第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本神経理学療法学会 一般演題口述
(神経)05

Sat. May 28, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第4会場 (札幌コンベンションセンター 1階 107+108)

座長:吉尾雅春(千里リハビリテーション病院)

[O-NV-05-2] 補足運動野に対する経頭蓋直流電気刺激と免荷トレッドミル歩行練習の組み合わせが脳卒中後片麻痺患者の歩行能力に与える効果

万治淳史1,2, 吉満倫光1, 湯澤元樹1, 諸持修1, 松田雅弘3, 稲葉彰4, 和田義明5, 網本和2 (1.埼玉みさと総合リハビリテーション病院, 2.首都大学東京大学院人間健康科学研究科, 3.植草学園大学保健医療学部, 4.関東中央病院神経内科, 5.玉川病院リハビリテーション科)

Keywords:脳卒中, 経頭蓋直流電気刺激, 部分免荷トレッドミル歩行練習

【はじめに】近年,脳卒中後片麻痺患者に対する経頭蓋直流電気刺激(以下,tDCS)による治療効果について,報告されている。これまでの報告では運動野に対するtDCSによる上肢・手指のパフォーマンス改善についてが中心であり,歩行能力に与える効果についての報告は非常に少ない。tDCSが下肢機能や歩行・バランス能力に与える効果についてはパーキンソン病患者に対する運動野への刺激,健常人の補足運動野(以下,SMA)に対する刺激による先行性姿勢調節に与える効果について報告されている。一方,脳卒中後片麻痺患者の歩行能力改善について,部分免荷トレッドミル歩行練習(以下,BWSTT)の有効性が報告されている。そこで本研究の目的は,脳卒中後片麻痺患者に対し,SMAへのtDCSとBWSTTの併用練習が脳卒中後片麻痺患者の歩行能力に与える効果を検討することとした。


【方法】対象は回復期リハビリテーション病院に入院中の脳卒中後片麻痺患者7名(平均年齢61.7歳,発症後平均5.3ヶ月),見守りでの歩行およびBWSTTが可能なものとした。対象にはtDCSを実施しながら,BWSTTを行った。tDCSについて,電極には5×7cmのフェルトパッドを使用し,陽極をCz(国際10-20法)の3.5cm前方,陰極を後頭隆起上に貼付し,バンドにて固定した。刺激強度は1mAとし,刺激時間は20分間とした。BWSTTについて,免荷量は体重の20%,歩行速度は麻痺側の足の引きずりが出ない程度,本人の内観を聞きながら,最大努力時の90%程度の速度で行った。練習は週5回,本物の刺激(Real)と偽物の刺激(Sham)を,1週間ずつ実施した。刺激の種類は対象者にはわからないようにし,Real・Shamの順序は対象によって変えた(ランダム化クロスオーバーデザイン)。効果判定のため,Real・Sham各期間前後で10m歩行テスト(以下,10MWT),Timed up and go test(以下,TUG)を実施し,所要時間の変化について検討した。統計はSPSS Ver.21を使用し,各評価時期前後での所要時間短縮率を変数としてWilcoxon符号付順位和検定を実施した。有意水準は5%とした。


【結果】各評価時期における評価結果(平均所要時間)について,10MWTはReal前21.9秒→後19.3秒,Sham前20.8秒→後19.5秒,TUGがReal前25.0秒→後21.9秒,Sham前22.0秒→後21.3秒であった。各時期前後での所要時間短縮率について,10MWTはReal期間前後12.0±10.3%,Sham期間前後3.7±8.1%,TUGはReal期間前後12.9±11.2%,Sham期間前後3.3±6.7%であった。分析の結果,いずれのテストにおいても,Real期間の前後で所要時間短縮率が有意に大きかった(p<0.05)。


【結論】結果から,BWSTTの実施による歩行能力の改善に対し,tDCSの併用が改善効果を高めることが可能となると考えた。これはSMA周辺への陽極刺激による促通効果により姿勢調節機能を高めた条件下でのBWSTTが可能となり,歩行速度・応用歩行能力の改善に寄与したと考えられる。