[O-NV-06-2] 超高齢脳梗塞患者の歩行予後の検討
~DWI-ASPECTSとFIMの関連~
Keywords:超高齢者, DWI-ASPECTS, 歩行予後
【はじめに,目的】
85歳以上の超高齢脳梗塞患者において歩行獲得は機能回復の促進や長期的予後を良好にし,寝たきりや閉じこもりの防止に有効と考えられる。今回,歩行未獲得(以下,車椅子)群と獲得(以下,歩行)群を比較し,歩行・認知FIMと画像所見との関連について調査した。DWI-Alberta Stroke Program Early CT Score(以下,DWI-ASPECTS)が点数化されるという特性を持つことから,そのスコアを活かして中大脳動脈領域に絞った調査を試みたので報告する。
【方法】
対象は当院回復期リハビリテーション(以下,リハ)病棟に入院した85歳以上で初発の中大脳動脈領域の脳梗塞患者25例とした。平均年齢86.0(85-92)歳,男性7例,女性18例,右損傷9例,左損傷16例,入院は発症後平均20.0±11.8日目であった。診療録より歩行・認知FIMの初期と最終の点数を調べ,最終の歩行FIM1-4点の車椅子群と5-7点の歩行群に分類した。画像所見は急性期病院で発症時に撮影した頭部MRIを用い,DWI-ASPECTSにて行った。中大脳動脈領域の基底核レベルと放線冠レベルの代表的2断面を11箇所に分類して陽性箇所を減点法で採点し,点数が低ければ梗塞範囲が広いことを意味する。高信号を示した部位を虚血変化として評価し,損傷部位としてカウントした。得られた結果を対応のあるt検定とSpearman順位相関係数を用い,有意水準は5%未満として比較検定を行った。
【結果】
車椅子群/歩行群の比較は9例/16例,平均年齢86.0:85-92歳/86.0:85-92歳,男性1例/6例,女性8例/10例,右損傷3例/6例,左損傷6例/10例,発症後平均期間27.9±16.9日目/15.5±3.7日目であり,発症後平均期間に有意差を認めた。歩行FIMは初期1.9±1.5/3.5±2.3,最終3.5±1.7/6.1±0.7,認知FIMは初期19.0±7.7/24.4±5.8,最終21.0±7.5/28.0±3.9であり,歩行FIM初期以外は有意差を認めた。画像所見はラクナ梗塞1例(11%)/7例(44%),血栓性4例(44%)/6例(38%),塞栓性4例(44%)/3例(19%)であった。最も多く損傷されていた部位は両群ともに放線冠部で6例(67%,ラクナ梗塞1例,血栓性2例,心原性3例)/7例(44%,ラクナ梗塞7例)であった。DWI-ASPECTSは7.8±2.8/9.4±0.9で有意差を認め,認知FIM初期と正の相関(r=0.54),発症後平均期間と負の相関(r=-0.50)を認めた。
【結論】
穂坂らは85歳以上の初発脳梗塞患者の重症例は血栓性と心原性に多く,軽症でADL能力が高かったのは半数以上がラクナ梗塞であったとしている。これは,従来の脳梗塞の予後は,梗塞巣の大きさと部位に左右されることと矛盾しない。脳梗塞の臨床病型はその予後を規定するが,超高齢者も同様のことが示唆された。DWI-ASPECTSは8点以上で予後良好とされる。梗塞範囲が小さく,発症後平均期間も短く,認知機能が維持されていれば歩行予後は良好であった。
85歳以上の超高齢脳梗塞患者において歩行獲得は機能回復の促進や長期的予後を良好にし,寝たきりや閉じこもりの防止に有効と考えられる。今回,歩行未獲得(以下,車椅子)群と獲得(以下,歩行)群を比較し,歩行・認知FIMと画像所見との関連について調査した。DWI-Alberta Stroke Program Early CT Score(以下,DWI-ASPECTS)が点数化されるという特性を持つことから,そのスコアを活かして中大脳動脈領域に絞った調査を試みたので報告する。
【方法】
対象は当院回復期リハビリテーション(以下,リハ)病棟に入院した85歳以上で初発の中大脳動脈領域の脳梗塞患者25例とした。平均年齢86.0(85-92)歳,男性7例,女性18例,右損傷9例,左損傷16例,入院は発症後平均20.0±11.8日目であった。診療録より歩行・認知FIMの初期と最終の点数を調べ,最終の歩行FIM1-4点の車椅子群と5-7点の歩行群に分類した。画像所見は急性期病院で発症時に撮影した頭部MRIを用い,DWI-ASPECTSにて行った。中大脳動脈領域の基底核レベルと放線冠レベルの代表的2断面を11箇所に分類して陽性箇所を減点法で採点し,点数が低ければ梗塞範囲が広いことを意味する。高信号を示した部位を虚血変化として評価し,損傷部位としてカウントした。得られた結果を対応のあるt検定とSpearman順位相関係数を用い,有意水準は5%未満として比較検定を行った。
【結果】
車椅子群/歩行群の比較は9例/16例,平均年齢86.0:85-92歳/86.0:85-92歳,男性1例/6例,女性8例/10例,右損傷3例/6例,左損傷6例/10例,発症後平均期間27.9±16.9日目/15.5±3.7日目であり,発症後平均期間に有意差を認めた。歩行FIMは初期1.9±1.5/3.5±2.3,最終3.5±1.7/6.1±0.7,認知FIMは初期19.0±7.7/24.4±5.8,最終21.0±7.5/28.0±3.9であり,歩行FIM初期以外は有意差を認めた。画像所見はラクナ梗塞1例(11%)/7例(44%),血栓性4例(44%)/6例(38%),塞栓性4例(44%)/3例(19%)であった。最も多く損傷されていた部位は両群ともに放線冠部で6例(67%,ラクナ梗塞1例,血栓性2例,心原性3例)/7例(44%,ラクナ梗塞7例)であった。DWI-ASPECTSは7.8±2.8/9.4±0.9で有意差を認め,認知FIM初期と正の相関(r=0.54),発症後平均期間と負の相関(r=-0.50)を認めた。
【結論】
穂坂らは85歳以上の初発脳梗塞患者の重症例は血栓性と心原性に多く,軽症でADL能力が高かったのは半数以上がラクナ梗塞であったとしている。これは,従来の脳梗塞の予後は,梗塞巣の大きさと部位に左右されることと矛盾しない。脳梗塞の臨床病型はその予後を規定するが,超高齢者も同様のことが示唆された。DWI-ASPECTSは8点以上で予後良好とされる。梗塞範囲が小さく,発症後平均期間も短く,認知機能が維持されていれば歩行予後は良好であった。