[O-NV-07-6] 脊髄損傷者における外骨格型ロボット装具を用いた歩行について
キーワード:脊髄損傷, ロボット, 歩行
【はじめに,目的】
脊髄損傷者(以下脊損者)にとって,歩行は骨粗鬆症の予防や排泄管理に効果があると言われている。完全麻痺者における歩行再獲得は容易ではないが,その解決手段として,ロボット下肢装具が普及しつつある。今回は,外骨格型ロボット歩行装具(ReWalk™)を用いた歩行獲得への取り組みについて紹介する。
【方法】
ReWalk™とは,イスラエルにて脊損者の歩行再建の目的で開発された。腕時計型のアクチュエータにて起立・座位・歩行モードを選択し,バックパック内に備えているコンピュータに信号を送ることで装具が起動する。骨盤を支えるPervic Bandには傾きセンサーが内蔵されており,対象者自身が,下肢に対して体幹・骨盤を前傾することで下肢の振り出しが誘発される。適応としては上肢に麻痺がないこと,骨密度が著しく低下していないことなどである。プログラムは,Basic course(20時間が目安)が自力での装着と脱着,両ロフストランド杖での歩行,起立と着座,扉の開閉,Advance course(20時間が目安)はスロープ歩行,壁での休憩などがcourse終了時の獲得項目である。
当センターでは2014年9月からReWalk™を導入しており,2015年11月までに入院中の完全胸髄・腰髄損傷者8例に対して使用した。ReWalk™での歩行トレーニングの頻度は1週間に2回~3回で,1回1時間程度とした。
【結果】
8例中3例が4ヶ月~6ヶ月の期間でReWalk Robotics社の定めているBasic course,Advance courseを取得し,屋外歩行やスロープ歩行が自立となった。いずれも開始2週間程度で屋内の平地で介助歩行が可能となった。また,3例が中止,2例がBasic course取得に向けて継続中である。中止となった3例のうち1例は神経因性疼痛の悪化,2例が仙骨部,上前腸骨棘,腓骨頭下端,外果の皮膚トラブルがその理由である。皮膚トラブルについては,ReWalk™歩行が原因であるかを検証しパットなどでの除圧後も改善しない場合は使用を中止した。
【結論】
ReWalk™は比較的早期に屋内の平地での介助歩行が獲得でき,対象者のモチベーションを維持しやすい。また,対象者自身が重心移動を行いながら歩行するため,自己操作性を実感でき,ボディイメージの再構築にも繋がる。さらに,歩行速度や両脚支持時間,床と足底の摩擦抵抗などの細かい歩行パラメーターの調整が習熟度に合わせて可能であり,健常者と会話をしながら並んで歩くこともできる。海外では個人ユーザーに対しても販売されており,生活習慣病予防などのエビデンスも得ている。日常生活でのReWalk™歩行は個人のQOL向上にも繋がり,医療現場での使用に留まらない装具であるのが魅力的であり,完全脊損者の歩行再建に有用な装具の1つである。
脊髄損傷者(以下脊損者)にとって,歩行は骨粗鬆症の予防や排泄管理に効果があると言われている。完全麻痺者における歩行再獲得は容易ではないが,その解決手段として,ロボット下肢装具が普及しつつある。今回は,外骨格型ロボット歩行装具(ReWalk™)を用いた歩行獲得への取り組みについて紹介する。
【方法】
ReWalk™とは,イスラエルにて脊損者の歩行再建の目的で開発された。腕時計型のアクチュエータにて起立・座位・歩行モードを選択し,バックパック内に備えているコンピュータに信号を送ることで装具が起動する。骨盤を支えるPervic Bandには傾きセンサーが内蔵されており,対象者自身が,下肢に対して体幹・骨盤を前傾することで下肢の振り出しが誘発される。適応としては上肢に麻痺がないこと,骨密度が著しく低下していないことなどである。プログラムは,Basic course(20時間が目安)が自力での装着と脱着,両ロフストランド杖での歩行,起立と着座,扉の開閉,Advance course(20時間が目安)はスロープ歩行,壁での休憩などがcourse終了時の獲得項目である。
当センターでは2014年9月からReWalk™を導入しており,2015年11月までに入院中の完全胸髄・腰髄損傷者8例に対して使用した。ReWalk™での歩行トレーニングの頻度は1週間に2回~3回で,1回1時間程度とした。
【結果】
8例中3例が4ヶ月~6ヶ月の期間でReWalk Robotics社の定めているBasic course,Advance courseを取得し,屋外歩行やスロープ歩行が自立となった。いずれも開始2週間程度で屋内の平地で介助歩行が可能となった。また,3例が中止,2例がBasic course取得に向けて継続中である。中止となった3例のうち1例は神経因性疼痛の悪化,2例が仙骨部,上前腸骨棘,腓骨頭下端,外果の皮膚トラブルがその理由である。皮膚トラブルについては,ReWalk™歩行が原因であるかを検証しパットなどでの除圧後も改善しない場合は使用を中止した。
【結論】
ReWalk™は比較的早期に屋内の平地での介助歩行が獲得でき,対象者のモチベーションを維持しやすい。また,対象者自身が重心移動を行いながら歩行するため,自己操作性を実感でき,ボディイメージの再構築にも繋がる。さらに,歩行速度や両脚支持時間,床と足底の摩擦抵抗などの細かい歩行パラメーターの調整が習熟度に合わせて可能であり,健常者と会話をしながら並んで歩くこともできる。海外では個人ユーザーに対しても販売されており,生活習慣病予防などのエビデンスも得ている。日常生活でのReWalk™歩行は個人のQOL向上にも繋がり,医療現場での使用に留まらない装具であるのが魅力的であり,完全脊損者の歩行再建に有用な装具の1つである。