮質野直上から8~13Hz帯域の周波数解析を行い,安静時を基準としたAO時のパワー値を比率で算出した。各評価の治療前後の比較として統計学的処理は対応のあるt検定を使用し,有意水準を5%未満とした。
【結果】
LF-rTMS前後は,ROM,MAS,KVIQの有意な改善(p<0.01),脳波のパワー値の比率は有意な減衰を認めた(p<0.05)。しかし,MEP振幅値は,LF-rTMS前後で導出が困難であり,FMAにおいても有意な改善は認めなかった。
【結論】
脳波における感覚運動皮質野直上の8~13Hz帯域成分は,安静時と比較してMI,AO,運動実行によって減衰するといわれている(松尾 2010)。本研究では,治療後にKVIQの改善や有意な脳波の減衰を認めたことから,LF-rTMSを実施することで,運動関連領域の賦活が得られたと考えられる。Veraら(2015)はMIを想起させた際にMASと脳波の減衰に負の相関を認めたと報告している。LF-rTMSとRHの併用療法を実施することで,MIの想起能力が向上した結果,ROM,MASが有意に改善を認めたと考えられる。一方,先行研究と同様に本研究における重度CVA患者では,上肢運動機能の顕著な改善は認められなかった。