[O-NV-07-5] Cobb角135°の重度麻痺性側弯症により坐骨部の褥瘡を繰り返す症例
褥瘡再発予防を目指した車いすシーティングへの取り組み
Keywords:脊髄損傷, 側弯症, 褥瘡
【はじめに,目的】褥瘡は発症すると長期の入院・休職を余儀なくされ,金銭面や社会生活に大きな影響を及ぼす。本症例は重度側弯症により坐骨部の褥瘡入院を繰り返していた。そこで今回は車いす乗車時の座位姿勢に着目し,新たに車いすとクッションの購入およびシーティングを行ったところ良好な効果を得られたため報告する。
【方法】〈症例提示〉20歳代,女性。褥瘡部位は左坐骨部でNPUAP分類gradeIV。診断名は分娩時脊髄損傷,麻痺性側弯症。損傷レベルはTh3,ASIA impairment scaleはA。左凸の胸腰椎型側湾症。Cobb角は臥位110°,座位135°。平成15年にTh8-S1CD法施行。1日の車いす乗車時間は15時間以上。仕事は前傾姿勢でのデスクワークが主体。褥瘡入院は15年間に7回。〈旧車いす〉オーダーメイド車いす,座角5°,後輪車軸位置±0cm,ウレタンフォーム製モールド型座位保持装置およびクッションを使用。〈新車いす〉身体状況の変化を考慮し,長期的に使用できるよう多くの調節機能を備えた折りたたみ機構付き車いすを購入。座角20°,後輪車軸位置+6cmに変更。左骨盤帯,右側胸部の支持性を強化し側弯の矯正を図ったウレタンフォーム製モールド型座位保持装置(きさく工房製)を製作。クッションは殿部の位置に関わらず除圧可能な特殊空気構造式のROHOクッション(ロホ社製)を購入。〈測定方法〉座圧分布測定システムXセンサー(XSENSOR Technology社製)を使用し,車いす乗車時の座圧分布を測定,新旧で比較した。
【結果】〈旧車いす〉接触面積:847cm2,平均圧:36mmHg,ピーク圧:右坐骨部周囲58mmHg,左坐骨部周囲121mmHg,右大腿部28mmHg,左大腿部93mmHg。〈新車いす〉接触面積:1282cm2,平均圧:22mmHg,ピーク圧:右坐骨部周囲50mmHg,左坐骨部周囲49mmHg,右大腿部45mmHg,左大腿部44mmHg。左側に偏っていた圧は左右均等に分散され,左坐骨部周囲の圧は大幅に減少した。
【結論】本症例は重度麻痺性側弯症により車いす座位姿勢が不良となり左坐骨部の褥瘡を繰り返していた。車いす座位での座圧は50mmHg以下が推奨されているが,本症例では左坐骨部周囲のピーク圧が121mmHgと高値を示していた。そこで坐骨部の座圧軽減を目的に座位保持装置・クッション・座角の検討を行なった。座位保持装置の支持性を強化し骨盤の傾斜および側弯を矯正したことと座角を20°に変更したことで座圧が左右均等かつ背面に分散されたと考えられる。結果,左坐骨部周囲の座圧は介入前の1/3程度となり褥瘡発生リスクを大幅に軽減することに成功した。また職場のデスクが調節不可能であり前傾姿勢が必至となるが,ROHOクッションに変更したことで前傾姿勢においても有効な除圧効果が得られていた。さらに座角や後輪車軸位置の調整により駆動効率が向上。今まで不可能であったキャスター上げが可能となり活動性の向上にもつながった。本症例のように高度な側弯を伴う症例には褥瘡予防を含め,車いすのシーティングが非常に重要であることが示唆された。
【方法】〈症例提示〉20歳代,女性。褥瘡部位は左坐骨部でNPUAP分類gradeIV。診断名は分娩時脊髄損傷,麻痺性側弯症。損傷レベルはTh3,ASIA impairment scaleはA。左凸の胸腰椎型側湾症。Cobb角は臥位110°,座位135°。平成15年にTh8-S1CD法施行。1日の車いす乗車時間は15時間以上。仕事は前傾姿勢でのデスクワークが主体。褥瘡入院は15年間に7回。〈旧車いす〉オーダーメイド車いす,座角5°,後輪車軸位置±0cm,ウレタンフォーム製モールド型座位保持装置およびクッションを使用。〈新車いす〉身体状況の変化を考慮し,長期的に使用できるよう多くの調節機能を備えた折りたたみ機構付き車いすを購入。座角20°,後輪車軸位置+6cmに変更。左骨盤帯,右側胸部の支持性を強化し側弯の矯正を図ったウレタンフォーム製モールド型座位保持装置(きさく工房製)を製作。クッションは殿部の位置に関わらず除圧可能な特殊空気構造式のROHOクッション(ロホ社製)を購入。〈測定方法〉座圧分布測定システムXセンサー(XSENSOR Technology社製)を使用し,車いす乗車時の座圧分布を測定,新旧で比較した。
【結果】〈旧車いす〉接触面積:847cm2,平均圧:36mmHg,ピーク圧:右坐骨部周囲58mmHg,左坐骨部周囲121mmHg,右大腿部28mmHg,左大腿部93mmHg。〈新車いす〉接触面積:1282cm2,平均圧:22mmHg,ピーク圧:右坐骨部周囲50mmHg,左坐骨部周囲49mmHg,右大腿部45mmHg,左大腿部44mmHg。左側に偏っていた圧は左右均等に分散され,左坐骨部周囲の圧は大幅に減少した。
【結論】本症例は重度麻痺性側弯症により車いす座位姿勢が不良となり左坐骨部の褥瘡を繰り返していた。車いす座位での座圧は50mmHg以下が推奨されているが,本症例では左坐骨部周囲のピーク圧が121mmHgと高値を示していた。そこで坐骨部の座圧軽減を目的に座位保持装置・クッション・座角の検討を行なった。座位保持装置の支持性を強化し骨盤の傾斜および側弯を矯正したことと座角を20°に変更したことで座圧が左右均等かつ背面に分散されたと考えられる。結果,左坐骨部周囲の座圧は介入前の1/3程度となり褥瘡発生リスクを大幅に軽減することに成功した。また職場のデスクが調節不可能であり前傾姿勢が必至となるが,ROHOクッションに変更したことで前傾姿勢においても有効な除圧効果が得られていた。さらに座角や後輪車軸位置の調整により駆動効率が向上。今まで不可能であったキャスター上げが可能となり活動性の向上にもつながった。本症例のように高度な側弯を伴う症例には褥瘡予防を含め,車いすのシーティングが非常に重要であることが示唆された。