[O-NV-05-3] 身体に対する注意と経頭蓋直流電気刺激法の組み合わせが慢性期脳卒中片麻痺患者の上肢機能に与える影響
二重盲検化クロスオーバー比較試験による検討
Keywords:経頭蓋直流電気刺激, 注意, 脳卒中
【はじめに,目的】
経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は頭蓋上に貼付した電極から微弱な直流電流を与え,大脳皮質興奮性を修飾する手法である。我々は昨年度の本学術大会において,3名の脳卒中片麻痺患者を対象にtDCSと身体への注意の組み合わせが上肢運動機能を改善させる可能性を示した。本研究では症例数を10名と増やし,統計学的な解析を行いtDCSと身体への注意の組み合わせによる上肢運動機能への効果を検証した。
【方法】
慢性期脳卒中片麻痺患者10名(平均年齢61±8歳,損傷半球:右4名,左6名,平均発症後年数3.6±2.9年)を対象とした。選択基準は初発脳卒中で片側半球の皮質下病変,評価課題である簡易上肢機能検査(STEF)の遂行が可能とした。除外基準は著明な認知機能低下,高次脳機能障害を有している,重度感覚障害がある者とした。研究では,被験者および評価者に対して介入条件をマスクした(二重盲検化)。すべての対象者で,以下の3つの条件について1週間毎に行った。(1)運動皮質への陽極刺激と麻痺手に注意を向け感覚刺激の検出課題を行う(tDCSと注意の併用条件)。(2)偽刺激と麻痺手に注意を向け感覚刺激の検出課題を行う(注意単独条件)。(3)陽極刺激と麻痺手に注意は向けずに安静を保つ(tDCS単独条件)とした。各条件の順序は被験者間でカウンターバランスした。tDCSの刺激強度はすべての条件で2 mAとした。刺激時間を陽極刺激は10分間,偽刺激は最初の15秒間とし,刺激部位は陽極電極を損傷半球上肢一次運動野,陰極電極を同側の上腕部とした。感覚刺激は麻痺側母指内転筋に対し,平均30秒に1回,ランダムなタイミングで刺激した。評価はSTEFを用い,大直方・木円盤・小立方・布の4項目を選択した。各項目の課題達成に要した時間を測定し,4項目の合計値を評価として用いた。各条件において介入前後,介入から1週間後に実施した。統計解析には対応のあるt検定を用いた。先行研究に基づきtDCSと注意の併用条件が他の2条件よりも改善効果が高いという仮説の下,片側検定を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
10名のデータを解析したところ,介入直後,介入から1週間後のいずれも有意な介入効果は認められなかった。そこで,SIAS上肢遠位1c(平均2.6),握力10Kg以下(平均17.8Kg)と他の被験者と比較して麻痺手の運動機能が低い2名のデータを除外し,8名のデータで新たに解析を行った。その結果,tDCSと注意の併用条件において,介入前と比較し介入から1週間後では課題遂行時間が有意に減少した(P=0.029,片側検定)。また,tDCS単独条件において介入前と比較し介入直後では課題遂行時間が有意に減少した(P=0.025,片側検定)。注意単独条件では,介入前後で課題遂行時間に有意な変化は認められなかった。
【結論】
麻痺手の運動機能が比較的高い慢性期脳卒中患者においては,tDCSと身体への注意の組み合わせが麻痺側上肢運動機能を刺激から1週間後に改善させる可能性を示した。
経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は頭蓋上に貼付した電極から微弱な直流電流を与え,大脳皮質興奮性を修飾する手法である。我々は昨年度の本学術大会において,3名の脳卒中片麻痺患者を対象にtDCSと身体への注意の組み合わせが上肢運動機能を改善させる可能性を示した。本研究では症例数を10名と増やし,統計学的な解析を行いtDCSと身体への注意の組み合わせによる上肢運動機能への効果を検証した。
【方法】
慢性期脳卒中片麻痺患者10名(平均年齢61±8歳,損傷半球:右4名,左6名,平均発症後年数3.6±2.9年)を対象とした。選択基準は初発脳卒中で片側半球の皮質下病変,評価課題である簡易上肢機能検査(STEF)の遂行が可能とした。除外基準は著明な認知機能低下,高次脳機能障害を有している,重度感覚障害がある者とした。研究では,被験者および評価者に対して介入条件をマスクした(二重盲検化)。すべての対象者で,以下の3つの条件について1週間毎に行った。(1)運動皮質への陽極刺激と麻痺手に注意を向け感覚刺激の検出課題を行う(tDCSと注意の併用条件)。(2)偽刺激と麻痺手に注意を向け感覚刺激の検出課題を行う(注意単独条件)。(3)陽極刺激と麻痺手に注意は向けずに安静を保つ(tDCS単独条件)とした。各条件の順序は被験者間でカウンターバランスした。tDCSの刺激強度はすべての条件で2 mAとした。刺激時間を陽極刺激は10分間,偽刺激は最初の15秒間とし,刺激部位は陽極電極を損傷半球上肢一次運動野,陰極電極を同側の上腕部とした。感覚刺激は麻痺側母指内転筋に対し,平均30秒に1回,ランダムなタイミングで刺激した。評価はSTEFを用い,大直方・木円盤・小立方・布の4項目を選択した。各項目の課題達成に要した時間を測定し,4項目の合計値を評価として用いた。各条件において介入前後,介入から1週間後に実施した。統計解析には対応のあるt検定を用いた。先行研究に基づきtDCSと注意の併用条件が他の2条件よりも改善効果が高いという仮説の下,片側検定を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
10名のデータを解析したところ,介入直後,介入から1週間後のいずれも有意な介入効果は認められなかった。そこで,SIAS上肢遠位1c(平均2.6),握力10Kg以下(平均17.8Kg)と他の被験者と比較して麻痺手の運動機能が低い2名のデータを除外し,8名のデータで新たに解析を行った。その結果,tDCSと注意の併用条件において,介入前と比較し介入から1週間後では課題遂行時間が有意に減少した(P=0.029,片側検定)。また,tDCS単独条件において介入前と比較し介入直後では課題遂行時間が有意に減少した(P=0.025,片側検定)。注意単独条件では,介入前後で課題遂行時間に有意な変化は認められなかった。
【結論】
麻痺手の運動機能が比較的高い慢性期脳卒中患者においては,tDCSと身体への注意の組み合わせが麻痺側上肢運動機能を刺激から1週間後に改善させる可能性を示した。