[O-NV-07-2] 脊髄損傷者に対する褥瘡検診・指導の有用性に関する調査
キーワード:褥瘡, 超音波検査, 座圧測定
【はじめに,目的】
褥瘡は脊髄損傷者(脊損者)にとって主要な合併症の一つである。ひとたび発生すると多大な経済的損失とQOL低下が懸念されるため早期発見と予防が重要となる。褥瘡は外力による不可逆的な阻血性障害であり,外力を減らすことは予防戦略の一つである。また褥瘡等の皮下の異常を早期発見する方法として超音波検査が有用である。我々はこれまで超音波検査による褥瘡評価と座面圧,座位時間を調査してきたが,指導後の経過については不明であった。そこで今回脊損者に対し初回検診後の経過を調査したので褥瘡発生の要因とその経過について報告する。
【方法】
対象は外傷性脊損者49名。座位時間は1日車いす乗車時間,連続乗車時間,圧迫時間に分類して聴取した。褥瘡評価は,視診と触診後に汎用超音波画像診断装置を用いて両坐骨部を評価した。視診,触診,超音波検査のいずれかで異常を認めたものを陽性群,異常を認めなかったものを陰性群に分類した。座面圧測定は常時使用している車いすとクッションに座り,圧力分布測定装置を用いて測定した。姿勢は安楽静止座位とし,両坐骨部を中心に最大圧と4つのセンサーの平均値として平均圧を測定した。皮膚のケアと評価,除圧方法,機器の使用について指導を行い,6ヶ月毎に再度検診を行った。統計学的検討は褥瘡検診の結果から陽性群と陰性群に分類し初回検診時と追跡調査時を比較検討した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
49名(98部位)のうち10名14部位に超音波検査で異常を認めた。視診,触診でも異常を認めたのは2名3部位で,全例超音波検査でも異常を認めた。陽性群は陰性群に比較して1日車いす乗車時間に差はなかったが圧迫時間が有意に長かった(p<0.01)。座面圧は褥瘡検診の結果に関わらず高値であった。追跡可能であったのは25名で,陽性群10名14部位のうち8名12部位が追跡可能であった。8名の低エコー域は複数回の指導後,全例消失し,追跡調査期間中に新たな皮下の異常は発生しなかった。初回検診と比較して追跡調査では1日車いす乗車時間と連続乗車時間に差はなかったが圧迫時間が有意に減少し(p<0.01),平均座面圧は追跡調査で有意に減少した(p<0.05)。
【結論】
脊髄損傷者は日常生活において車いす座位で長時間過ごす必要がある。長時間の座位が坐骨部の褥瘡発生リスクを増大させることが報告されているが,今回の結果より皮下の異常は1日に車いすに乗っている合計時間ではなく,除圧を行わず1回に圧迫している時間に関与しており,除圧の重要性が明らかとなった。今回の結果では追跡調査では圧迫時間が減少し,全ての被験者で低エコー域が改善したことから,継続した褥瘡検診と除圧指導が褥瘡予防および増悪防止に有用であることを示唆した。
褥瘡は脊髄損傷者(脊損者)にとって主要な合併症の一つである。ひとたび発生すると多大な経済的損失とQOL低下が懸念されるため早期発見と予防が重要となる。褥瘡は外力による不可逆的な阻血性障害であり,外力を減らすことは予防戦略の一つである。また褥瘡等の皮下の異常を早期発見する方法として超音波検査が有用である。我々はこれまで超音波検査による褥瘡評価と座面圧,座位時間を調査してきたが,指導後の経過については不明であった。そこで今回脊損者に対し初回検診後の経過を調査したので褥瘡発生の要因とその経過について報告する。
【方法】
対象は外傷性脊損者49名。座位時間は1日車いす乗車時間,連続乗車時間,圧迫時間に分類して聴取した。褥瘡評価は,視診と触診後に汎用超音波画像診断装置を用いて両坐骨部を評価した。視診,触診,超音波検査のいずれかで異常を認めたものを陽性群,異常を認めなかったものを陰性群に分類した。座面圧測定は常時使用している車いすとクッションに座り,圧力分布測定装置を用いて測定した。姿勢は安楽静止座位とし,両坐骨部を中心に最大圧と4つのセンサーの平均値として平均圧を測定した。皮膚のケアと評価,除圧方法,機器の使用について指導を行い,6ヶ月毎に再度検診を行った。統計学的検討は褥瘡検診の結果から陽性群と陰性群に分類し初回検診時と追跡調査時を比較検討した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
49名(98部位)のうち10名14部位に超音波検査で異常を認めた。視診,触診でも異常を認めたのは2名3部位で,全例超音波検査でも異常を認めた。陽性群は陰性群に比較して1日車いす乗車時間に差はなかったが圧迫時間が有意に長かった(p<0.01)。座面圧は褥瘡検診の結果に関わらず高値であった。追跡可能であったのは25名で,陽性群10名14部位のうち8名12部位が追跡可能であった。8名の低エコー域は複数回の指導後,全例消失し,追跡調査期間中に新たな皮下の異常は発生しなかった。初回検診と比較して追跡調査では1日車いす乗車時間と連続乗車時間に差はなかったが圧迫時間が有意に減少し(p<0.01),平均座面圧は追跡調査で有意に減少した(p<0.05)。
【結論】
脊髄損傷者は日常生活において車いす座位で長時間過ごす必要がある。長時間の座位が坐骨部の褥瘡発生リスクを増大させることが報告されているが,今回の結果より皮下の異常は1日に車いすに乗っている合計時間ではなく,除圧を行わず1回に圧迫している時間に関与しており,除圧の重要性が明らかとなった。今回の結果では追跡調査では圧迫時間が減少し,全ての被験者で低エコー域が改善したことから,継続した褥瘡検診と除圧指導が褥瘡予防および増悪防止に有用であることを示唆した。