第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本神経理学療法学会 一般演題口述
(神経)08

Sat. May 28, 2016 11:10 AM - 12:10 PM 第8会場 (札幌コンベンションセンター 2階 206)

座長:奥田憲一(医療福祉センター聖ヨゼフ園 リハビリテーション部)

[O-NV-08-3] 精神科病棟入院患者に対する理学療法が生活機能・精神機能に及ぼす影響に関する実態調査

石橋雄介1, 山田和政2, 林久恵2, 西田宗幹1 (1.秋津鴻池病院リハビリテーション部, 2.星城大学リハビリテーション学部)

Keywords:精神科, 生活機能, 精神機能

【はじめに】

精神科病棟入院患者の高齢化が進んでおり,身体的リハビリテーションの必要性は高まっているが,当該領域における理学療法(PT)研究は極めて少ない。本研究では,PTの対象となった精神科病棟入院患者の現状を明らかにするとともに,PT実施者の生活機能及び精神機能の変化について調査を行うことを目的とした。

【方法】

対象は当院精神科病棟に入院し,平成24年1月から平成26年12月までの期間に併存する身体疾患に対してPTを実施した患者とし,除外基準は認知症,死亡,追跡不能とした。調査項目は,年齢,性別,精神疾患名,身体疾患名,身体疾患発症前の生活場所,PT開始時点での入院期間,PT終了時の転帰とし,生活機能はBarthel Index(BI),精神機能はThe Global Assessment of Functioning(GAF)を用いてPT開始時及び終了時に評価し,カルテより後方視的に調査した。PT開始時と終了時のBI及びGAFの比較には,ウィルコクソンの符号順位和検定を使用し,有意水準は5%とした。

【結果】

対象は126名(平均年齢62.9±14.8歳,男性52名,女性74名)であった。精神疾患名は気分障害54名(43%),統合失調症43名(34%),精神発達遅滞9名(7%),神経症性障害9名(7%),器質性精神障害5名(4%),精神作用物質使用4名(3%),非定型精神病2名(2%)であった。身体疾患名は廃用症候群66名(52%),運動器疾患38名(30%),脳血管疾患等22名(18%)であり,廃用症候群の原因の多くは誤嚥性肺炎(17名),うつ後の活動性低下(8名),パーキンソン症候群(6名),イレウス(5名)であった。身体疾患発症前の生活場所は病院66名(52%),自宅52名(41%),施設9名(7%)であり,PT開始時点での入院期間の中央値[IQR]は23.5[2.0-159.5]日で,1年以上の長期入院患者が22%を占めていた。PT終了時の転帰は入院継続57名(45%),自宅43名(34%),施設15名(12%),転院11名(9%)であった。PT開始時BIの中央値[IQR]は40[10-60]点,終了時BIは70[35-85]点であり,PT前後で有意に改善していた(p<0.01)。PT開始時GAFは52[41-60]点,終了時GAFは55[45-62]点であり,PT前後で有意に改善していた(p<0.05)。

【結論】

PTの対象となった精神科入院患者の現状として,身体疾患では廃用症候群が多く,その原因は,抗精神病薬の副作用が疑われるものや精神疾患そのものによる影響が考えられた。また,病院が生活場所となっている患者が多いことが特徴的であった。PTを実施することで,生活機能のみならず,精神機能の改善も期待できることが示唆された。