[O-NV-06-1] 急性期脳卒中患者における回復期病院在院中のADL改善に影響を与える因子の検討
~補正FIM effectivenessを用いた急性期病院入院2週時でのFIM改善度予測~
Keywords:脳卒中, 予後予測, 補正FIM effectiveness
【はじめに,目的】
脳卒中ガイドライン2015では,予後予測に基づく急性期から回復期への一貫したリハビリテーションが推奨されており,急性期病院入院中から回復期病院における日常生活能力を予測する事は,計画的な介入や情報提供を行う上で重要である。しかし,ADL改善指標として多用されるFIM利得は,天井効果や開始時の重症度に影響を受けるため,改善要因の分析には用いにくいとされている。そこで今回は,開始時の影響を受けにくい補正運動FIM effectiveness(以下FIM-e)を用い,急性期病院入院2週時(以下2週)のデータから回復期病院における運動FIMの改善に影響を与える因子を明らかにする事を目的とした。
【方法】
対象は2013年5月~2015年5月に当院に入院した急性期脳卒中患者の内,回復期病院退院時まで追跡可能であった55名(男性/女性31/24名,脳梗塞/脳出血49/6名,平均年齢77.9歳)。入院2週以内に転院退院した例は除外した。調査項目は,患者情報(年齢,性別,病型,脳卒中初発/再発,入院前歩行FIM,離床までの日数),2週評価(Glasgow Coma Scale(GCS),National Institute of Health Stroke Scale(NIHSS),上肢/下肢Brunnstrom Stage,Activity of Basic Movement Scale2,Bartel Index,高次脳機能低下の有無,HDS-R),回復期病院でのFIM-eとした。尚,FIM-eは徳永の手法を用いて算出した(FIM-e=FIM利得/(A-回復期開始時FIM),Aは開始時FIMでの補正値)。方法は(1)対象のFIM-e平均値を算出し,それを上回った群を改善群,下回った群を非改善群とし,2群間で各調査項目をMann-Whitney U及びχ2検定にて比較。(2)従属変数をFIM改善度,独立変数を群間比較にて有意差を認めた項目として,尤度比による変数増加法にて多重ロジスティック回帰分析を実施。(3)FIM改善度に関連を認めた項目について,ROC曲線を作成しカットオフ値を算出。統計解析にはSPSS-Statistics19を用い,有意水準を5%未満とした。
【結果】
FIM-eの平均値0.48で群分けし,改善群は25名,非改善群は30名であった。(1)2群間の比較では,年齢,入院前歩行FIM,GCS,NIHSS,HDS-Rに有意差を認めた。(2)多重ロジスティック回帰分析の結果,入院前歩行FIMとHDS-Rが有意な関連因子として選択され,判別的中率は77.8%であった。多重共線性は見られなかった。(3)ROC曲線の結果,カットオフ値(AUC)は,入院前歩行FIM:6.5点(0.74),HDS-R:21.5点(0.74)であった。
【結論】
今回の結果から,回復期での運動FIM改善に影響する因子は,入院前歩行FIMとHDS-Rであり,入院前歩行の自立と急性期でのHDS-R 21.5点が改善度を分けるカットオフ値として示された。判別的中率,AUCともに高く,急性期における予測指標として臨床活用できる意義が示された。また,回復期入院時の認知機能がその後のADL改善に影響するという先行研究と同様の結果となり,認知機能の重要性が改めて示唆された。
脳卒中ガイドライン2015では,予後予測に基づく急性期から回復期への一貫したリハビリテーションが推奨されており,急性期病院入院中から回復期病院における日常生活能力を予測する事は,計画的な介入や情報提供を行う上で重要である。しかし,ADL改善指標として多用されるFIM利得は,天井効果や開始時の重症度に影響を受けるため,改善要因の分析には用いにくいとされている。そこで今回は,開始時の影響を受けにくい補正運動FIM effectiveness(以下FIM-e)を用い,急性期病院入院2週時(以下2週)のデータから回復期病院における運動FIMの改善に影響を与える因子を明らかにする事を目的とした。
【方法】
対象は2013年5月~2015年5月に当院に入院した急性期脳卒中患者の内,回復期病院退院時まで追跡可能であった55名(男性/女性31/24名,脳梗塞/脳出血49/6名,平均年齢77.9歳)。入院2週以内に転院退院した例は除外した。調査項目は,患者情報(年齢,性別,病型,脳卒中初発/再発,入院前歩行FIM,離床までの日数),2週評価(Glasgow Coma Scale(GCS),National Institute of Health Stroke Scale(NIHSS),上肢/下肢Brunnstrom Stage,Activity of Basic Movement Scale2,Bartel Index,高次脳機能低下の有無,HDS-R),回復期病院でのFIM-eとした。尚,FIM-eは徳永の手法を用いて算出した(FIM-e=FIM利得/(A-回復期開始時FIM),Aは開始時FIMでの補正値)。方法は(1)対象のFIM-e平均値を算出し,それを上回った群を改善群,下回った群を非改善群とし,2群間で各調査項目をMann-Whitney U及びχ2検定にて比較。(2)従属変数をFIM改善度,独立変数を群間比較にて有意差を認めた項目として,尤度比による変数増加法にて多重ロジスティック回帰分析を実施。(3)FIM改善度に関連を認めた項目について,ROC曲線を作成しカットオフ値を算出。統計解析にはSPSS-Statistics19を用い,有意水準を5%未満とした。
【結果】
FIM-eの平均値0.48で群分けし,改善群は25名,非改善群は30名であった。(1)2群間の比較では,年齢,入院前歩行FIM,GCS,NIHSS,HDS-Rに有意差を認めた。(2)多重ロジスティック回帰分析の結果,入院前歩行FIMとHDS-Rが有意な関連因子として選択され,判別的中率は77.8%であった。多重共線性は見られなかった。(3)ROC曲線の結果,カットオフ値(AUC)は,入院前歩行FIM:6.5点(0.74),HDS-R:21.5点(0.74)であった。
【結論】
今回の結果から,回復期での運動FIM改善に影響する因子は,入院前歩行FIMとHDS-Rであり,入院前歩行の自立と急性期でのHDS-R 21.5点が改善度を分けるカットオフ値として示された。判別的中率,AUCともに高く,急性期における予測指標として臨床活用できる意義が示された。また,回復期入院時の認知機能がその後のADL改善に影響するという先行研究と同様の結果となり,認知機能の重要性が改めて示唆された。