[O-NV-08-1] 小児期発症脊髄性筋萎縮症II型の運動の特徴について
―運動機能評価尺度CHOP INTENDとHFMSEを用いての検討―
Keywords:小児, 脊髄性筋萎縮症, 運動機能評価尺度
【はじめに】脊髄性筋萎縮症(Spinal muscular atrophy;以下SMA)は脊髄前角細胞の病変によって起こり,乳児期から小児期の罹患率は10万人に1~2人の希少疾患である。主症状の筋力低下は,左右対称,体幹および四肢に分布,遠位より近位筋が優位,上肢より下肢が優位とされている。SMAII型は,生後7~18ヶ月に発症し,坐位までの運動は獲得できるが,手足の動きは少なく,成長と共に関節拘縮と側弯が進行し,知能レベルは劣らないことが報告されている。しかし,どのように運動を遂行するかは明らかではない。今回,SMAの運動機能評価尺度,CHOP INTENDとHFMSEを用いてSMAの運動の特徴について検討したので報告する。
【方法】SMAII型,1歳~6歳の8名を対象とした。坐位が不可能な4名はCHOP INTEND,坐位が可能な4名はHFMSEを実施し,同時に撮影したビデオを理学療法士2名で評価した。CHOP INTENDは自発もしくは誘発された運動の観察による評価であり16項目全てについて,HFMSEは33項目中機能の遂行が評価できた項目についてそれぞれ分析し,運動の特徴について質的に検討した。
【結果】対象は,CHOP INTENDは男児3名,女児1名,年齢2.7±0.7歳,HFMSEは男児3名,女児1名,年齢6.0±0.4歳であった。
CHOP INTENDでは,上下肢の自発運動を比較すると,臥位では4名全例で,介助坐位では3名が上肢の点数が高かった。他1名は上下肢共最高点だった。下肢の自発運動は,足部のみが2名,膝関節屈曲が1名,股関節内転が1名で遠位優位であった。坐位で頭部が空間保持できる3名全例が頚部後屈位であった。
HFMSEでは,寝返り,坐位から臥位の姿勢変換,前腕支持,手支持,起き上がり,四つ這い位,股関節屈曲で特徴を確認できた。寝返りは4名全例が下側の肩関節を最大外転位とし,その内2名は動作開始時反対側へ体重移動し,数回の重心移動で徐々に肩外転した。坐位から臥位への姿勢変換が可能な2名は,胡坐位から頭部を保持するために頚部後屈位を保ち,体幹を床接地まで前方に倒し,その後回旋し仰臥位へなった。腹臥位での前腕支持,手支持が自力で可能な1名は,頭部を側方への重心移動と手の支えで床から挙上し,頚部後屈位で保持した。手支持は肘関節最大伸展位であった。介助にて前腕支持,手支持,四つ這い位保持が可能な全例が頚部後屈,脊柱前弯,肘関節最大伸展位であった。仰臥位での股関節屈曲全可動域10%以上の運動が可能であった4名全例が足関節底屈と足趾の屈曲の遠位を優位に使用していた。
【結論】CHOP INTENDにて,自発運動は筋力低下の特徴を現し,また骨性支持での頭部保持が確認できた。HFMSEでは,可動性と重心移動による運動の確保,骨性支持,頭部を基底面内に保持,遠位優位の使用等の特徴を捉えることができた。これらの評価尺度はSMAの運動の特徴を質的に把握する上でも有効であった。今後,これらについて客観的にしていくことが課題である。
【方法】SMAII型,1歳~6歳の8名を対象とした。坐位が不可能な4名はCHOP INTEND,坐位が可能な4名はHFMSEを実施し,同時に撮影したビデオを理学療法士2名で評価した。CHOP INTENDは自発もしくは誘発された運動の観察による評価であり16項目全てについて,HFMSEは33項目中機能の遂行が評価できた項目についてそれぞれ分析し,運動の特徴について質的に検討した。
【結果】対象は,CHOP INTENDは男児3名,女児1名,年齢2.7±0.7歳,HFMSEは男児3名,女児1名,年齢6.0±0.4歳であった。
CHOP INTENDでは,上下肢の自発運動を比較すると,臥位では4名全例で,介助坐位では3名が上肢の点数が高かった。他1名は上下肢共最高点だった。下肢の自発運動は,足部のみが2名,膝関節屈曲が1名,股関節内転が1名で遠位優位であった。坐位で頭部が空間保持できる3名全例が頚部後屈位であった。
HFMSEでは,寝返り,坐位から臥位の姿勢変換,前腕支持,手支持,起き上がり,四つ這い位,股関節屈曲で特徴を確認できた。寝返りは4名全例が下側の肩関節を最大外転位とし,その内2名は動作開始時反対側へ体重移動し,数回の重心移動で徐々に肩外転した。坐位から臥位への姿勢変換が可能な2名は,胡坐位から頭部を保持するために頚部後屈位を保ち,体幹を床接地まで前方に倒し,その後回旋し仰臥位へなった。腹臥位での前腕支持,手支持が自力で可能な1名は,頭部を側方への重心移動と手の支えで床から挙上し,頚部後屈位で保持した。手支持は肘関節最大伸展位であった。介助にて前腕支持,手支持,四つ這い位保持が可能な全例が頚部後屈,脊柱前弯,肘関節最大伸展位であった。仰臥位での股関節屈曲全可動域10%以上の運動が可能であった4名全例が足関節底屈と足趾の屈曲の遠位を優位に使用していた。
【結論】CHOP INTENDにて,自発運動は筋力低下の特徴を現し,また骨性支持での頭部保持が確認できた。HFMSEでは,可動性と重心移動による運動の確保,骨性支持,頭部を基底面内に保持,遠位優位の使用等の特徴を捉えることができた。これらの評価尺度はSMAの運動の特徴を質的に把握する上でも有効であった。今後,これらについて客観的にしていくことが課題である。