[O-NV-07-4] 頸髄不全損傷者一症例に対する体重免荷式トレッドミル歩行トレーニング(BWSTT)の効果
介入前後の歩行左右対称性に着目して
キーワード:頸髄不全損傷, 体重免荷式トレッドミル歩行トレーニング(BWSTT), 左右対称性
【はじめに,目的】
脊髄損傷者(脊損者)の歩行障害に対するBWSTTを用いた介入は,理学療法診療ガイドラインの推奨グレードはCとその効果はまだ不透明である。脊損者に対するBWSTTは,歩行率や歩行速度,歩行耐久性など歩行データを改善させると報告されているが,左右対称性に関する報告は脳卒中を対象としたものしかない。しかし臨床上,脊損者においても左右非対称な歩行は多く認められ,介入の目的となることが多い。今回,頸髄不全損傷者一症例を対象にBWSTT介入前後での左右対称性を評価したところ,良好な結果が得られたため報告する。
【方法】
症例は第6-7頸椎脱臼骨折により第6頸髄レベル以下の不全麻痺を呈した10歳代の男性である。介入期間は受傷後166日から205日までのおよそ6週間(介入あり・なしを1週間毎に合計3週間)とし,測定は受傷後157日(以下,介入前)と205日(以下,介入後)に実施した。脊髄損傷機能障害評価はASIA Impairment Scale(AIS),ASIA Lower Extremity Score(LEMS),歩行能力評価はWalking Index for Spinal Cord InjuryII(WISCIII),歩行速度,歩行率とした。また歩行を矢状面からデジタルビデオカメラ(SONY製)で撮影し,動画解析ソフトBMPmeasureを用い3歩行周期のステップ長(足尖離地から踵接地の距離),立脚時間(踵接地から足尖離地の時間),遊脚時間(足尖離地から踵接地の時間)の平均を算出した。さらにそれぞれの左右比(Rt/Lt;%)を算出し左右対称性を評価した。また立位評価として開眼静止立位での30秒間の足圧中心を重心動揺計(ANIMA社製G7100)で測定し各下肢の荷重率,前後方向の実効値,実効値も左右比(Rt/Lt;%)を算出した。
【結果】
結果は介入前→介入後の順に,AISはD→D,LEMS(Rt/Lt)は17/15→17/17であった。WISCIIIは11→16,歩行速度(m/min)は15.0→28.46,歩行率(steps/min)は36.02→62.02であった。ステップ長(cm)は47.9/39.9→46.8/44.0,立脚時間(sec)は1.70/1.60→1.47/1.43,遊脚時間(sec)は0.48/0.59→0.51/0.54であった。左右比はステップ長120.1→106.5%,立脚時間106.3→102.8%,遊脚時間81.3→94.4%であった。立位の荷重率(Rt/Lt;%)は50.1/49.9→51.6/48.4となり左右比は100.4→106.6%,実効値は0.81/0.82→0.82/1.01となり左右比は98.8→81.1%であった。
【結論】
結果は,脊損者へのBWSTT介入は歩行速度など歩行データだけではなく,左右非対称性の改善にも有効である可能性を示している。しかも,立脚,遊脚時間,ステップ長といった歩行の時間的,空間的両要素の左右差が軽減することを示している。しかし,LEMSの左右差も軽減しているため,その影響も考えられる。一方で,静止立位時の左右差には改善を認めなかった。脳卒中患者においては立位と歩行の左右対称性の関連が示されているが(Hendrickson, 2014),脊損者においては関連がない可能性も考えられ,これは病態の違いが影響している可能性があり,今後検討が必要である。
脊髄損傷者(脊損者)の歩行障害に対するBWSTTを用いた介入は,理学療法診療ガイドラインの推奨グレードはCとその効果はまだ不透明である。脊損者に対するBWSTTは,歩行率や歩行速度,歩行耐久性など歩行データを改善させると報告されているが,左右対称性に関する報告は脳卒中を対象としたものしかない。しかし臨床上,脊損者においても左右非対称な歩行は多く認められ,介入の目的となることが多い。今回,頸髄不全損傷者一症例を対象にBWSTT介入前後での左右対称性を評価したところ,良好な結果が得られたため報告する。
【方法】
症例は第6-7頸椎脱臼骨折により第6頸髄レベル以下の不全麻痺を呈した10歳代の男性である。介入期間は受傷後166日から205日までのおよそ6週間(介入あり・なしを1週間毎に合計3週間)とし,測定は受傷後157日(以下,介入前)と205日(以下,介入後)に実施した。脊髄損傷機能障害評価はASIA Impairment Scale(AIS),ASIA Lower Extremity Score(LEMS),歩行能力評価はWalking Index for Spinal Cord InjuryII(WISCIII),歩行速度,歩行率とした。また歩行を矢状面からデジタルビデオカメラ(SONY製)で撮影し,動画解析ソフトBMPmeasureを用い3歩行周期のステップ長(足尖離地から踵接地の距離),立脚時間(踵接地から足尖離地の時間),遊脚時間(足尖離地から踵接地の時間)の平均を算出した。さらにそれぞれの左右比(Rt/Lt;%)を算出し左右対称性を評価した。また立位評価として開眼静止立位での30秒間の足圧中心を重心動揺計(ANIMA社製G7100)で測定し各下肢の荷重率,前後方向の実効値,実効値も左右比(Rt/Lt;%)を算出した。
【結果】
結果は介入前→介入後の順に,AISはD→D,LEMS(Rt/Lt)は17/15→17/17であった。WISCIIIは11→16,歩行速度(m/min)は15.0→28.46,歩行率(steps/min)は36.02→62.02であった。ステップ長(cm)は47.9/39.9→46.8/44.0,立脚時間(sec)は1.70/1.60→1.47/1.43,遊脚時間(sec)は0.48/0.59→0.51/0.54であった。左右比はステップ長120.1→106.5%,立脚時間106.3→102.8%,遊脚時間81.3→94.4%であった。立位の荷重率(Rt/Lt;%)は50.1/49.9→51.6/48.4となり左右比は100.4→106.6%,実効値は0.81/0.82→0.82/1.01となり左右比は98.8→81.1%であった。
【結論】
結果は,脊損者へのBWSTT介入は歩行速度など歩行データだけではなく,左右非対称性の改善にも有効である可能性を示している。しかも,立脚,遊脚時間,ステップ長といった歩行の時間的,空間的両要素の左右差が軽減することを示している。しかし,LEMSの左右差も軽減しているため,その影響も考えられる。一方で,静止立位時の左右差には改善を認めなかった。脳卒中患者においては立位と歩行の左右対称性の関連が示されているが(Hendrickson, 2014),脊損者においては関連がない可能性も考えられ,これは病態の違いが影響している可能性があり,今後検討が必要である。